« 2020年11月 | トップページ | 2021年1月 »

2020年12月

2020.12.31

飢餓の撲滅と技術の役割 (江頭教授)

|

 前回はWFPの「The State of Food Security and Nutrition in the World (SOFI) Report 2020(世界の食料安全保障と栄養の現状)」(こちらからダウンロードが可能です) というレポートに基づいて世界の食料事情について説明しました。2000年代に入って改善を続けていた飢餓の撲滅ですが、残念ながら2010年代に入って足踏み状態にあります。このままでは増加に転ずるという予測すらある、という状況を紹介しました。そして、これは単に技術の問題ではないという私見を述べさせてもらいました。その証拠に世界には飢えている国と飢えていない国がある(下図に示したWFP作成の世界ハンガーマップにはまさに飢えている国と飢えていない国が明示されています)のです。食料生産に関する技術は基本的にはオープンになっているにもかかわらず、それでも飢餓の存在する国がある。これはその国には技術以外の問題が存在すると考えるべきです。

 ここで仮に、世界の人々が何が何でも飢餓を無くそう、と決意したと考えてみましょう。その場合、人々は何をするのでしょうか?まずは現在耕作可能な土地をどんどん農地に変えて農作物の増産に精を出すでしょう。先進国では農産物増産に必要な耕作機械や肥料、農薬などの製法や利用のノウハウはすでに確立しています。あっという間に世界の人々を飢えから救うのに充分な食料が作られるでしょう。その意味で工学や農学など自然科学を応用した技術は飢餓の撲滅を可能にする能力を持っていると私は考えます。

 でも、これだけでは世界の飢餓を無くすことはできない。本当に飢餓を無くすためには先進国で生産された食料を実際に食料が不足して飢餓に苦しんでいる人たちに配分する必要があるのです。

Photo_20201230054701

続きを読む "飢餓の撲滅と技術の役割 (江頭教授)"続きを読む

2020.12.30

世界の食糧問題(江頭教授)

|

 今回は世界の食糧事情について。元ネタはWFPの「The State of Food Security and Nutrition in the World (SOFI) Report 2020(世界の食料安全保障と栄養の現状)」というレポートでこちらからダウンロードが可能です。

 このレポートの詳細に入る前に、まず大筋を抑えておきましょう。2000年代に入ってからSDGsの前身にあたるMDGsが国連の目標として掲げられたとき、その一つは「飢餓に苦しむ人口比率を半減すること」でした。2015年にMDGsの期間が終了したとき、その目標を達成することはできませんでしたが、飢餓に苦しむ人の人数もその割合もずっと減少を続けていたのです。国連の努力、というよりはベルリンの壁崩壊に象徴される東西冷戦の終結とグローバル経済の進展がもたらした成果なのでしょう。さて、MDGsを引き継いだかたちでスタートしたSDGsが始まって5年間はどのように推移したのでしょうか。

 WFPのレポートの最初の図(下図)にその答えが端的に示されています。なんと栄養不良の人口は増え始めているのです。

Cb4dedf920553d30631d46ae35b2e21f

続きを読む "世界の食糧問題(江頭教授)"続きを読む

2020.12.29

年賀状と名簿と個人情報保護法の話(江頭教授)

|

 前回の記事にも書きましたが私はやはり年末には年賀状を出す派です。ネットで少し調べると年賀状の枚数(年賀葉書の発売枚数ですが、まあ大差は無いでしょう)は2003年がピークで40億枚を超えていたそうですが、その後減少を続けて昨年(今年?)は半分以下、20億枚を切っているそうです。1人あたり約20枚ということでしょうか。私はそれ以上出していますから、やはり年賀状を出す派、ということで良いでしょう。

 とはいえ、年賀状を出す先を見てみると同級生や昔の職場関係の人などが中心で年賀状の数としては減りも増えもしていない感じ。最近知り合いになった人はやはり少ないですね。何しろ、年賀状を送ろうにも住所が分からない。職場に送ることはできますが、それだと仕事始めにしか届かない。なんか年賀状は自宅に送るのが正しいような気がします。そんなこんなで年賀状の送り先は固定されていて、新しい送り先が増えないのです。

 新しい送り先が増えないのは分かるが、ならなんで昔からの送り先はたくさんあるのか。若い人の中にはそう思うひとも多いかとおもいます。昔は「名簿」があったからですよね。

