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2021年4月

2021.04.30

続・パソコンかスマホか?(江頭教授)

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 むかし「笑ってお仕事。」というCMがありました。マイクロソフト社が Poor man's Mac (貧乏人のMac)、じゃなかった、Windowsを発売したときのCMで、私は「何て趣味の悪いCMなんだ」と思ったものです。とはいえ今でも覚えているほどの印象を残したということはCMとしては成功しているのかも知れませんね。

 それはさておき、ここで「お仕事」という単語が入っているのがポイント。Windows(と、それをインストールしたPC、正確にはIBM互換パソコン。日本ならNECのPC98など)は仕事に使うもの、仕事に使えるだけの信頼性のあるもの、と主張したかったのだろうと思います。当時グラフィカルユーザーインターフェイスでは圧倒的に先行していたMacの利用者イメージがアーティスト的だったことから差別化を図りたかったのでしょう。(いや、化学者がアーティスト的だという気はありません。化学者がMacを使っていた理由は別にあるのです。)でもユーザー側からみても「仕事でもなければ(Macはともかく)Windowsなんか使いたくないよ。」という気持ちに寄り添ったCMと言えるでしょう。(ほんとか?)

 さて、話は変わって前回の「パソコンかスマホか?」論の続きとして、今回は以下のようなデータを持ってきました。出所は総務省の「情報通信白書」の令和2年版。いろいろな情報通信機器の世帯保有率の推移を示したグラフです。

 

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2021.04.29

パソコンかスマホか?(江頭教授)

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 これを読んでいるあなたが高校生だったら、たぶんスマホ派なのでは...などという決めつけはいけませんね。パソコンだろうがスマホだろうが、どちらが優れているということもありません。適材適所で使えば良いだけの話。ですが、やっぱり人により好みというものがあるのではないでしょうか。

 私は古い人間なのでやっぱりパソコン派です。スマホは少し情報をみるとか、本来の電話として使うとかならともかく、何かの作業、具体的に言えば文字の打ち込みがあるとやっぱり敷居が高くなります。せいぜい自分のメールアドレスが限界。従って、文章をつくるような、あるいはグラフを作るような作業はパソコンで行うことに。まあ、これがパソコンの適材適所というものでほとんどの人はそうなのでは。だとするとスマホをメインで使っている人は創造的な仕事をしていない...って、やっぱり決めつけてるじゃん。

 スマホでないとできない事もあります。例えばカメラがついていて写真が撮れることと、ついでにQRコードを読み取れるので画像を使って任意のURLにナビゲートできるのも大きいですね。

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2021.04.28

お休みには何をしましょうか?(江頭教授)

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 私が博士課程の学生だったころのこと。体調を悪くして一週間ほど大学を休んだことがあるのです。それまでの実験研究の流れが強制的に中断されるのですが、さてどうしよう。

 前から気になっていたのがパソコンを勉強してプログラムを作ること。昔のことなのでデスクトップのパソコンで、Windowsの様なグラフィカルなユーザーインターフェイスなどありませんでした。先輩に譲ってもらったEPSONのNEC互換パソコンを使ってBASICでプログラムを作ってみよう。

 どんなプログラムをつくろうか?何がきっかけだったか忘れてしまったのですが、数値計算で逆ラプラス変換を行うプログラムを作ってみよう、そう思いついたのでした。

 と、ここまで書いたところで詳しい人なら「こいつ何言ってるんだ」と思ったはずです。

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2021.04.27

「温暖化が起こるのは地球に出入りするエネルギーのバランスが崩れているから」ではない、というはなし(江頭教授)

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 二酸化炭素などの温室効果ガスによって地球が温暖化する、ほとんどの人は知っている話ですよね。でもどうして温暖化が起こるのでしょうか。

 温室効果ガスが赤外線を吸収するから...これだけでもよく分かりません。ちゃんと理解するためには地球に出入りするエネルギーのバランス、つまり太陽からやってくるエネルギーと地球から宇宙に逃げてゆくエネルギーのバランスを考えないと。

