Society 5.0 とロボット(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
前回、前々回につづいて Society 5.0 のお話をしましょう。
内閣府の Society 5.0 の解説には Society 5.0 の生み出す新たな価値としていくつかの具体例が挙げられています。個々の事例については本家の解説をみていただきたいのですが、これらの具体例に共通する重要なキーワードは「無人化」「省力化」「効率化」だといえるでしょう。
未来の社会にも社会問題は存在していて、その問題の解決のために IoT、AI、ロボット、そして新たに開発される新技術を十全に利用する。これが Society 5.0 の理念です。だとすると、日本社会の今の、そして今後の最大の社会問題の一つは人手不足である以上、日本の Society 5.0 の最大の課題もまた人手不足の解消となるのですね。
さて、人手不足の解決、という課題を念頭に Society 5.0 で期待される技術を見直してみましょう。AI、人工知能は人間が行っている知的な作業を代替するための技術。ロボットは人間が行っているフィジカルな作業を代行する技術。そしてIoTは人間と同等の、そしてそれ以上の感覚を機械に付与する技術。そう考えると人間に代わっていろいろな仕事をこなす存在を造ろう、という技術としてまとめられるでしょう。
あれ?「人間に代わっていろいろな仕事をこなす存在」って、ロボットのことじゃないですか。確かに Society 5.0 にはロボット技術が挙げられていますが…。
うーん、これは「ロボット」という言葉で表されるものが異なっているのですね。昔フィクションの中で空想された「ロボット」はまさに「人間に代わっていろいろな仕事をこなす存在」でした。(手塚治虫の「鉄腕アトム」はその代表ですね。)しかしいま技術の世界で使われているロボットという言葉は「人間の代わって一定の機械的な作業をこなす存在」を指しているのではないでしょうか。
Society 5.0 では現在の「ロボット」よりもフィクションのなかで空想された「ロボット」により近い存在が作り出されるのでしょう。でもそれが空想の「ロボット」と同じように人間のような外見をしているとは限りませんし、私たちがそれを「ロボット」と呼ぶかどうかも分からないですね。
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