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「目標」46%削減と言ってますが、それは「夢」なのでは(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 このブログの内容は私(江頭)の個人的意見であり、学校法人片柳学園、東京工科大学、あるいはその一部(工学部、応用化学科)の組織としての意見をかならずしも反映するものではありません。

 と、注意書きをしてから本題に。先日2030年度の温室効果ガス排出量の新たな国別削減目標を13年度比46%減とする、という発表がありました。TBSのニュースサイトの2021年4月23日の記事によると小泉環境大臣がこの2030年に46%削減という目標について

『金メダル目指します』と言って、その結果、銅メダルだったとき非難しますかね

という発言をしたとか。

 小泉幸太郎君はずいぶんと弱気なんだなあ。46%が金メダル?とんでもない!金メダルというなら100%削減と言うのが普通じゃないか。いや、本物の金メダルに比べたらこんなの控えめな方。もう一歩踏み込んで世界の他の国が放出する温室効果ガスも責任をもって回収・固定してみせます、世界の皆さん、どうぞ温室効果ガスのことは忘れて今まで通りに経済発展に尽力し、幸せな生活を目指してください、となぜ言えないのか!

 えっ!そんなことを言って達成できなかったらどうするのかって?それこそ、「『金メダル目指します』と言って、その結果、銅メダルだったとき非難しますかね」ってことですよ。棒ほど願って針ほどかなう、ってのが人生。目標を大きく持たない人間は大成しないよ、君ぃ。

 まあ、なんと言いますか。ちょうど就職活動中の学生さんに「どんな職業につきたいですか」と聞けば「目標」を聞いたことになりますが、小学生に同じことを聞いても「夢」が返ってくる様なものでしょう。こんな物言いをされると46%削減が「目標」ではなくて「夢」の様に思えてしまいます。

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 先の「カーボンニュートラルと科学の進歩(江頭教授)」という記事で述べた様に「目標」には理想という側面と実現可能かどうかの見通しの側面の二つがあって、そのせめぎ合いの中で決められてゆくものです。開き直って実現可能性を無視しして決めたものは「目標」ではなく「夢」でしかありません。夢を語るな、とは言いませんが、それはもっと別の場所で気が済むまで語ってくれれば良いのです。

 これは「核廃棄物と科学の進歩(江頭教授)」という記事で述べたことにも似ているのでは。現実の解決の難しい問題を直視せず、「科学が進歩して問題を解決してくれる」と安易に信じ込む、あるいは信じ込んだ振りをして核廃棄物処理の目処が立たないままに原子力発電を推進した、それは過去の過ちです。でもその行動パターンはいまでも生きていて新たな問題を作り出すのではないか。今回の小泉環境大臣の発言はその懸念が杞憂ではないことを鮮やかに証明してくれた様に私には見えるのです。

追記:ちなみに、私自身は2030年に46%削減という目標が実現不可能だと思っている訳ではありません。私の立場は「情報不足で判断できない」です。小泉環境大臣には不足している情報をこそ語って欲しかったのですが...。

江頭 靖幸

 

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