 太陽からやってくるエネルギーは光として地球に到達します。その波長はいろいろ。可視光も紫外光も含んでいます。地球から宇宙に逃げてゆくエネルギーもあるのですが、それは赤外線として出て行く。入ってくるエネルギーと出て行くエネルギーが同じなら地球の温度は一定です。

 ところが大気中に温室効果ガスが増えると、大気による赤外線の吸収も増える。地球から出ていこうとする赤外線が大気に吸収されてしまうのに入ってくる光はそのまま。地球のエネルギーバランスが崩れて温暖化が起こるのです。

 と、このように言われると、そうかな、と思うかも知れません。でもこれは正しい言い方ではありません。

 

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2021.04.26

「目標」46%削減と言ってますが、それは「夢」なのでは(江頭教授)

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 このブログの内容は私(江頭)の個人的意見であり、学校法人片柳学園、東京工科大学、あるいはその一部(工学部、応用化学科)の組織としての意見をかならずしも反映するものではありません。

 と、注意書きをしてから本題に。先日2030年度の温室効果ガス排出量の新たな国別削減目標を13年度比46%減とする、という発表がありました。TBSのニュースサイトの2021年4月23日の記事によると小泉環境大臣がこの2030年に46%削減という目標について

『金メダル目指します』と言って、その結果、銅メダルだったとき非難しますかね

という発言をしたとか。

 小泉幸太郎君はずいぶんと弱気なんだなあ。46%が金メダル?とんでもない!金メダルというなら100%削減と言うのが普通じゃないか。いや、本物の金メダルに比べたらこんなの控えめな方。もう一歩踏み込んで世界の他の国が放出する温室効果ガスも責任をもって回収・固定してみせます、世界の皆さん、どうぞ温室効果ガスのことは忘れて今まで通りに経済発展に尽力し、幸せな生活を目指してください、となぜ言えないのか!

 えっ!そんなことを言って達成できなかったらどうするのかって?それこそ、「『金メダル目指します』と言って、その結果、銅メダルだったとき非難しますかね」ってことですよ。棒ほど願って針ほどかなう、ってのが人生。目標を大きく持たない人間は大成しないよ、君ぃ。

 まあ、なんと言いますか。ちょうど就職活動中の学生さんに「どんな職業につきたいですか」と聞けば「目標」を聞いたことになりますが、小学生に同じことを聞いても「夢」が返ってくる様なものでしょう。こんな物言いをされると46%削減が「目標」ではなくて「夢」の様に思えてしまいます。

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2021.04.23

「サステイナブル」?、「サスティナブル」?、「サステナブル」?2021年版(江頭教授)

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 我々応用化学科が所属する東京工科大学工学部、その柱の一つがサステイナブル工学教育です。では「サステイナブルって何?」と思ったひと、言葉自体が分からないひとはどうすれば良いのでしょうか。「ググれ!」ということで今回は「サステイナブル」と検索の話を。

 と、この書き出し、実はこの「「サステイナブル」?、「サスティナブル」?、「サステナブル」?2020年版(江頭教授)」という記事の焼き直し。さらにいうと、この記事も「雑感 サステイナビリティの認知度 「サステイナブル」?、「サスティナブル」?、「サステナブル」?(片桐教授)」の続編です。

 本学工学部の特徴である「サステイナブル工学教育」、その「サステイナブル」は"sustainable"のカナ表記なのですが、「サステイナブル」以外でも(イのない)「サステナブル」や(イが小さい)「サスティナブル」など、表記のゆらぎがある。では、どれが一般的なのかをGoogleさんに聞いてみよう、というのがこの一連の記事の内容です。

