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2021年3月

2021.03.31

プラスチックとリサイクル(江頭教授)

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 最近プラスチックに関する話題が多くなってきましたが、プラスチックの処理についてはずっと以前から、私が高校生の頃から問題になっていました。当時、40年くらい前ですが、私はプラスチックの処理について関心のある高校生だったわけです。今日はその私が大学に入って聞いたプラスチックのリサイクルについての話を紹介したいと思います。

 私が大学に入って化学系に進学して聞いたのは「プラスチックのリサイクルは可能だ」ということ。ただし、プラスチックを融かして再利用とかモノマーに分解して再重合とか、方法はいろいろですがどの方法でも追加のエネルギーは必要になります。

 では、プラスチックのリサイクルができると何が良いのでしょうか。普通の人は誰でも知っているようにプラスチックは石油からできています。ですからプラスチックをリサイクルすると石油が節約できるわけですね。私が学生のころはオイルショックの影響がまだ鮮明に思い出される時代だったので、これはこれで凄いことだと思ったものです。Fig1_20210330181801

 「とはいえ」と、話は続きます。石油の用途はプラスチックの製造だけではない。というかプラスチックの製造に使われる石油は実はそんなに多くはない。ほとんどの石油は燃やされてエネルギー源として利用されるのです。

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 プラスチックを一生懸命リサイクルしても節約できる石油はたかが知れている。だったら燃やすはずだった石油を少し分けてもらってプラスチックをつくり、プラスチックのごみを回収してごみ発電でエネルギーを作れば良いだろう。

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2021.03.30

バーチャルオープンキャンパスの特別プログラムの動画に参加しました(江頭教授)

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 こちらの記事で紹介したように東京工科大学のバーチャルオープンキャンパス、要するにオンライン版の大学紹介が行われました。その中の一つのコンテンツがしたの動画「SDGs×東京工科大学 ~2030年への挑戦~」です。実はこの動画には私も参加していました。

 何で私が呼ばれたのかな、と思いますが、タイトルにもある様にこの動画のテーマはSDGs。工学部は2015年の設立当初から「サステイナブル工学」を柱の一つとしていましたから「サステイナブル デベロップメント ゴールズ」となれば工学部の紹介をしなければ、ということになったのでしょうね。

 実のところ、2015年ごろはサステイナブルという言葉もそんなに広く知られてはいなかったと思います。いや、それなりに知られていたとは思いますが、今ほど有名ではなかった。この言葉が広がった理由の一つはやはりSDGsの影響が大きいのでしょうね。

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2021.03.29

ガイダンスのシーズンです(江頭教授)

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 本日3月29日からの1週間の途中で3月は終わり、つまり2020年度が終わります。先日卒業式を行ったので本学はお休みの期間。4月に入ると新入生を迎えるのですが、その前に一つやっておくべき事が。それが在校生に対するガイダンスです。

 我々工学部のガイダンスは3月26日。1年生、というか新2年生、それに新3年生、新4年生に向けた授業のために教員は準備進めていてますが、その内容をガイダンスで学生諸君に告知するわけです。

 「入学時はともかく、大学でガイダンスなんか必要なの?」

 はい、必要です。本学に固有の「コーオプ教育」や大学院進学のための情報、珍しいところでは大学がライセンスを導入しているソフトChemDrawやSciFinderのアップデートなど、在学生にも必要な情報を一気にまとめて伝達する、ガイダンスはそのための絶好の機会です。

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2021.03.26

“モルフォプレート”作りの出張実験(西尾教授)

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 今年度も,都立小松川高等学校の藤田陽子先生から化学実験講習会の依頼を頂き,3月23日に訪問して「モルフォプレートの作成」を行いました.ちょうど2週間前の3月9日には原教授が担当し,オンラインで触媒の魔法について講演しましたが,21日に緊急事態宣言が解除されたので,私は運良く対面で実施することができました.小松川高校での実験講習の担当は3年目になるのですが,毎回学生が「超」がつくほど積極的なので,非常にやりがいのある実験となっています.油性ペンを使って試料に自在なパターンを入れられるのですが,名前を書くだけでは周りから冷やかされるほど皆さんの熱が入っていました.今回も作品を撮影させてもらいましたので紹介します.

