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牛とクジラの小噺(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今年の干支にちなんで牛の小噺を一つ。(えっ、牛じゃなくて丑だろうって、そこはご勘弁を。)

 さあ安いよ安いよ、皆さん買っておくんなさい。今日の目玉はこれ。この挽肉だ。挽肉と言ってもいつもの挽肉とはちと違う。豚肉、鶏肉、いやいや、今日のこれはなんと牛の挽肉だ。とはいえ高級品の牛だけって訳にはいかない、ってんで一対一の合い挽きなんだが、それでこのお値段だ。さあ、買った買った。

 おっ、牛でこの値段たあ驚いた。それで牛と何の肉の合い挽きなんだい。

 うー、うん。クジラ肉だよ。

 クジラかあ。でも半分牛肉ならやっぱり安いなあ。

 あっ、あー。一対一ってーのは牛一頭とクジラ一頭だけどな。

さて、この小噺、何というか時代に置いてきぼりにされた感が半端ないですね。今では一体どこがポイントなのか分からないのでは。

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 まず「クジラの肉」という時点で時代感がでているかと。私(江頭)は現在58歳ですが、クジラの肉を食べた記憶は子供の頃にうっすらと或る程度。いまの若者たち、というか中年の人たちでもクジラの肉を思い出すことはできないのではないでしょうか。ましてやクジラの肉と聞いて安い肉を意味している、とはすぐには分からないでしょう。

 牛肉が高価だ、というのは豚肉、鶏肉と比べれば現在もその通りです。でも、それは牛肉が安くなると同時に鶏肉や豚肉も安くなったからであって、牛肉であれば高級品という意識はいまは一般的ではないでしょう。(いや、高級な牛肉というものは存在しますが。)

 かろうじて今でも通じるのはクジラはものすごく大きくて牛とは比較にならないくらいのサイズだ、ということ。牛一頭とクジラ一頭の肉を合い挽きにしたらほとんどクジラに肉だけになってしまう、という点くらいでしょう。牛肉との合い挽きと称してほとんどただのクジラの挽肉を高く売りつけようとする、というポイントをすぐに理解して、なおかつ面白く感じる、というのはなかなかの知識が必要ですね。

 で、この話は結局何が言いたいのか、です。実はこの話、私は大学での粉体工学の講義で聞きました。「一対一」をはじめとして二つのものの量を比較するには定義が重要だ、というのがこのお話しの教訓。化学の分野でも、例えば「砂糖と塩を一対一」と言ったとき、「砂糖1gと塩1g」なのか、「ラクトース1mol(342.3 g)と塩化ナトリウム1mol(58.44 g)」なのかで大きな違いがありますよね。

江頭 靖幸

 

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