 さて、2021年4月23日時点での検索結果を示しましょう。

 「サステナブル」 22,700,000 件

 「サスティナブル」 7,910,000 件

 「サステイナブル」 11,300,000件

イのない「サステナブル」が第一位、我らが「サステイナブル」は第二位ですがちょうど半分くらいでしょうか。イが小さい「サスティナブル」はさらに少なくて第3位でした。

 では2020年01月08日の「「サステイナブル」?、「サスティナブル」?、「サステナブル」?2020年版(江頭教授)」での結果を見てみましょう。

 「サステナブル」 4,630,000 件

 「サスティナブル」 1,550,000 件

 「サステイナブル」 2,950,000 件

で「サステイナブル」は第二位。一位の「サステナブル」の半分くらいのヒット数でこの比率はあまり変わっていませんね。

 さらに遡って2016年03月14日の「雑感 サステイナビリティの認知度 「サステイナブル」?、 「サスティナブル」?、「サステナブル」?(片桐教授)」では


 「サステナブル」 1,940,000件

 「サスティナブル」 381,000件

 「サステイナブル」 359,000件

という結果が。この5年間で「サステイナブル」はイが小さい「サスティナブル」は追い抜いたのですが、まだまだイのない「サステナブル」は遠いですね。

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2021.04.22

カーボンニュートラルと科学の進歩(江頭教授)

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 前回の記事で核廃棄物の現実的な処理技術のめども立たないまま原子力発電所の建設を決断した1960年代の人々について「科学が進歩して問題を解決してくれる」となんとなく信じていたのではないか、と書きました。結果としてその見込みは外れ、現在に大きな禍根を残している。その意味で当時の人々は非難されるべきでしょう。

 とはいえ、その考え方、行動の仕方は過去を非難することで解消されるのでしょうか。私が懸念するのは「科学が進歩して問題を解決してくれる」という考え方が今でも生きているのではないか、ということです。

 例えば総理大臣の所信表明演説でも触れられた「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」という考え。この2050年という目標設定は一体どの程度の科学的な根拠があるのでしょうか。以前このブログ(こちら)で取り上げた「長期低炭素ビジョン」では2050年の目標は温室効果ガスの80%減となっていました。(これだって目を見張るような大胆な目標だと思いました。)なんで80%減が20%ポイント上積みされたのでしょうか。これは2017年の検討ですから4年間で状況が変わった、というなら、その状況の変化とはいったい何なのでしょう。




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2021.04.21

核廃棄物と科学の進歩(江頭教授)

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 現在は石油をエネルギー源としているけれど、やがては原子力に取って代わられる。その先は核融合でほぼ無尽蔵のエネルギーが利用できるようになるはずだ。

 なんてことを真面目に信じていたころもありました。1986年のチェルノブイリ原発事故まででしょうか。それとも1979年のスリーマイル島の事故までだったかも。原子力というものは人類の手に負えないものなのでは、という疑問が広がっていったのはこのくらいの時期だったのではないかと思います。これは世間的にもそうであると同時に、私個人としても同様でした。高校生から大学、大学院と進んで行く時期で、科学技術というものがどういうものなのかが分かってくるにつれ、私は原子力に対して懐疑的になっていった様に思います。

 科学技術の発展には事故がつきものだ。新しいことをすれば問題が起こることは避けられない。これは当たり前のことなのですが、普通の技術であれば起こる事故や発生する問題の規模はたかが知れている。(言い方は悪いですが。)それに比べて原子力関係の事故は手に負えないほど広がってしまう可能性がある。勢い、原子力関係の技術開発には厳しい制限がかけられることになって、これでは自由な技術開発への試みも封じ込められてしまう。結果として原子力関係の技術は割に合わない研究となって進歩が滞ってしまうでしょう。(逆に事故が起きても問題が拡散する可能性が小さい状況なら核関係の技術開発も進むのでは。例えば宇宙空間が人間活動の場となれば、そこでの核技術は一気に進むと想像します。)

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2021.04.20

LCAの「ライフサイクル」が「サイクル」に見えない件(江頭教授)

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 ライフサイクルアセスメント(LCA)の「ライフサイクル」とは製品の原料収集、組立、使用、廃棄の全プロセスのこと...などと説明するのですが、よく考えるとLCAに出てくるライフサイクルって全然「サイクル」じゃないんですよね。リサイクル(厳密には水平リサイクルです)すればサイクルっぽいですが普通は原料→製品→廃棄物と一方通行です。

 そもそもライフサイクルってなんだっけ。例えば蝶のライフサイクルを考えてみましょう。

卵が芋虫になってサナギになって蝶になる。蝶は死んでしまいますが残された卵から再び新たな蝶の物語が始まるのです。

そう、これは完全にサイクルなんですよね。

 蝶の最期の後に卵が残っている、というところがサイクルと呼ばれる所以。命の永続性とでも言いましょうか。まさに生命=ライフのサイクルなので、工業製品などと同列に論じるのは如何なものか。