Hagaki_1mai

続きを読む "年賀状と名簿と個人情報保護法の話(江頭教授)"続きを読む

2020.12.28

その後の「最近お金を使わないな、という話」(江頭教授)

|

 「最近お金を使わないな、という話」はこのブログの2020年5月4日の記事のことです。私がお金を使わない、といっても節約生活のことではなくて、ここでのお金は現金のこと。お札や硬貨を使った支払が少なくなっているというお話しでした。2020年5月といえばコロナウイルスによるキャンパスの閉鎖が解除されてすぐのころでしょうか。そもそも現金を使う局面が「飲み会の支払(割り勘)」と、「お弁当(これは本学の片柳研究棟で売っているもの)ぐらいしか」なかった私。それ以外はクレジットカードと交通系ICカードで事足りていて、QRコード決済すら使わなくなっている、という状態だったので、コロナウイルスがとどめとなってほとんど現金を使わなくなった、というお話しでした。

 さて、あれから半年以上経って現状はどうでしょう。「飲み会の支払(割り勘)」は未だに機会がありません。でもお弁当については状況が少し変わりました。今では大学のキャンパスでのお弁当の販売は再開されています。私が気がついたのは8月になってからでしたが、それ以前から再開していたようです。(お弁当についてはこちらの記事でも触れました。)ただ、我々応用化学科が入っている片柳研究棟という建物での販売はまだ再開していませんから、少し遠い厚生棟という建物の食堂まで買いに行くのが日課になりました。

 現状、現金による支払をしているのはこのお弁当のみ。これは今年の現金支払いはずいぶんと少なくなったのでは、と思っていたら年末になってちょっとした大物がやってきました。年賀状です。

1jpy

続きを読む "その後の「最近お金を使わないな、という話」(江頭教授)"続きを読む

2020.12.25

Society 5.0 と食品

|

 Society 5.0 のお話しを続けましょう。今まで(1回目2回目3回目4回目 )の内、前回の「農業」と同様に内閣府が示している Society 5.0 の生み出す新たな価値の具体例から、今度は食品について考えてみたいと思います。

 食品と農業、食に関する話なのでわざわざ分ける必要があるのか、という気もします。実際、食品と農業で示されている価値にはかなり共通したものがあるように思えます。例えば下図に示されてる「食品ロス削減」という項目。冷蔵庫自体に装備されたセンサーで冷蔵庫が自分の中にどれだけの食材があるかを「知っている」様になる。その情報に基づいて賞味期限の近づいた食品は早く食べるように促す、あるいはその冷蔵庫の持ち主の消費速度を勘案して購入時に適当な量に制限する、といった仕組みが考えられているのでしょう。このようなインテリジェントな冷蔵庫の先にはインテリジェントな八百屋や米屋がつながっていて、さらにその先には超スマートな農場があるのでしょう。

 これは農業で作られた食品が人々の目の前まで届けられる過程についての改善です。前回指摘したとおり、実際に人の口に入る食品そのものは現在のものと違いはないと想定されているようです。(もちろん、違っても良いのでしょうが。)もしかしたら食品についてこのような Society 5.0 の技術が実用化されたとしても多くのひとはそのことに気がつかない、というのはオーバーとしてもほとんど意識しない、という状態になるのかも知れません。

Society5_011_20201224185701

続きを読む "Society 5.0 と食品"続きを読む

2020.12.24

Society 5.0 と農業(江頭教授)

|

 今回も Society 5.0 のお話し。今まで(1回目2回目3回目)の続きとして、内閣府が示している Society 5.0 の生み出す新たな価値の具体例から農業について考えてみたいと思います。

 「農業」について、内閣府による説明では下図の様なイラストで新たな価値が説明されています。消費者にニーズを的確に把握し、最小限のロスでそれに答えるために高度に情報化された農業、とでも言えば良いのでしょうか。思い切って単純化すれば農業の徹底的な合理化ですね。

 Society 2.0 の主役であった農業ですが工業化の影響で生産の方法は大きく変化しました。では Society 5.0 ではどう変化するのでしょうか。具体的に考えてみると、外見上農業のやり方にはほとんど変化は見られないのではないかと思います。こんな感じでしょうか。

 Society 5.0 でも畑は今まで通りに畑ですし、水田は水田のままなんですね。作物は太陽の光で生長するし、畑を耕す耕運機も外見は現在のものと大差はない...、あれ、あのトラクター人が乗っていないんですけど。というかそもそも人の乗るところが無いですね。それにブンブンと虫の羽音が...、と思ったらこれはドローンか。そう言えば全く働いている人の姿を見ないんですけど。