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2021.03.25

曖昧な日本語の私(片桐教授)

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 今朝(2021年3月24日)、ラジオを聞きながらメールをチェックしていたら、ラジオで◯INEの情報漏洩危険のニュースをやっていました。日本のデータベースの個人情報に海外からアクセスできるように設定されていた、という問題に関するニュースです。

 ニュースの中の取材録音で◯INEの社長にインタビュアーは「情報漏洩は確認されたのでしょうか?」と質問をしていました。
 社長は「確認していません」と答えていました。これを聞いて私は「おやっ?」と思いました。
 この社長の返答は「(漏洩したという事実は、確認(でき)ていません(=ありません))と言いたいのか、それとも「確認(する作業は)していません」と言いたいのか、どちらにも取れる言い方でした。

 このような曖昧なものの言い方は、しばしば洗脳の手段に使われます。

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2021.03.24

今週末からスタート!「東京工科大学バーチャルオープンキャンパスDAYS」(江頭教授)

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 本学に限らずどの大学も同様だと思いますが、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大以降、例年の様にオープンキャンパスが実施できない、という状況に陥っています。それでも例年通り大学に進学する人たちは居るわけですから大学からの情報発信は必要。対面のオープンキャンパスがダメならオンラインで、ということで東京工科大学では「バーチャルオープンキャンパス」を実施しました。

 さて2021年度は、はたした対面のオープンキャンパスを開催できるのでしょうか。今現在では判断が難しいこともあり、今年度もはじめは昨年度と同じく「バーチャルオープンキャンパス」としてオンラインで実施することになっています。第一回は下図にある様に3月26日~29日。まだぎりぎり2021年度に入っていませんね。

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2021.03.23

贈る言葉(学科学位授与式での研究科長送辞)(片桐教授)

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前々回前回の記事でもご紹介したように3月19日には本学の学位記授与の式典がありました。特に今年度は大学院修士の一期生を送り出す年でもあり、我々応用化学科では学科の全ての卒業生が一同に会して学位記を受け取るセレモニーの場を設けました。以下はその際の、大学院の工学系研究科サステイナブル専攻の専攻長である片桐教授から、大学院を修了する諸君への「贈る言葉」です。)

 今朝、坂を上っていると、カスケードのとこのツツジの植え込みの少しはげているところに、つくしが顔を出していました。

 また、午後、再度坂を上っていると、フーズフーの方向に白い小さな花、ユキノシタでしょうか、良いにおいがしていました。春を感じました。

 学位を勝ち取った皆様,おめでとうございます。

 

 学位は法的に認められた学術称号です。位です。あなたの学術的な能力の保証書です。その価値はあなたの学術的な能力にあります。しかし、その価値は学位にあるのではありません。そこを勘違いしないようにして下さい。学位がエラいのではなく、あなたがえらいのです。

 学位はあなたの矜持です。社会の中でますます自分の能力を磨き、学位にふさわしい能力を維持し発揮し活躍し続けて下さい。

 

 少し,怖いことを申します。社会に出て、これからの10年ちょっとがあなた方の成長のタイムリミットです。

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2021.03.22

2020年度の卒業式(江頭教授)

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 あっ、正確には「学位記授与式」ですね。昨年度は中止となった卒業式ですが、今年は何とか実施ができました。とは言え2019年度以前とは比べるべくもない。もちろんコロナウイルス感染拡大がその原因です。

 今年の八王子キャンパス体育館の卒業式前の様子は以下の通り。人っ子一人いなかった昨年度よるは賑わっていますが、学生と父兄の方々で混雑していた2019年度以前とくらべると人の人数は少ないですね。

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 もちろんこれは感染症対策として密を避けるための工夫あってのこと。まず最大の変更点は卒業式を大きく三つに分けて行ったこと。蒲田キャンパスは午前に、八王子キャンパスの学部では午後に二回に分けて実施されました。

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2021.03.19

明日(2021年3月19日)は卒業式です(江頭教授)

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 正確には「学位記授与式」と言うのですが、まあ卒業式ですよね。例年は写真のようににぎわうのですが(写真は昨年2019年3月のものです)、残念ながら昨年はコロナウイルス感染拡大防止のために式典は中止となってしまいました。

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 学部ごとに分散し、研究室単位で卒業証書を渡すだけの卒業式。でも、学生さんたちはそれだけでは心残りだったのでしょう、屋外にでて別れを惜しみつつみんなで記念写真をとる様子がそこここで見られた、それが2020年3月の卒業の日でした。

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 さて、今年の卒業式はどうなるのでしょうか。

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2021.03.18

「オンライン授業講習会」が開催されました(江頭教授)