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2021.04.19

東京工科大学工学部に「サステイナブル工学科」がない訳(江頭教授)

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 本日(4月19日)の1限から今年度の「サステイナブル工学基礎」の授業が開始されます。対象は本学工学部の2年生。本学工学部は我々応用化学科の他に機械工学科、電気電子工学科を合わせて3学科体制ですが、この授業は全ての学科の学生が受講する必修の授業となっています。かなり特別な扱いなのですが、それもそのはず。工学部のWEBサイトをみると本学工学部の「三つの特徴」の一つとして「サステイナブル工学」があげられているくらいなのですから。

 そんなに重視しているなら「サステイナブル工学科」というのが有るのでは...と思う人も居るかも知れません。でも、本学工学部には「サステイナブル工学科」はありません。これは「サステイナブル工学」とは何か、という基本的な考え方に関わっているポイントなので、今回の「サステイナブル工学基礎」の授業でも説明しておきたいところです。

 現在の文明社会がサステイナブルではない、その最大の要因の一つは地球温暖化問題だと言って良いでしょう。この地球温暖化問題を具体例として考えてみましょう。温暖化の原因は大気中の二酸化炭素濃度の上昇だと考えられますから、この二酸化炭素を何とかすれば問題は解決します。

 大気中の二酸化炭素を吸着して集める技術、集めた二酸化炭素を大気から隔絶された状況に閉じ込める技術、あるいは二酸化炭素を保存可能な形態に変換する技術、等々。地球温暖化問題への対策はいくつか思いつくことができます。これらの対策を進めるための研究がサステイナブル工学だ、と考えればサステイナブル工学科をつくるというのは良いアイデアのように思えます。

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2021.04.16

デマを拡散しないように 地震予知は可能か?。(片桐教授)

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<以下の記事の内容は片桐教授から2021年2月15日に投稿されたものです。記事の内容に鑑みて時期をずらして公開することとしました(江頭)>

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

 13日夜11時過ぎに起こったM7.3の地震にはびっくりしました。八王子は震度3、近隣の町田や相模原は震度4でした。わたしがこれまでに経験した最大震度は5弱(鳥取西部地震)でしたので,それよりは小さいものでした。しかし、既に就寝していた上に揺れが長かったので、発表された震度よりも大きな揺れに感じました。15日朝の時点で、福島や宮城を中心にけが人が多数報告されています。皆さんが無事であることをお祈りいたします。
 今朝、研究室を確認したところ、薬品等が漏れ出ていることはありませんでした。しかし教授室の窓辺に不安定に積んであった書籍、「元素戦略」「東日本大震災 石巻災害医療の全記録」の2冊が、床に落ちていました。

 さて、このような大地震を事前に予知できれば、災害の局限対策に役立ちます。台風については、1964年に設置された富士山レーダーのおかげで、その進路や規模や到来時刻などをかなり正確に予知・予報できるようになりました。これにより多くの人命が救えるようになりました。気象災害の場合、そのインシデントの発生そのものよりも、それに対する行政から住民への周知、そして避難などの人的原因によるリスクが問題になっています。一方、地震の予知・予報は技術的に未だできていません。2004年になって,揺れの数秒前に危険を警告する「緊急地震速報」が実施されています。これが数分前、数時間前、数日前と、台風並みに予知できれば、もっと多くの命や財産を守ることにつながります。

 わたしは18歳まで静岡県民でした。「東海地震が来るぞー」と脅かされて育ちました。1969年に東大の先生が東海地震の可能性を指摘し、1978年に「大規模地震対策特別措置法」が試行されました。しかし、まだ大地震の「予知」は技術的にできません。歪み計などの装置に異常が見られたら,地震予知連絡会が招集され、必要に応じて「警戒宣言」を発令するという法的・制度的な整備はそれなりにできています。しかし、それを予知する技術はまだのようです。まだM7クラスの地震の直前予知は行なわれていません。

