曖昧な日本語の私(片桐教授)
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今朝(2021年3月24日)、ラジオを聞きながらメールをチェックしていたら、ラジオで◯INEの情報漏洩危険のニュースをやっていました。日本のデータベースの個人情報に海外からアクセスできるように設定されていた、という問題に関するニュースです。
ニュースの中の取材録音で◯INEの社長にインタビュアーは「情報漏洩は確認されたのでしょうか?」と質問をしていました。
社長は「確認していません」と答えていました。これを聞いて私は「おやっ?」と思いました。
この社長の返答は「(漏洩したという事実は、確認(でき)ていません(=ありません))と言いたいのか、それとも「確認(する作業は)していません」と言いたいのか、どちらにも取れる言い方でした。
このような曖昧なものの言い方は、しばしば洗脳の手段に使われます。
例えば、中年以降の客に対して、占い師がみる時に「あなたのお父様は….なくなって………いませんね」というのは有名です。これも2通りに解釈できます。「あなたのお父さんは,亡くなって(もう)いませんね。」とも、「あなたのお父さんは(まだ)亡くなってはいませんね(存命ですね)」ともどちらにも取れます。
しかし、みてもらう方は自分の父について言い当てられた、と驚き、感激し、その占い師のことばを信用するようになります。
日本語は「助詞」の使い方ひとつで、語順をいかようにも置き換ええられます。しかし、それはしばしば誤解の元になります。英語の場合は文法で厳密に語順を定めているので、このような誤解を招くことは,日本語に比べて,まれです。その様な誤解を避けるためのいろいろなテクニック、例えば形容詞句は長いものを先にする、というようなテクニックは,いろいろな「文章の書き方」の本に掲載されていますので、是非御読みください。
さらに文章の中に不補助助詞の「が」などが紛れ込むと、文章構造を複雑化し、ますますわかりにくい文章になります。(ブログ2015.8.13 http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2015/08/post-2746.html)
さて、社長のコメントはどちらの意味だったのでしょうか。これからの報道を待ちましょう。
皆様にはくれぐれも曖昧表現を使用しない、まして悪用しませんように。
そして、他人の曖昧なことばには「どっちやねん」と冷静な突っ込みを入れましょう。
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