 いや、人が働いていなければ充分な変化でしょう。

Society5_010

 

続きを読む "Society 5.0 と農業(江頭教授)"続きを読む

2020.12.23

Society 5.0 とロボット(江頭教授)

|

 前回、前々回につづいて Society 5.0 のお話をしましょう。

 内閣府の Society 5.0 の解説には Society 5.0 の生み出す新たな価値としていくつかの具体例が挙げられています。個々の事例については本家の解説をみていただきたいのですが、これらの具体例に共通する重要なキーワードは「無人化」「省力化」「効率化」だといえるでしょう。

 未来の社会にも社会問題は存在していて、その問題の解決のために IoT、AI、ロボット、そして新たに開発される新技術を十全に利用する。これが Society 5.0 の理念です。だとすると、日本社会の今の、そして今後の最大の社会問題の一つは人手不足である以上、日本の Society 5.0 の最大の課題もまた人手不足の解消となるのですね。

Society5_07

続きを読む "Society 5.0 とロボット(江頭教授)"続きを読む

2020.12.22

Society 5.0 とエネルギー問題(江頭教授)

|

 前回に続いて Society 5.0 について考えていきましょう。Society 5.0 にもいろいろな社会問題があります。というか社会問題を新たな技術で解決するのがSociety 5.0 の特徴なのです。

 では現在の社会に存在するいろいろな問題について Society 5.0 はどのように対応する、と予測されているのでしょうか?前回同様、内閣府の資料に基づいて考えてみましょう。「Society 5.0 新たな価値の事例(エネルギー)」というページには具体的なイメージが下図のように示されています。

 中心的な役割が期待されているのはAIですが、この内容ならIoTも利用されているでしょう。これらの技術がエネルギー問題の解決に役立つと考えられる理由として「的確な需要予測」「地域間連携」「家庭での省エネ」などが挙げられています。大きくまとめるとエネルギーの有効利用、つまり省エネによってエネルギー問題を解決するというのです。

 

Society5_013

続きを読む "Society 5.0 とエネルギー問題(江頭教授)"続きを読む

2020.12.21

Society 5.0 の話をしよう(江頭教授)

|

 皆さんは「Society 5.0」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?例えば google で検索すると最初に内科府のこちらのページがヒットします。(私の環境で、という条件付きですが…。)内閣府による説明は

Society 5.0とは

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

という説明です。うーん、なんかフワフワしているなあ。でも説明が「社会」で終わっている以上、ある種の「社会」、それも現在とは違った、より発展した社会の在り方を想定しているのでしょう。

 キーワードとなる技術、つまり現在の社会と Society 5.0 の社会を分ける技術としては「IoT」「AI」「ロボット」が示されています。並列して「イノベーション」も並んでいるのですがこれは具体的な技術ではなく、まだ出現していないすごい技術、くらいの位置づけでしょう。最近話題になった新技術、それにこれから出てくる新技術を加えて何か新しい社会、スマート社会を超えた超スマート社会が来ないかなあ、というところでしょうか。

 じつは最初に挙げた「Society 5.0」の定義に続いて重要な情報が示されています。

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。

なるほど。前半の「5.0」の説明は、まあこじ付けの様に見えます。でもポイントは後半の部分。「第5期科学技術基本計画」という言葉が出てくると急に概要が見えてきます。

Society5_01

続きを読む "Society 5.0 の話をしよう(江頭教授)"続きを読む

2020.12.18

「多くの視点を持つことの重要性について」(片桐教授)

|

先日。以下のような問い合わせのメールをいただきました。


片桐先生
◎◎です。来春より、工学研究科に進学します。

工学研究科の選択科目についてですが、来年度以降、開講科目が増える可能性がある、という話を耳にしました。これは本当でしょうか。

私はπ型よりも、専門を深く追求するI型人材になりたいので、○○学科の先生の授業を重点的に履修したいと考えています。出身学科の専門科目が増えれば、自身の興味・関心に合わせて履修計画を立てられ、選択肢が広がると思うのですが…
運営に差し障りのない範囲でお答えいただければ幸いです。

以下はそれに対する私からの返信です。

◎◎様
片桐です。

 来年度は、新しくサステイナブル工学概論という主に助教の先生方によるオムニバス講義の開講を予定しています。若い先生の講義を聴講するチャンスを供与したいと考えています。