 台風に比べ、大地震の予知が難しい理由は、その再現性の確認の困難さに尽きると思います。東日本大震災クラスの地震は数百年に一度きりしか起こらないので、その観測データと地震の因果関係を検討できません。気象庁の統計ではこの200年間の「被害地震」の発生回数は23回、約9年に一度です。これではなかなか再現性を確認できません。検証できません。
https://www.jishin.go.jp/main/choukihyoka/higaijishin0601.pdf

 地震予知の3要素として、「日時」「場所」「規模」があります。責任ある地震予知にはこの3つの予知を求められます。台風の予想ではすでにこの3要素を満たしています。一方、地震ではまだこの3要素を満たす予報は困難なようです。専門家の方々は、実際に発生した地震についてのコメントを発しています。しかし、予報は出していません。また、ネットには多くの「地震を予言」する記事がありますが、オカルト的なものが多く、この3要素をおさえている予言はなく、また、当たりません。

 なぜ、地震予知は技術的に難しいのでしょうか?。これは地震がある種の非線形現象であり、不確定な、あるいは小さな要因で不確実化するためと思われます。何かの書籍で読みましたが、地震予知は:「下敷きを左右両側から押していく時に、上に跳ね上がるか,下に跳ね上がるかを予想するようなもの」だそうです。「力を加えていった時に「いつ」跳ね上がるか,「どっちへ」跳ね上がるかを予想することさえ難しいのに、もっと複雑にいろいろな要因の絡む地震は(まだ)予知できない。」だそうです。

 それでも、予知したいと思うのは科学者の性です。わたし自身は、直前予知の可能性を探るべく、自分の体調や月齢やその他の気象現象や地震の発生頻度を20年以上観察しています。(2015年までは紙版で記録していました。今はエクセルで記録しています。)
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その観察結果は、いくつかの「有意」とは言えないレベルでの経験則的なものを示唆しています。
(1) 月齢について:新月から上弦の前後期間に大きな地震は多いような気がします。今回の13日の地震も2011年の地震もこの期間内でした。
(2) 大きな地震の前(数週間)にやはり大きな地震があるように思います:今回の地震の2日前の11日にバヌアツでM7.7の大地震が起きています。また2011年の地震の2〜3週間前にニュージーランドで日本人留学生が巻き込まれた地震が起きています。
(3) 地震の少し前から私の体調が悪くなる(疲労感が激しくなる)。片桐はナマズなのかも知れません。
 しかし、いずれの観察も,必要条件でもなければ十分条件でもありません。先の(1)の期間以外でも大きな地震は起こりますし、バヌアツの方で大きな地震が起きた後に日本で必ず大きな地震が起こるわけではありません。まして、私の体調は「気のせい」レベルでしかありません。
 このような事象と地震発生の関係は、「疑似相関」とさえいえないようなものとは思います。しかし、その潜伏変数が明らかになれば、地震予知に役立つのかもしれません。


 12日の卒論発表会のために坂の上の会場へ向かう道すがら、息を切らしながら片桐は江頭先生へ「今日は体調が悪いから地震に注意かも。でも、未明にバヌアツで大きな地震があったから、これかな」と軽口をなにげに話していました。

 信じようと信じまいと…

 

<この2月12日、卒論発表会の会話の後、13日に実際に地震が起きたというわけです。これは2011年の東北地方太平洋沖地震の余震であり、引き続き余震が起こる可能性が指摘されていました。 (江頭)>

 

片桐 利真

 

2021.04.15

本年度第一回目の「全学教職員会」が開催されました(江頭教授)

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 以前、こちらの記事こちらの記事で紹介しましたが、本学では「全学教職員会」という、名前通り本学の教員、職員が全員参加する講演会形式の会議をほぼ月に一度のペースで開催しています。

 4月から新年度を迎えて、4月14日には今年度最初の「全学教職員会」が開かれました。ここしばらくはオンライン実施だったこの会議、写真のように久々に対面で実施されることとなりました。第一回のテーマは、本学の運営方針、基本方針について。