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 これを読んでいる皆さんは「FD」あるいは「FD活動」というものをご存じでしょうか? 私がはじめて聞いたときには「フロッピーディスク?」「フロッピーディスク活動ってなに?」などと思ったものですが、ここでの意味は「ファカルティ・ディベロップメント( Faculty Development )」です。ファカルティは学部のこと、ディベロップメントは「発展」や「開発」の意味ですから、学部を発展させることです。端的に言うと、教員の能力開発を促進するための活動、ということになります。

 おっと、これは以前の記事で「オンラインツール活用講習会」について紹介したときの枕ですね。実は今回開催された「オンライン授業講習会」も同じ「FD活動」の一つ。2020年度に行ったオンライン授業の内容を振り返りつつ、2021年度のオンライン授業に向けて全学教員向けの情報発信を行う、というもの。本学の先進教育支援センターが担当で、もちろんですがこれもオンラインで行われました。

 今回の講習会、まずは2020年度の振り返りから。コロナウイルス感染症対策のための緊急事態宣言の影響で強制的にオンラインで授業を行うこととなったため一気にオンライン化が進んだ。これは我々応用化学科のみならずほとんどの学部、いえほとんどの大学で同じだと思いますが、その実態をデータで示してもらいました。たとえば本学が採用している学習支援システムの moodle の利用率は2019年度とくらべてほぼ2倍になったそうです。約1/3の授業では moodle 未使用だそうですが、これは卒業研究など少人数制の授業が主だということです。一般の講義での本学のオンライン対応は強制的に完成させられた、という事なのでしょう。

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2021.03.17

「使い捨てスプーン有料化」と言われましても(江頭教授)

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 今回の記事は以前にこのブログに書いた「ニューズウィーク日本版「特集:プラスチック・クライシス 」を読んで」と一部重複するものですが、そこはご勘弁ください。

 プラスチックをどのように処理すべきか、というのは以前から問題となっています。日本では徹底的な回収とリサイクルがその基本方針であり、回収したプラスチックのリサイクルの方法としてサーマルリサイクルを認めるかどうか、という点には議論がある。私はそんな認識でした。

 ところが最近、プラスチック全面禁止という主張をする人たちがいる。その代表例が先に挙げた 「ニューズウィーク日本版「特集:プラスチック・クライシス 」なのですが、どうも根拠が不明だ、というのが以前の記事の内容でした。

 このニューズウィーク日本版の記事には根拠が明示されていないのですが、察するに「どうせ十分な回収などできはしない」から全面禁止するしかない。そういう考え方が背景にあると思います。気になるのは「現在の日本で達成されている回収システムでは不十分なのか?」もしそうなら「どの程度の回収が行えれば充分だと考えるのか?」といった具体的な判断基準の部分なのですが、残念ながら日本版ニューズウィークからはそれは読み取ることができない。

 とまあ、ここまでは立場の違いというか、もっとよく説明を聞きましょう、という立場の話です。でも最近はもっと理解しがたい議論がでてきました。「プラスチック製の使い捨てスプーンの有料化」です。

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2021.03.16

「誰一人取り残さない」温暖化対策(江頭教授)

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 国連の掲げるSDGsの理念として語られる「誰一人取り残さない」については前回の記事でも触れました。今回は温暖化に対する対策を対象としてこの「誰一人取り残さない」という理念がどのような意味を持っているのかを考えてみたいと思います。

 まず、図に示したのは世界各国の1人あたりの二酸化炭素の年間排出量です。日本では1人あたり8.9トン。その他のいわゆる先進国でも大体1人あたり10トン程度の二酸化炭素を毎年排出している事が分かります。(アメリカはちょっと多いですね。これでも以前よりは大分ましになったのですが...。)

 さて、この現状とSDGsのゴール1「貧困を無くそう」、そして「誰一人取り残さない」を並べると

世界の人口77億人が誰一人取り残されることなく先進国なみの豊かな生活を手に入れて1人あたり10トンの二酸化炭素を毎年排出することになり、世界の温室効果ガスの排出量は770億トンを超える

ことになります。現在の温室効果ガスの排出量が330億トン程度ですからその倍以上の温室効果ガスが排出されることを受け入れなければならないのです。これとSDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」とはどのように折り合いをつければ良いのでしょうか。

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出典) EDMC/エネルギー・経済統計要覧2020年版
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より

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2021.03.15

SDGsはなぜ「誰一人取り残さない」と強調するのか(江頭教授)