さて、
「私はπ型よりも、専門を深く追求するI型人材になりたいので、○○学科の先生の授業を重点的に履修したいと考えています。」
については,少し考え直しされることをおすすめします。

 私自身は大学-大学院-ポスドクの8年の間、同じテーマの研究に従事しました。それにより、おそらくあなたの言われるI型人間になりました。

 しかし、29歳で会社員になった時に、自分の分野周辺の基礎知識の狭さに愕然としました。会社員になったとたん、係長相当の研究員になり、1つの新規テーマをまかされたのですが、そのとき、もう少し類縁分野の広範な学びを深くしておくことの必要性を感じました。特に「化学機械学」の知識に乏しいため、自分の新しく開発した反応のプラント化に着手できなかったという痛い思い出があります。

 

Photo_20201217103601

続きを読む "「多くの視点を持つことの重要性について」(片桐教授)"続きを読む

2020.12.17

国産の食品は安全だと信じられる訳(江頭教授)

|

 のっけから恐縮なのですが今回は出典の分からない話からスタートです。

 ずいぶん前の話ですが食の安全に詳しい識者の方が著書だがブログだかでこんな話を書いていました。

イギリスに旅行した時のこと、イギリス人が「私達は安全な国産の食品を食べたいんだ!」と話していた。私はすごく驚いて「狂牛病をはじめとして食の安全についてはかなりお粗末なイギリス人にすら国産信仰があるとは。ナショナリズムおそるべし」と思った。

というのです。このお話、私は少し違和感があるのですが、皆さんはいかがでしょうか。

 まず私の身の回り、日本で暮らす日本人の身の回り、をみると「○○には日本産を使用しています」といった日本産の食品に一段上の価値を認める傾向が確かにあると思います。では、これはナショナリズム故なのか。その要素がないとは言いません。でも私達が国産の食品を信頼するのには別の理由、言ってみれば「同じ釜の飯」理論とでも言うべきものがあると思うのです。

 Cooking_kamado

続きを読む "国産の食品は安全だと信じられる訳(江頭教授)"続きを読む

2020.12.16

壁に耳ありZoomに目あり(江頭教授)

|

 私の居室(教授室)の入口の扉は普段はオープンにしています。これは学生さんに声をかけてもらいやすい様に、という配慮なのですがたまには閉める必要があるときも。例えば成績に関わるものを扱っているときとか。ということで今回のお話しは教授室の扉を閉める必要がある場合についてのお話しです。

 今日も今日とて午前中は授業が多くてなかなか時間が取れません。午後になって学生さんとまとめて打合せを、となりました。ここは Zoom をつかって次から次に実験の進め方などを決めてゆきます。大きな方針がきまると個別の作業のお話しも。この作業は人手がいるな、せっかくだから今日の内に片付けよう。僕も参加するからこの打合せの後に手の空いている人は集まってね。

 そんなこんなで Zoom 打合せも終了。手順を確認して作業を始めますか。うーん、どうしよう。服を気にしなくて良い様に作業服に着替えましょうか。

 えっ、そこは白衣では。いえいえ、実は私は作業服派でして自分の実験で白衣を着ることはほとんど無いのです。そう言えば今の白衣もオープンキャンパスを行う、という名目で大学の広報費用で買ってもらったのではなかったか。実質コスプレですな。

 

Stand_sagyouin_man

続きを読む "壁に耳ありZoomに目あり(江頭教授)"続きを読む

2020.12.15

続「10万円もらったら何に使いますか?」(江頭教授)

|

 「10万円もらったら何に使いますか?」という質問は今年の4月に「定額給付金」に絡めてこちらの記事で紹介した私の「話のタネ」の一つです。そのときにも説明しましたが

 一問目は「10万円もらったら何に使いますか?ただし貯金するのはダメですよ。」

 二問目は「じゃあ100万円もらったら?やっぱり貯金はなしで。」

 そして三問目は「こんどは1000万円です。貯金以外で何に使いますか?」

という質問です。

 一問目にはいろいろな答えが返ってくるのですが、二問目、三問目に進むにしたがってだんだん具体的な回答が少なくなってゆきます。結構な割合で100万円で自動車、1000万円で家、に落ち着いてゆくのです。それで