 千葉理事長、大山学長に続いて副学長、教務部長、就職部長、学生部長、要するに本学の首脳陣による今年度の東京工科大学の運営方針の説明、というところでしょう。

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2021.04.14

新年度の授業がスタートします(江頭教授)

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 2021年度新学期の授業は本日4月14日の水曜日から授業スタートとなります。例年と比べれば少し遅いスタートですが、新型コロナウイルス問題による緊急事態宣言のためにキャンパス閉鎖となった昨年2020年の新学期に比べれば「いつも通り」といっても良いくらいですね。

 昨年前期はオンライン授業をメインに、後期には対面の授業と「対面、ただしオンライン受講可」の授業を組み合わせて実施したのですが、今期は一部の授業を除いて原則対面の授業となっています。

 もちろん、三密の回避、社会的距離の確保、マスク着用などの感染防止策をとっての対面授業の実施です。たとえば学生実験では1学年を二つのクラスに分けて、週二回の実験日に分けて実施するという体制を取ることになっています。このため時間割の組み替えなどの作業を行って準備をすすめてきました。(ただし学生実験室は化学物質を利用する関係上換気能力が大きく設定されていますので、従来通りの実施でも密閉状態にはならないと見積もられています。)

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2021.04.13

「マスク1年生」の感想(江頭教授)

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 一年前、新型コロナウイルス感染症が問題になり始めるまでは、私個人はあまりマスクに関心がありませんでした。2004年の鳥インフルエンザ騒動の時、大阪在住だったので東京に出張する際にマスクをかけていた記憶があるくらいです。(幸い、インフルエンザウイルスを人にうつすことはなかったのですが、逆にコンピューターウイルスをもらってくるという顛末に。)そんな私でもこの1年でマスクの利用者になったわけですから、世の中には同じような「マスク1年生」が山のようにいるはずです。同時にマスクの売り上げも増えていて、年末のニュースでは2020年のマスクの売り上げは4倍増だったとか。(もっとも単価の値上がりの効果もあるでしょうから単純に数量が4倍では無いかもしれません。)

 マスク1年生として感想を言わせてもらうと、「からだに直接つけるもの」にしてはおざなりだなあ、と思います。例えばメガネは一人一人オーダーメイドが普通。これはメガネのレンズの都合でそうなっているのかも知れませんが、メガネを作るときにはかけ心地が良い様に調整してくれて、そのおかげで長くかけても疲れない、耳が痛くならないメガネが手に入ります。マスクのオーダーメイドはさすがに無理でしょうか。でも、何か調節ができる様になっているとか、いろいろなサイズがあるとかないのでしょうか。

 服ならサイズ毎にいろいろあるし、靴だってサイズと幅くらいの選択肢があるものですが...。でも自分の顔のサイズというのは分からないか。試着してみる、というは無理ですね。では「顎幅13.5、耳丈16、鼻の下やや長し」とか規格をつくったらどうでしょう。メジャーで測るのは難しそうですからレーザー計測の装置をマスク店において測ってもらうとか。いや、形態だけならスマホのアプリでも行けるかも。漏れが少ないマスクをつくるという点でも意味があるのでは。

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2021.04.12

「意外に知られていないですけどマスクの原料って石油なんです」(江頭教授)

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 いや、別に特定の環境大臣を真似して題をつけたわけじゃありません。ふと、どのくらいの人がマスクがプラスチック製品だと知っているのか、と思いまして。

 まず、ウレタンマスクですが、これがプラスチック製品だ、というのは皆さんご存じ、というか見るからにそうですよね。だってあんな見た目の素材はプラスチック以外にはないでしょうから。ということでウレタンマスクはもとをただせば石油だ、これは皆さんご存じのことでしょう。(いや、海綿で作った天然マスクとか...。)

 その一方で、ガーゼタイプのマスクは名前のとおり、ガーゼを重ねてつくられたもの。これは綿製品なので石油から作ったとはいえないでしょう。これは例外です。

 で、2021年現在、一般にマスクと言われて一番に思いつくのは不織布マスクではないでしょうか。今回指摘したかったのはこの不織布マスクです。見た目からなんとなく紙でできている、と思っているひとも多いのではないでしょうか。実際、昨年前半のマスク不足の際にはトイレットペーパーも品薄になったのですが、その理由の一つが「マスク増産によってトイレットペーパーの素材が不足するのでは」と思う消費者の行動があった、という説明もある様です。(私自身は「オイルショック」の記憶が影響している、と思ったのですが。)