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 この記事を読んでいるあなたが高校生なら「誰一人取り残さない」という SDGs のモットーに意外性を感じないのでは。というか、そもそもなんでこんなことが強調されるのか、その方が気になるのではないでしょうか。だって「ただし誰々、おまえはダメだ!」というならわざわざ強調する意味もありますが「誰一人取り残さない」なんて当たり前ですよね。

 とは言え、これは現在2021年の私達の感覚です。例えば一年少し前の記事で紹介した人口論を書いたマルサス(トマス・ロバート・マルサス)が考える社会の改善は英国国内かせいぜい欧州までだったのではないでしょうか。あっ、本人に確認したわけではないので間違っていたらごめんなさ。だってマルサスさんが生きていたのは18世紀の英国です。当時の日本は鎖国中で私達のご先祖様の暮らし向きのことはマルサスさんには縁の無い話だったと思われますからね。いや、マルサスさん自身は「誰一人取り残さない」的な事を考えていたかも知れません。でも、その誰かのなかに私達のご先祖様が入っていなかったろう、という話です。

 すこし横道にそれました。SDGsの「誰一人取り残さない」というモットーのお話しでしたね。これがなぜ強調されるのか。それはこのモットーが我々がなんとなく考えているよりもずっと微妙な、もっと言うと議論の余地のある原則だ、という事情があると思います。

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2021.03.12

八王子キャンパス、新年度に向けて準備中(江頭教授)

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 2021年4月からの新学期。本学八王子キャンパスでは感染対策をしたうえで対面授業を再開する予定です。(ただし、受講生の人数が多く、三密を避けられるサイズの教室を準備できない一部の授業ではオンラインでオンデマンド型での実施となります。)

 2020年も前期はともかく、後期はそれなりの人数の学生さんが大学に足を運んでいたので、昨年7月のように無人のキャンパスに賑わいが戻る、といった感動は少し目減りしています。その一方でそれなりの対策が必要に。我々教員だけでなくキャンパスでも準備が始まっています。

 例えば以下の写真は片柳研究棟3階のラウンジスペース。昨年はテーブルの一部にテープで×マークをつけて対面して座らないように指示をしただけだったのですが、この春休みを利用してアクリル板が取り付けられていました。これで着席できる人数は2倍に。大学にくる学生さんの人数が増えるのですから必要な対応ですね。

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2021.03.11

全学教職員会「2020年度の講義を振り返る」が開催されました。(江頭教授)

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 本学の特徴である「全学教職員会」について。実はごく最近にもこのブログで触れました。それから一ヶ月も経っていませんが、今回(2021年3月10日)のテーマについても紹介しましょう。タイトルは「2020年度の授業を振り返る」。もちろん、2020年度はコロナウイルスの感染拡大という特殊な状況の年でした。その非常事態を受けて、本学がどのような対応をしたのか、それを振り返ろうという企画です。

 今回の講演者は全員内部の教員。八王子キャンパス、蒲田キャンパスからそれぞれの学部・学環の代表による8件の発表が行われました。

 我々工学部からは機械工学科の古井教授が代表として発表を担当されました。

 さて、今回の全学教職員会、内容は本当に多岐にわたっていますので、ここでその内容を一つ一つ紹介するのは難しいところです。しかし、どの学部にも共通していたのは、例年に無い厳しい状況の中でもより充実した授業ができる様に教員がそれぞれの強みを活かした授業上の工夫をしていたこと。そして学生が教員の期待に応えて、いや期待以上に応えてみせた、ということです。

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2021.03.10

「つまり、ProsperityはProfitだったんだよ!!」「な、なんだってー!?」(江頭教授)

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 前回の記事、SDGsでもお目にかかる"People, Planet, Prosperity"という三つのPについて「実はこのProsperityという単語、昔は別の単語が使われていたとか。それについてはまた稿を改めてご紹介したいと思います。」と述べて終わりにしましたので、今回はそのお話し。いきなり結論から行きましょう。

つまり、ProsperityはProfitだったんだよ!!

な、なんだってー!?