 「結局、自動車産業と建設業が主要産業なんだよね。」

というのが下げというわけです。

Money_satsutaba

続きを読む "続「10万円もらったら何に使いますか?」(江頭教授)"続きを読む

2020.12.14

Dollar Street でみる煙突と豊かさ(江頭教授)

|

 そろろそクリスマスですね。クリスマスの夜にはサンタクロースが煙突から入ってきて...、あれ、我が家には煙突なんか無いんですけど。

 とまあ、現在の日本の家屋には煙突は珍しいものかも知れません。煙突があるのは古い家でしょうか。日本がまだ貧しかった頃には煙突があったのでしょうか。などと考えてふと思い出したのが Dollar Street のこと。以前このブログでも紹介したのですが、これは世界各国の家庭の生活の有り様に関する写真を集めたサイトです。特徴的なのはそれぞれの家庭の月収毎に四つの段階に分けて比較を示してくれる点。やはり月収の低い家には煙突があるのでしょうか。とはいえ、月収があまりにも低い(100ドル以下とか)では煙突はむりですかね。

 さて、実際に調べてみると、まず Dollar Street には「煙突」という項目はありませんでした。では「家」ではどうか。見てみたのですが煙突がある家はなかなか見つかりません。というか屋根が写っているアングルの写真がそんなにないのです。うーん。探してみると、それらしい項目として「排気口」というのがありました。

 下図がその「排気口」で調べた Dollar Street の写真です。なんと煙突があるのは一番右端、もっとも裕福なフランスの家庭のもので月収は約2万ドル。ものすごいお金持ちの家なのです。これは...お金持ちが道楽で建てた煙突ではあるまいか。

Photo_20201213181901

続きを読む "Dollar Street でみる煙突と豊かさ(江頭教授)"続きを読む

2020.12.11

「〇」と「○」は区別できますか?(江頭教授)

|

 えっ、何言ってるの?

 多分ほとんどの方がそう思うのではないかと思います。でも「明らかに同じじゃないか?」という人と「明らかに違うじゃないか?」という人に分かれるのではないか、私はそう想像していますが、それを確かめる方法はありません。

 実はこのタイトルの前の「〇」は漢数字のゼロ、後者の「○」は白丸なのです。このブログを表示する環境に応じて違いが分からない場合、よく似た文字に見える場合、全く違った文字に見える場合があるでしょう。JIS漢字コードでは前者が 0x213B となり、後者は 0x217B だとか。コンピュータ内部の記号としては全く違った独立の文字ですが、これが表示のされ方によって見た目は同じ(になることもある)という訳なのです。

 例えばMS Wordの場合、両者の見え方の違いはフォントによって変わります。PCの画面をスナップショットでとったのが以下の図。フォントを Times New Roman にすれば区別がつきますがMS明朝の場合はかなり微妙ではないでしょうか。二つ並べればなんとなく違いが分かる様な気もしますが、一つだけ見せられて「ゼロか丸か?」と聞かれても途方に暮れるのでは。

Photo_20201210182401

続きを読む "「〇」と「○」は区別できますか?(江頭教授)"続きを読む

2020.12.10

「実験日通知書」のこと バリアフリーな授業に向けて(江頭教授)

|

 2020年度後期の授業は新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために授業の実施方法にいろいろな工夫をしています。たとえば「対面ただし遠隔受講可」な授業はその代表例。でも学生実験となるとこれは対面一択、となるのですがそれでも三密を防ぐために通常通りの運営は難しい。そこで例年は週1日全員参加で行っている学生実験を、週二回に分けて一回ごとに半数の学生が実験をする、というスタイルで実施することとなりました。

 私も参加している1年生後期の学生実験「工学基礎実験Ⅱ(C)」の実験では例年、全体を四つのグループに分けて四テーマの実験を交代で行う、という実施方法をとっています。今年は実験日が週2回、月曜日と金曜日になったので一日に二テーマずつ二つのグループが実験すれば良い。と、ここまでは簡単なのですが、さて実験テーマと実験の曜日はどのように配置しようか。非常勤講師の先生たちにも実験の担当をお願いしているので勝手に曜日を動かすことはできません。そこで月曜日はこの実験テーマ、金曜日はこれ、と決める必要があります。そうなると学生は月曜日に実験をする週と金曜日にする週とが人によってバラバラになる、ということになります。