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2021.04.09

小説「タイムマシン」(江頭教授)

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 先週は1959年製作ジョージ・パル監督の映画「タイムマシン」について紹介したのですが、今回はその原作(の翻訳)であるH.G.ウェルズの「タイムマシン」について紹介しましょう。古い作品で、有名な作品でもある本作はいくつかの翻訳版がある様ですが今回私が読んだのは阿部知二氏による翻訳で東京創元社の「ウェルズSF傑作集」の第1巻に所蔵のもの。その電子書籍版です。

 さて、大枠のストーリーは先に紹介した映画版と同じ。

1899年の大みそかのロンドン、タイムマシンを発明した主人公が80万年未来の世界での冒険を友人たちに語る、というのが物語の筋立て。主人公は未来世界で理想郷のような暮らしを送っている人類の子孫、イーロイ人と出会います。しかし未来世界の地下には人類のもう一つの子孫であるモーロック人が住んでいる。両種族の関係には身の毛もよだつような秘密が...、という展開です。

ただ映画と小説ではいくつか興味深い相違点があります。

 まず映画では主人公は80万年後の世界での冒険のあと、すぐに現在(映画で描かれる現在なので1899年です)に戻るのですが、小説版ではそれより遙か先の未来にも旅をして地球の文明、いえ、地球の生命の終焉まで見届ける、という展開があるのです。めぼしい冒険も活劇もないのですが地球の最期という非常に思索的なモチーフでSF的な感動をうける部分でした。

 そしてもう一点。地上の楽園で暮らすイーロイ人と地下に暮らすモーロック人、この二つの人類の子孫の由来が映画と小説では全く異なっていました。(以下には小説「タイムマシン」にネタバレを含みます。)

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2021.04.08

新入生ガイダンスと記念写真(江頭教授)

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 先週の金曜日、4月の2日に本学にはじめてやってきた新入生たち。今週に入って月曜日は学部ガイダンス、火曜日は入学式ときて水曜日、4月7日には学科のガイダンス、となりました。

 学科ガイダンスは応用化学科の約100名弱の新入生と我々教員約10名の参加となり、大きな教室を用いれば距離をとって実施が可能です。授業を受けるためのガイダンスや大学での生活上の注意といった工学部全体のガイダンスにつづく内容に加えて、我々応用化学科の教員全員による自己紹介なども。

 アドバイザー教員(入学から卒業研究のための研究室に配属されるまでの間、学生各自の相談役になる教員のことです)との顔合わせもこの学科ガイダンスの時。さらに授業受ける教室の場所を確認するために学内を回るちょっとしたツアーも実施しました。ツアーの途中では片柳研究棟をバックに恒例の写真撮影なども。

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2021.04.07

2021年度入学式(江頭教授)

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 昨日、4月6日に東京工科大学の入学式が行われました。

 入学式の会場は本学の蒲田キャンパスの地下アリーナです。例年、本学の入学式では大学のすべての学部の新入生が参加して行われていました。デザイン学部、医療保健学部の新入生は蒲田キャンパスに、メディア学部、コンピュータサイエンス学部、応用生物学部、そしてわれわれの工学部の学生は八王子キャンパスに通います。でもこの入学式のときばかりは全学部が一同に会する、はずだったのですが今年は新型コロナウイルス感染症対策のため、午前の部、午後の部の二回に分けての実施となりました。

 我々工学部の入学式は午後の部で行われました。

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2021.04.06

工学部の新入生ガイダンスを開催しました(江頭教授)

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 本学の今年の入学式は4月6日(この記事が公開される日)ですが、実はその前日の4月5日にガイダンスがスタートしています。新入生向けには工学部としてのガイダンスと応用化学科の学科単位のガイダンスがあるのですが、まずは工学部としてのガイダンスから。工学部全体だと新入生は約300名の大所帯ですが、片柳研究棟の地下ホールを利用して距離をとった上で対面で実施することができました。