いや、冗談ではなくて本当の話。実際、People Planet Profit と並べて検索してみましょう。英語の Triple bottom line や日本語の「トリプルボトムライン」という言葉が出てくると思います。このトリプルボトムラインが何か,という話は検索して出てきた情報をたどってもらえればと思いますが、簡単に説明しておきましょう。

 まず、ボトムラインというのは損益計算書の最後(ボトム)の行(ライン)のこと。下の図にあるように、損益計算書の最後の行には利益、すなわち Profit が書かれています。これは企業の決算の善し悪しは利益で決まることを示すもので、従来の企業の活動が利益第一主義であることを暗に象徴するものとして用いられています。

 企業活動に利益以外の目標を追加する、つまり新たなボトムラインを追加して三つのボトムラインで企業活動を評価しよう。それがトリプルボトムラインの考え方です。新たに追加されるボトムライン、すなわち企業活動の目標は、一つは社会への貢献であり、もう一つは環境保護への貢献。それぞれを People、Planetと表現し、これを本来のボトムラインであるProfitとならべて People Planet Profit となるのです。Photo_20210309080301

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2021.03.09

People VS Planet (江頭教授)

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 今回は前回のお話しの続きです。SDGsとともによく紹介される"people, planet and prosperity"ですが、それぞれ具体的にはどんな意味なのだろう、というお話しで、タイトルは「People VS Planet」としてみました。

 この「 People VS ...」という表現、アメリカの裁判用語だそうです。普通の裁判は普通「(原告の名前)VS(被告の名前)」とタイトルをつけられるのですが、原告が特定の個人や法人で無い場合は「ピープルVS(被告の名前)」となるといいます。

 さて、"people, planet and prosperity"はよく分からない、という人でも "People VS Planet" は分かり易いのではないでしょうか。日本語なら「人間 対 自然」ですから、「人間の活動は環境破壊につながる」とか「自然環境を保全しないと人類も生き残れない」とか。People と Planet のバランスをとることが重要だという考えは非常に分かりやすいと思います。(人間は自然を軽視しすぎている、というなら自然が原告、人間が被告ですから、このタイトルも Planet VS People とすべきかも知れません。)

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2021.03.08

「人間、地球及び繁栄」とは?(江頭教授)

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 最近広く知られるようになってきた SDGs ですが、この目標は国連の決議に基づいています。SDGsの大本の文書は2019年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」。その文書の序文、一番最初の文章が

「このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である。」

です。このブログ記事のタイトル「人間、地球及び繁栄」はここからとっているのです。英文だと

"This Agenda is a plan of action for people, planet and prosperity."

ですから、英語訳は"people, planet and prosperity."。頭文字Pでそろえてあるのですね。

 そういう訳で「人間、地球及び繁栄」は SDGs の重要なキャッチフレーズな訳ですが、さて、これは具体的に何を示しているのでしょうか。

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2021.03.05

国連とソ連(江頭教授)

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♪戦争をやめろ!

 ここしばらくSDGs関係の話題をこのブログに載せてきたのですが、そこで毎回出てくる言い回しが「国連の...」でした。今回は国連について少し触れてみましょう。

 国連と略していますが正式には国際連合。第二次大戦直後に組織で平和の維持を目的としています。

 というのが日本での一般的な認識ですね。国際連合は英語ではUnited Nations。第二次大戦で枢軸国と戦った軍事同盟と同じ名前がついていることから分かる様に、第二次大戦後に新たにゼロから作り出したというより、軍事同盟の自然な延長だった考えた方が分かりやすいですね。日本は枢軸国側だったので軍事同盟としての United Nations、日本語で言う連合国と国連の連続性というものをあまり意識することがありません。ですが国連の出自が軍事同盟であったことを考えれば、国連の主な役割は平和の維持だ、というより戦争の防止だ、というのは当然のことに見えてきます。

 とくに戦後、アメリカとソ連の間で冷戦が始まると、国連は米ソが互いの主張をアピールする場所、というイメージが強くなりました。私が子供の頃の国連のイメージは

ソ連の代表とアメリカの代表が大声で罵り合う場所

という感じ。みんなで仲良くしましょう、というか、喧嘩は止めましょう、と言いたい気分。

 とは言え、今から考えてみると当時の国連は冷戦の中で起こったいろいろなトラブルを話し合いで解決するための数少ない場の一つだったわけです。それだけでも国連の意義は非常に大きかったのだと思います。

 さて、その後冷戦の終結、ソ連の崩壊があって国連はどうなったのでしょうか。

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2021.03.04

SDGsと掛けて東京オリンピックと解く(江頭教授)

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  東京オリンピックが何かを人に説明する、というシュチエーションはあまり想像できないですね。そう、では子供に説明する、と考えてみましょうか。

 東京オリンピックが何かって?まず東京というのはね...

