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IT革命とエネルギー使用量(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 産業の進歩に従ってエネルギーが大量に必要になる、産業革命後の世界を観察すればそのように見えます。ですから「化石資源の使用を制限することは産業の衰退、ひいては人間生活の貧困化につながる」という意見は昔はそれなりの説得力があったのです。ちなみにいまの状況は「化石資源から再生可能エネルギーへ」という道筋が見えてきましたが本格的なエネルギーの切り替えにはまだまだ時間がかかる、というところでしょうか。

 さて、今回話題にしたいのは産業の進歩は本当にエネルギー使用量を増やすのか、という疑問です。より具体的にはIT革命といわれる産業構造の変化について。インターネットの商業利用解禁が1990年ごろ、インターネットの利用を一般的にした Windows95 の発売がまさに1995年だったので、この頃からIT革命、事務処理の電子化やeコマースなどが本格的になったと考えられるでしょう。これらのIT技術の本質は「無駄の削減」にあるとおもいます。以前はいろいろな商品を見込みで生産し、その実物を商店に配送し売れ残ればそのまま廃棄。それが発注と生産の合理化を進めることで無駄を省いて値段も安く、エネルギーや資源の無駄も省かれる。そう考えるとエネルギー使用量が減っても良いように思えます。

 では、その変化は実際にはエネルギーの使用量にどのように影響したのでしょうか。

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 上の図は2020年度の資源・エネルギー白書に示された日本の一次エネルギー国内供給の推移です。1990年から2000年ぐらいまで、IT革命が進んだと考えられる時期にもエネルギーの消費は増え続けているのが分かります。その後安定した状態が続き、2010年ごろから減少に転じることが見て取れます。

 要するにIT革命はエネルギー消費量を増やしていた、とまでは言わないとしても、IT革命はエネルギー消費の増加をとどめるほどではなかったのですね。

 端的に言えば、IT革命によって余計な在庫の生産は減ったものの、その分魅力的な商品が増えた、ということなのでしょうか。確かに1990年以前の世の中に比べて私自身の身の回りをみても、生活必需品的な品物が増えているのは事実ですね。

 例えばインターネットやeコマースがない世界でのPCやスマートフォンを考えると、結構な売れ残りとそれなりの値段、そしてかなりのエネルギー消費があると思います。(とはいえインターネットのない世界でPCやスマートフォンを何に使うのか、という問題の方が大きいでしょうが。)こう考えるとIT革命があったからこの程度のエネルギー消費で済んでいるのだ、という見方もできると思います。

江頭 靖幸

 

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