 いくら何でもこれは複雑すぎるのでは...。ということになって考えたのが「実験日通知書」です。これは各週の月曜日と金曜日に実験がある・ない、実験するテーマはどれ、という情報を一覧表としてまとめたもの。学生ごとに実験日はばらばらなので(実際には数パターンのうちどれかなのですが)、この「実験日通知書」も学生1人1人のその人専用のものを作って配布しています(といっても学修支援システムの moodle にまとめてアップロードしているので紙を配るわけではありませんが)。

Template_jikanwari_nichi_20201210063401

続きを読む "「実験日通知書」のこと バリアフリーな授業に向けて(江頭教授)"続きを読む

2020.12.09

模擬面接を実施しました(江頭教授)

|

「模擬面接」は学生諸君の就職支援の一環として本学キャリアサポートセンターと我々教員とが協力して行う就職活動の際の面接の予行演習です。対象は本学の3年生。応用化学科の三年生も当然「模擬面接」の対象となります。

 この模擬面接は研究室の先輩が面接官役となります。すでに就職活動を終え、実際の面接を経験した4年生が、一研究室あたり数名、面接官役のを務めます。研究室毎に模擬面接を行い学生に対するフィードバックと共に結果をキャリアサポートセンターに報告する、というのが本学の一般的なスタイルです。

 

Syukatsu_mensetsu_man_20201208171801

続きを読む "模擬面接を実施しました(江頭教授)"続きを読む

2020.12.08

本ブログの記事は1500件に達しました(江頭教授)

|

 本ブログを開始したのが2014年10月27日。図はその時の記念すべき第1回の記事は山下教授による「生命の起源の謎を解き明かす不斉誘起反応(山下教授)」でした。同日にさらに「医薬品に役立つ有機フッ素化学(片桐教授)」「乾燥地植林によるCO2固定はサステイナブルな地球に役立つのか?(江頭教授)」がアップロードされ合計3本の記事からのスタートでした。

 それ以来6年と少しで1500本達成となりました。現在では週5回、月~金の午前10時更新ですから1年52週間として260本の記事を出しています。このペースなら6年未満で1500本になるところですが、開始当初は不定期更新で一日に2件記事を上げるなどしていた時期もありましたから、少し時間がかかったことになります。

 さて、本ブログの記事のなかの人気記事を調べてみましょう。最近のもの、ということで今年2020年1月1日からこの12月までの記事を対象とします。

 さて、第一位は「電子レンジでコップ1杯のお湯を沸かすには何分必要か?」でした。2019年06月06日の記事です。役立つ、というか疑問に思って調べる人が多くて検索にあたるのかもしれませんね。

Photo_20201207204801

続きを読む "本ブログの記事は1500件に達しました(江頭教授)"続きを読む

2020.12.07

今年のクリスマスツリーは?(江頭教授)

|

 本学、東京工科大学の八王子キャンパスでは毎年年末になるとクリスマスツリーが飾られていました。「いました」って、そう、過去形なのです。少し気が早いのか、いつも11月の前半、遅くても中頃にはクリスマスツリーがキャンパスの中央、図書館棟と更生棟の間の広場に登場するのですが、今年は12月になっても以下の様な様子。

Img_3283

図書館棟の改修工事は行われていますがツリーの準備は一体?カラーコーンがそれっぽく並べてあるのでここにツリーを立てる予定はあるのだろうか、と思ってよく見ると...

Img_3284

どうやら歪んでしまった電柱の工事らしい。

 残念ながら今年2020年はツリー無しの年末となりそうです。やはりコロナウイルスの感染拡大防止のために学生が通学する機会が減ったからでしょうか。それともツリーを見ていないで早く家に帰りましょうというメッセージなのでしょうか。

 ということで、次頁の写真で本学の今までのクリスマスツリーの姿をオンラインでお楽しみください。

続きを読む "今年のクリスマスツリーは?(江頭教授)"続きを読む

2020.12.04

「バーチャルオープンキャンパスDAY」を開催します(江頭教授)

|

 本学に限らずどの大学が同様だと思いますが、今年2020年は新型コロナウイルスの感染拡大のために例年のオープンキャンパスが実施できない、という状況に陥っています。とはいえ来年度も大学に進学する人たちは居るわけですから大学からの情報発信は必要。対面のオープンキャンパスがダメならオンラインで、ということで東京工科大学では「バーチャルオープンキャンパス」を実施しています。