いや、さすがにこれは不自然なのでは。普通はオリンピックが何かを説明して、それを東京でやるのが東京オリンピック、となるのだと思います。

 さあ、こんどは SDGs ( Sustainable Development Goals ) について聞かれたとしましょう。

SDGsが何かって?まず Sustainableっていうのはね...

あれ、今度は自然に聞こえます。というかよく聞く説明の仕方なのでは。

 でも、これもおかしな説明の仕方だと思います。SDGsがMDGsの後継であることを知っていれば、東京オリンピックがリオオリンピックの後継であるのと同じような事だとわかるはず。この質問には、まず DGs、つまり開発目標、国連の開発目標というものがどのようなものから説明するべきでしょう。

 東京オリンピックとSDGsの類似点は他にもあります。

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2021.03.03

SDGsはS+DGsなのか、SD+Gsなのか?(江頭教授)

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 SDGsについては「SDGsはSustainable Development Goalsの略で持続可能な開発目標のことです」というの説明がまずあって「ミレニアム開発目標の後継として国連で2015年に決定されたものです」と続くのが普通ではないでしょうか。

 だとするとSDGsはまずDGsというのがあって、それにMが付いたりSが付いたりする、ということですね。つまり開発目標というのが主体でそれにミレニアムやサステイナブル(持続可能)が付いている。ミレニアムとならべてみるとサステイナブルにはそんなに重要な意味はない様にも見えます。

 つまりこの説明だとSDGsは言うなれば「第2次国連十五ヵ年計画」なのです。

 たしかにSDGsにはそのような意味があります。SDGsの17の目標には全部で169の指標が決まっていて、各国政府はその目標を達成するための努力をすることになっています。

 では我々個人はこの目標の達成、つまり169の指標の向上のために何をするべきなのでしょうか。169の指標をきちんと理解し、その数値を改善するように努力する、というのは普通の人にはほとんどできないでしょう。結局は政府に任せるしかない。私たちにできることは、せいぜいちゃんと税金を支払いましょう、ということでしょう。

 えっと、なんか僕の思っていたSDGsと違うのですが…。

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2021.03.02

SDGsが先か、サステイナブル工学が先か?(江頭教授)

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 前回の記事はSDGsの終わりについてのお話しだったのですが、今回はSDGsの始まりについて。SDGsが「2030年までに達成すべき課題」としてまとめられたのは2015年のことです。SDGsの根拠となる文書は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で、これは2015年の9月25日から27日まで行われた国連サミットで決定された文書です。(英文日本語の仮訳がそれぞれのリンクから確認できます。)
 この文章の前文、最初の一文には

このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である。

とあります。続いて、平和の重要性、貧困の撲滅の必要性が強調され、それらが前提条件として「持続可能な開発」のために必要である、と続きます。

 この「人間、地球及び繁栄」という三つの並びですが、これは本学のサステイナブル工学が謳っている三つの価値と一致しています。以下は本学WEBサイトにある「サステイナブル工学」の解説からの引用です。

「自然・環境」「産業・経済」「人間・生活」を対立するものではなく、共存させることができるものとしてとらえ、それらが調和を保ちながら健全な発展を続けていく社会を指すもので、現在、世界中でその具現化をめざす取り組みが始まっています。

 「そりゃあそうでしょう。なんならSDGsのアジェンダからの引用なのでは。」いえいえ、そんなことはありません。だって「サステイナブル工学」の方がSDGsより前にできているのですから。

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2021.03.01

SDGsはサステイナブルではないというお話(江頭教授)

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 SDGsは Sustainable Development Goals の略だ、というのは皆さんご存知でしょう。その日本語訳は持続可能開発目標ということになります。でもSDGs自体はサステイナブルではない、つまり持続しませんよね。

 それはそうです。SDGsは先行するMDGs(Millennium Development Goals)ミレニアム開発目標の後継として2015年に始まりました。で、MDGsはその名にミレニアムとあるように2000年からスタートした「開発目標」です。この「開発目標」には達成の期限が切られているのが特徴で、MDGsの達成期限は2015年と定めれられていました。

ミレニアム、つまり千年紀と名付けられているのだから目標達成は西暦3000年で良いのでは

いや、いくら何でもそんな先のことは分からないですよね。というかせっかく良い目標を掲げてもそれを「いつまでに達成する」と決めなければなあなあになってしまうのは世の常。皆さんだって身に覚えがあるのでは。(私はあります。)

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