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この原稿を書いている2020年12月現在, 東京都は新型コロナウイルス感染(COVID-19)の第3波の中にあります。大晦日にはついに新規陽性者数が1300人を越えてしまいました。
季節性の風邪の10~15%(流行期35%)は旧来のコロナウイルス(HCoV-229E, HCoV-OC43, HCoV-NL63, HCoV-HKU1)によるものであることから[1]、冬場の感染拡大(第3波)は経験則的に予想されていました [2,3]。 その一方で, 都民の厳格な自粛生活にもかかわらず, 同年8月をピークとした夏場の第2波の発生にかかわる要因は明確ではありません。この第2波発生の要因解明は, 来年以降の職場や家庭における新型コロナの感染拡大防止のための職場や家庭などのローカル環境での対策の立案に役立つと思われます。そこで、この解明を試みました。
2020年4月7日の「緊急事態宣言」以来, 東京ではマスクをしていない人を市中に見かけなくなりました。鉄道会社の呼びかけもあり, 電車中でマスクをすることは当たり前のマナーになりました。ほとんど全てのショッピングセンターの入口にはアルコール消毒剤が備えられ, 多くの人は入退館時に手指を消毒しています。レストランやバーなどの飲食店は一斉に休業しあるいは営業時間を大幅に短縮し, 座席数を減らし, 座席間にビニルカーテンを引き, 感染拡大防止に努めています。
このような感染拡大防止の個人の努力、自粛努力にもかかわらず, 5月に一旦ほぼ収束した第1波の後 6月中旬以降に東京都の新規感染者数は再度増えはじめ, 8月中旬に第2波のピークを迎えました。この第2波は9月に第2波ピーク時の半分程度まで収束したものの, 11月後半には第3波の感染拡大を迎えました。
このように, 東京では第1波の後に第2波を経験しました。愛知県, 大阪府, 福岡県など本州の太平洋側の多くの都府県は, ほぼ同時期に第2波を経験しています。しかし, 東京とほぼ同時期に第1波を経験した北海道は第2波を経験していなません[4]。また,青森県や宮城県の第2波発生時期は東京より1か月以上遅い時期に第2波が来ました。すなわち, この第2波は全国一律の事象ではなく, 緯度に依存する比較的ローカルな要因に影響されていたことを示唆します。私はこれを梅雨の長雨とそれに伴う湿度の影響であるという作業仮説を立て検討してみました。
下図はNHKの特設ページから持ってきた、新規感染者の発生状況の県別のグラフです。
第2波の日本各地での発生状況(NHK特設サイト「新型コロナウイルス」「都道府県ごとの新規感染者数の推移」https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-widget/より)
東京都
愛知県
大阪府
福岡県
北海道
青森県
宮城県
梅雨前線がほぼ同時期に停滞する東京、愛知、大阪、福岡はほぼ同時期に第2波が来ています。一方で梅雨の無い北海道では第2波は発生していません。また、梅雨前線が徐々に北上するために、梅雨が1〜2か月遅れる宮城、青森の第2波はやはり第2波も東京より1〜2か月遅れています。
参考文献
[1]国立感染研究所サイト:https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/2482-2020-01-10-06-50-40/9303-coronavirus.html
[2] S. Mallapaty, nature, 2020, (Oct. 29), 586, 653.
[3] M. Yassine, H. Zaralet, et.al, Frontier. Public Health, Sept. 2020, 8, Article 567184.
[4] NHKWEB NEWS 特設サイト: https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-widget/#mokuji1