 実はこの「バーチャルオープンキャンパス」、数年前から計画されていて準備が進められていたもので、今回のコロナウイルス騒動で本格的な導入が早まったのです。いままではリアルなオープンキャンパスを進めながら同時にバーチャルなオープンキャンパスの企画も進めていたのですが、今年は(コロナウイルスが原因であるとはいえ)バーチャルオープンキャンパスに集中して取り組むことができています。
Photo_20201204062101

続きを読む "「バーチャルオープンキャンパスDAY」を開催します(江頭教授)"続きを読む

2020.12.03

パネルディスカッション「理想的な工学教育の在り方を考える」を開催しました(江頭教授)

|

 我々応用化学科は工学部に属していますが、本学の工学部は機械工学、電気電子工学、そして応用化学の3学科体制となっています。授業も大部分は学科単位で行いますが、一部の授業は工学部共通で行われるなど一体で運用されている部分もあります。

 ということでFD活動(Faculty Development、教育方法についての能力向上を目指した活動)にも学部単位のものがあります。今回ご紹介する

東京工科大学工学部 パネルディスカッション「理想的な工学教育の在り方を考える ニューノーマル対応型教育メソッドの確立を目指して」

もその一つです。

 今年2020年は新型コロナウイルスの感染拡大への対応で大学教育は大きな影響を受けることとなりました。まずは一般には可能性として議論されるだけだった遠隔授業が図らずも大々的に導入されたこと。前期の後半から夏休みを挟んで後期にかけて、対面の授業を一部再開することとなりましたが、決してもとと同じ授業風景が帰ってきたわけではありません。変化の中には悪いものもあれば良いものもある。我々は良いものを伸ばし悪いものを解決することで新しい教育メソッドを作って行かなければなりません。そんな思いから工学部教員全員参加のパネルディスカッションが企画されたのです。

Photo_20201203061901

続きを読む "パネルディスカッション「理想的な工学教育の在り方を考える」を開催しました(江頭教授)"続きを読む

2020.12.02

「ハイブリッド授業」のメリット・デメリット(江頭教授)

|

 「ハイブリッド授業」という言葉にはいろいろな意味合いがあり得ると思います。ここではこのブログで何遍も述べてきた「対面ただし遠隔受講可」の授業ということにしましょう。そのメリット・デメリットは何でしょうか?

 漠然とメリット・デメリットといっても焦点がぼやけてしまいます。まずは誰にとってのメリットであり、誰にとってのデメリットかをハッキリさせるために学生の立場と教員の立場を分けて考えてみましょう。

 まず、学生の立場から。学生からすれば授業を受ける際の選択肢が増えるわけですから、これは確実にメリットがあると言えるでしょう。対面の授業より遠隔の授業が良いならそちらを選ぶ。やっぱり対面が良い、という人は大学に来れば良いのです。選択肢が増えるということは遠隔と対面の良い方を選ぶことができるのですから、もともと対面が良いという人に新たなメリットはないものの、対面より遠隔が良いという人にはメリットがあるわけです。ですから学生全体に対してはメリットがあると言えると思います。

 では教員についてはどうでしょうか?

 School_class_20201129210801

続きを読む "「ハイブリッド授業」のメリット・デメリット(江頭教授)"続きを読む

2020.12.01

キャタピラ、ホッチキス、そして Excel (江頭教授)

|

 このブログでも何度か触れた(たとえばこの記事)のですが本学の授業では moodle という学修支援システムを標準で利用することになっています。ファイルのアップロードやダウンロード機能があるので教員と学生との間でデータのやり取りをする標準的な手続きとして重宝しています。

 その moodle、今年の後期から Ver 3.9 にアップグレードされ、学生さんがアップロードするファイルの形式を教員側で指定する、具体的には拡張子を指定することができる様になりました。(いや、今までもできたのに私がやっと気がついただけかも知れません。)これは便利だ、アップロードするファイルが複数あるとき場所を間違える人もいるのでその防止策になる。そう思ってファイルの拡張子を .xlsx に指定してアップロードする項目をつくっておきました。

 さて、学生さんたちに公開して数日経つと質問が。提出するファイルをExcelで作成したが、moodleでは「スプレッドシート」が許可される、とあった。どの形式に変換すれば「スプレッドシート」になるのか、というのです。

 うーん、これはキャタピラやホッチキスと一緒だなあ。

Computer_document_spreadsheet

続きを読む "キャタピラ、ホッチキス、そして Excel (江頭教授)"続きを読む

« 2020年11月 | トップページ | 2021年1月 »