「つまり、ProsperityはProfitだったんだよ!!」「な、なんだってー!?」(江頭教授)
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前回の記事、SDGsでもお目にかかる"People, Planet, Prosperity"という三つのPについて「実はこのProsperityという単語、昔は別の単語が使われていたとか。それについてはまた稿を改めてご紹介したいと思います。」と述べて終わりにしましたので、今回はそのお話し。いきなり結論から行きましょう。
つまり、ProsperityはProfitだったんだよ!!
な、なんだってー!?
いや、冗談ではなくて本当の話。実際、People Planet Profit と並べて検索してみましょう。英語の Triple bottom line や日本語の「トリプルボトムライン」という言葉が出てくると思います。このトリプルボトムラインが何か,という話は検索して出てきた情報をたどってもらえればと思いますが、簡単に説明しておきましょう。
まず、ボトムラインというのは損益計算書の最後(ボトム)の行(ライン)のこと。下の図にあるように、損益計算書の最後の行には利益、すなわち Profit が書かれています。これは企業の決算の善し悪しは利益で決まることを示すもので、従来の企業の活動が利益第一主義であることを暗に象徴するものとして用いられています。
企業活動に利益以外の目標を追加する、つまり新たなボトムラインを追加して三つのボトムラインで企業活動を評価しよう。それがトリプルボトムラインの考え方です。新たに追加されるボトムライン、すなわち企業活動の目標は、一つは社会への貢献であり、もう一つは環境保護への貢献。それぞれを People、Planetと表現し、これを本来のボトムラインであるProfitとならべて People Planet Profit となるのです。
これはすごく腑に落ちる表現です。People Planet Profit は企業にとっての価値だ、ということですね。
Planet VS Profit なら、古くは公害問題が深刻だった頃の企業の行動に対する反省として明確にイメージすることができる。公害を防止するために排ガスや排水の処理施設をつくるとしたらその分の費用がかさんで利益が減る。そんな対立を表現しているのでしょう。
People VS Profit もすぐにイメージできるでしょう。People が労働者であれば「ブラック企業」は Profit を People より優先している企業だということですね。
いや、 People VS Profit に至ってはもっと懐かしい表現にも直結しています。そう、労働者 VS 資本家 です。
”People Planet Profit”のトリプルボトムラインは企業のための理念です。それが転じてSDGs の基本となった「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の序文では "People, Planet, Prosperity"となりました。主体が企業でなくなったのでProfitでは辻褄が合わない。そこでPで始まるProsperityを入れたのでしょうが、これはどうにもこうにも座りが悪い、という話が前回のお話しでした。
つまり、SDGsの三つのPを、Peopleは人間システム、Planetは地球システム、Prosperityは社会システムと解釈する向きもありますが、Prosperityは「社会システム」じゃなくて「会社システム」だった、ということですね。
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