« 「〇」と「○」は区別できますか?(江頭教授) | トップページ | 続「10万円もらったら何に使いますか?」(江頭教授) »

Dollar Street でみる煙突と豊かさ(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 そろろそクリスマスですね。クリスマスの夜にはサンタクロースが煙突から入ってきて...、あれ、我が家には煙突なんか無いんですけど。

 とまあ、現在の日本の家屋には煙突は珍しいものかも知れません。煙突があるのは古い家でしょうか。日本がまだ貧しかった頃には煙突があったのでしょうか。などと考えてふと思い出したのが Dollar Street のこと。以前このブログでも紹介したのですが、これは世界各国の家庭の生活の有り様に関する写真を集めたサイトです。特徴的なのはそれぞれの家庭の月収毎に四つの段階に分けて比較を示してくれる点。やはり月収の低い家には煙突があるのでしょうか。とはいえ、月収があまりにも低い(100ドル以下とか)では煙突はむりですかね。

 さて、実際に調べてみると、まず Dollar Street には「煙突」という項目はありませんでした。では「家」ではどうか。見てみたのですが煙突がある家はなかなか見つかりません。というか屋根が写っているアングルの写真がそんなにないのです。うーん。探してみると、それらしい項目として「排気口」というのがありました。

 下図がその「排気口」で調べた Dollar Street の写真です。なんと煙突があるのは一番右端、もっとも裕福なフランスの家庭のもので月収は約2万ドル。ものすごいお金持ちの家なのです。これは...お金持ちが道楽で建てた煙突ではあるまいか。

Photo_20201213181901

 代わりに「熱源」という項目で調べると中程度の月収の家庭に煙突のついたストーブなどが出てきます。とはいえ、サンタクロースが出入りできるような代物ではありません。やはりサンタクロースもお金持ちの家にしか来ないのか、世知辛いのう、などと思ってしまいます。

 さて、冗談はさておき、熱源としてのストーブに煙突がつけられているのは世界の中程度の所得層の属する家庭だ、ということができそうです。煙突のそもそもの役割はストーブで燃料が燃えた後の排ガスを屋外に放出することです。高所得の家庭では主に電力を使った空調システムが利用されています。その一方で貧しい家庭では空調システムはおろかストーブすら準備することはできませんから、煙突もなし。

 燃料についても問題で薪や石炭などでは煙突を使って換気を進めることが重要です。これは電力を使った空調システムでの換気とは訳が違います。なにしろ薪や石炭は燃焼時にばい煙を発生するのですから、煙突がなければ部屋の中で燻製になりながら暮らす羽目になります。とはいえ本当に貧しい家庭では部屋の中でばい煙が発生するような環境での暮らしを余儀なくされています。その様な家庭の家は機密性が高くはありませんが、もし機密性が高かったら本当に燻製になってしまうでしょう。

 別の見方をすると一つの家庭が豊かになって機密性のよい家に住み替えることになれば煙突は必需品となる訳です。もっと豊になって灯油が買えるようになれば灯油を使ったストーブに替えればばい煙の問題は無くなります。電気が来ている都会に引っ越せばいよいよ煙突ともおさらば、という流れになるでしょう。

 こう考えると「サンタクロースが入って来られるような立派な煙突」というのはある意味歴史の遺物の様に思えます。今の時代、そんな立派な煙突を作るお金があれば灯油を買ったりガスを引け、ということになるでしょうからね。とはいえ先進国のお金持ちなら郷愁と憧れで作ってしまうかも知れません。それが「排気口」に煙突が写っていた家の実情だと考えると腑に落ちるところです。

江頭 靖幸

 

« 「〇」と「○」は区別できますか?(江頭教授) | トップページ | 続「10万円もらったら何に使いますか?」(江頭教授) »

解説」カテゴリの記事