「悪循環」は「ポジティブフィードバック」の結果ですよ(江頭教授)
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以前こちらの記事でフィードバック制御について説明しました。
化学プラントで温度や圧力を一定に制御したい。たとえば温度の場合。加熱するヒーターの出力を巧く調整すれば目的の温度に一定にできるはず。でも「巧く調節」するためには対象の温度を制御装置に教えてあげる(フォードバックしてあげる)必要がある、という話でした。
さて、もう少し詳しい話をすると、フィードバックされた対象の温度、これから目的の温度を引き算して、その差がプラスの(対象温度が高すぎる)場合はヒーターの出力をマイナスに、マイナスの(対象温度が低すぎる)場合はヒーターの出力にプラスする。このようにするとシステムは目的の温度に近づいてゆくのです。(要するに下がったら上げろ、上がったら下げろ、ということですね。)
この場合、差がプラスなら出力がマイナス、差がマイナスなら出力はプラス、と符号が逆転します。差に「マイナス」をつけてヒーターを制御するので「ネガティブ」なフィードバックを行う、と言います。つまりネガティブフィードバックが一般に行われる制御です。
さて、対象の温度から目的の温度を引いた値の符号を、逆転させないでフィードバックするとどうなるのでしょうか。対象温度が高い場合、ヒーターへの出力はさらに高くなり、対象温度はもっと高くなります。それがまたヒーター出力を大きくしてどんどん温度が上昇を続ける。装置が限界に達する(あるいは破壊する)まで温度の上昇が続くことになってしまいます。
この様な制御はネガティブフィードバックと対比してポジティブフィードバックと呼ばれています。
さて、このポジティブフィードバックの説明、どこかでみたことはありませんか?
そう、タイトルにもあるように「悪循環」です。ネットで調べると goo 辞書では悪循環とは
ある事柄が他の悪い状態を引き起こし、それがまた前の事柄に悪影響を及ぼす関係が繰り返されて、事態がますます悪くなること。
とあります。この説明は典型的なポジティブフィードバックの記述です。
さて、今度はポジティブフィードバックをネットで調べると、人材育成関係のサイトで「ポジティブ」な「フィードバック」で自発的な成長を促しましょう、みたいな話が出てきてビックリ。なるほど、そんな使い方もあるのか。いや、我々にとってはポジティブフィードバックという言葉はぞっとする言葉なんですが...。人材育成の分野の人は「褒めて伸ばす」くらいで我慢してくれませんかねえ。
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