 最初は山下工学部長からの挨拶。歓迎の言葉に続いて本学の基本理念を示し、新入生諸君のこれからの学生生活への期待の言葉でまとめられました。

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引き続き、教務委員会から大学での授業の受け方の説明を。これは私(江頭)が担当し、教養学環に作成してもらった海外研修などの紹介ビデオを含めて解説。ここまでで約1時間、ということで一休みです。

 休み明けは「大学院の勧め」と題してサステイナブル工学専攻長の片桐教授からのお話。新入生諸君は大学に入学したところですが今から卒業後のことも考えて、大学院について知っておきましょう、ということですね。

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2021.04.05

新入生がやってきた!(江頭教授)

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 本学の今年度の入学式の予定は4月6日(火)となっていますが、実は新入生の皆さんは一足早く東京工科大学のキャンパスに来てくれました。本当に最初のキャンパスへのお目見えは4月2日の金曜日。じつはこの日はノートPCセットアップガイダンスが行われたのです。

 本学の特徴として学生全員がノートPCをもって授業に臨む、という点がありました。これは我々応用化学科を含む工学部が開設されたときから、というかそれ以前からの制度です。学生さんの中には入学時に自分のノートPCを持っていない、という人も多いので、その人達のために大学が推奨ノートPCを決めて共同購入を行っています。4月2日のノートPCセットアップガイダンスでは新しく共同購入した新入生諸君にノートPCが手渡され、同時にPCのセットアップのガイダンスも行われるのです。

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 4月2日に大学に来てくれた新入生諸君は、まず入学関係の書類のセットを受け取ります。大切な学生証もその一つ。これで学籍番号がわかります。同時に大学のドメイン名のついたメールアドレスの告知も。

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2021.04.02

映画「タイムマシン」(江頭教授)

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 えっ、「タイムマシン」ってそんなタイトルで良いの?などと思う人もいるかも知れません。でも大丈夫。この映画はH.G.ウェルズのSF小説「タイムマシン」の映画化で、タイムマシンという言葉、というかタイムマシンという概念そのものがこのウェルズの小説から広まったもの。いっそ「元祖 タイムマシン」とか「本家 タイムマシン」でも良いくらいなのです。

 H.G.ウェルズの「タイムマシン」の映画化は2002年のものもありますが、こちらは1959年制作のもの。監督はジョージ・パルで同じくH.G.ウェルズの「宇宙戦争」の映画化でも有名な監督です。

 1899年の大みそかのロンドン、タイムマシンを発明した主人公が80万年未来の世界での冒険を友人たちに語る、というのが物語の筋立て。主人公は未来世界で理想郷のような暮らしを送っている人類の子孫、イーロイ人と出会います。しかし未来世界の地下には人類のもう一つの子孫であるモーロック人が住んでいる。両種族の関係には身の毛もよだつような秘密が...、という展開です。

 なんだ、タイムマシンを使った異世界ものか。と思うかもしれません。ですが、この映画のなかで80万年後の世界での冒険の比重は、じつはそれほど大きくはありません。

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2021.04.01

プラスチックのリサイクル(その2)(江頭教授)

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 前回の記事ではプラスチックの理想的なリサイクルについて説明しました。とは言っても40年前の理想論。それが今では普通に実現している、というお話しでした。今回は、この普通の理想論が成り立たないケースについて考えてみましょう。

 まず「普通の理想論」についてまとめましょう。

大部分の石油は燃料としてエネルギーを得るために使われる。その一部を使ってプラスチックを作ると、石油から得られるエネルギーは少し減るが、プラスチックごみを回収してごみ発電を行えばエネルギーを回収できる。

これが理想的なプラスチックのリサイクルの考え方です。

 このやり方が本当に理想的になるためには

  1. 石油を燃焼して得られるエネルギーと、石油をプラスチックにしてから燃やして得られるエネルギーが同じであること
  2. 使用したプラスチックが完全に回収されること

という二つの条件が満たされる必要があります。

 「理想的」というのは「現実的には不可能」という意味だ、という言い方もあるくらいで、この条件が完全に満たされることはありません。

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