デマを拡散しないように- 18 冬にインフルエンザの流行する理由はまだ明らかではない(片桐教授)
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(以下の記事はこちらの記事からの続きです。)
コロナウイルスやインフルエンザウイルスは季節性の風邪の原因になっています。今回、医療保険学部の先生のご指導のもと、この問題に取り組むにあたり文献調査を行いました。しかし、これらのウイルスによる風邪がなぜ冬にはやるのかは, いろいろな仮説が提案されているものの、まだ完全に解明されてはいないようです。これまでに,多くの仮説が提唱されています。
疫学的な分析から,高温・高湿・紫外線によりCOVID-19は抑制されるという報告[5]や、アエロゾル中のSARS-CoV-2の感染性は湿度よりも日光と温度に影響されるという報告があります[6]。また、インフルエンザウイルスの飛沫やアエロゾルの感染性について,湿度はあまり関係しないという報告があり[7] 一方で,高湿度はインフルエンザの生存や感染を不活性化し[8]. さらに,100%に近いあるいは <50%の湿度でA型インフルエンザの生存率が高いと報告されています[9]。以上のように,インフルエンザや新型コロナ感染症の拡大と湿度の関係は,まだ明確ではありません。また, 本邦の常識では, 高温多湿の夏場にはウイルスは「弱り」低温低湿の冬場で猛威を振るうとされています。
新型コロナウイルスは湿度に強いのでしょうか、弱いのでしょうか?。この問題に取り組むためには、先入観を捨てることが重要だと思います。新型コロナウイルス感染症は、インフルエンザとは異なる病気です。したがって、類似性から同じようなものであろうと考えると、本質を見誤るおそれがあります。
また、同じ病気ではないのだから、同じ対策では感染拡大を防げない可能性があります。実際、ここまで徹底した「インフルエンザ対策」により、2020年12月のインフルエンザの感染拡大は例年の数百分の1に抑制されています[9’]。しかし、新型コロナ感染拡大は継続しています。これは、インフルエンザ対策は有効であろうけども、インフルエンザ対策だけでは不十分であることを示しています。次回以降で述べますが、このインフルエンザ対策は間違いなく飛沫感染拡大を抑えることに貢献しています。しかし、それだけでは新型コロナの感染経路を全て遮断することはできない。大きな見落としがあるのではないかというのが、わたしの意見です。
定点観測に置ける、インフルエンザの累計患者数の推移[9’]。
参考文献
[5] C. Merow, M. C. Urban, PNAS 2020, (November 3), 117, 27456–27464.
[6] P. Dabish, et.al, Aerosol Sci. Tech. (Accepted Manuscript, Online): Nov. 2020 https://doi.org/10.1080/02786826.2020.1829536
[7] K. Kormuth, J. Infect. Disease, 2018, 218, 739.
[8] J. Shamann, M. Kohn, PNAS, March 2009, 106, 3243.
[9] L. C. Marr, et.al, PLOS ONE, Oct. 2012, 7, e46789.
[9’] 例えば厚生労働省 インフルエンザに関する報道発表資料https://www.mhlw.go.jp/content/000706760.pdf
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