SDGsが先か、サステイナブル工学が先か?(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
前回の記事はSDGsの終わりについてのお話しだったのですが、今回はSDGsの始まりについて。SDGsが「2030年までに達成すべき課題」としてまとめられたのは2015年のことです。SDGsの根拠となる文書は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で、これは2015年の9月25日から27日まで行われた国連サミットで決定された文書です。(英文、日本語の仮訳がそれぞれのリンクから確認できます。)
この文章の前文、最初の一文には
このアジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画である。
とあります。続いて、平和の重要性、貧困の撲滅の必要性が強調され、それらが前提条件として「持続可能な開発」のために必要である、と続きます。
この「人間、地球及び繁栄」という三つの並びですが、これは本学のサステイナブル工学が謳っている三つの価値と一致しています。以下は本学WEBサイトにある「サステイナブル工学」の解説からの引用です。
「自然・環境」「産業・経済」「人間・生活」を対立するものではなく、共存させることができるものとしてとらえ、それらが調和を保ちながら健全な発展を続けていく社会を指すもので、現在、世界中でその具現化をめざす取り組みが始まっています。
「そりゃあそうでしょう。なんならSDGsのアジェンダからの引用なのでは。」いえいえ、そんなことはありません。だって「サステイナブル工学」の方がSDGsより前にできているのですから。
本学工学部の開設は2015年、このことはこのブログでも時々ふれています。「サステイナブル工学」は工学部開設の時から本学工学部の特徴として位置づけられていました。「サステイナブル工学」についての最初の本格的な授業は2年前期の「サステイナブル工学基礎」ですが、これが始まったのが開設2年目の2016年4月から。つまり SDGs と本学の「サステイナブル工学」教育は時を同じくしてスタートした、と言えるのです。
さて、前述の「人間、地球及び繁栄」について。もちろん、これは本学がオリジナルでSDGsがフォロワーだ、などと言う気はありません。2015年に「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が決議されるまでには長い長い事前交渉があったはずですし、それは本学工学部の開設準備も同じこと。持続可能な開発の概念は古くはブルントラント委員会の「我々の共通の未来( Our common future )」に遡るもので、この三つの価値のバランスという考え方もその流れから出てきたもの。つまりSDGsも「サステイナブル工学」も同じ流れの中にある、ということなのです。
「解説」カテゴリの記事
- 災害発生時の通信手段について(片桐教授)(2019.03.15)
- 湿度3%の世界(江頭教授)(2019.03.08)
- 歯ブラシ以前の歯磨き(江頭教授)(2019.03.01)
- 環境科学の憂鬱(江頭教授)(2019.02.26)
- 購買力平価のはなし(江頭教授)(2019.02.19)