「温暖化が起こるのは地球に出入りするエネルギーのバランスが崩れているから」ではない、というはなし(江頭教授)
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二酸化炭素などの温室効果ガスによって地球が温暖化する、ほとんどの人は知っている話ですよね。でもどうして温暖化が起こるのでしょうか。
温室効果ガスが赤外線を吸収するから...これだけでもよく分かりません。ちゃんと理解するためには地球に出入りするエネルギーのバランス、つまり太陽からやってくるエネルギーと地球から宇宙に逃げてゆくエネルギーのバランスを考えないと。
太陽からやってくるエネルギーは光として地球に到達します。その波長はいろいろ。可視光も紫外光も含んでいます。地球から宇宙に逃げてゆくエネルギーもあるのですが、それは赤外線として出て行く。入ってくるエネルギーと出て行くエネルギーが同じなら地球の温度は一定です。
ところが大気中に温室効果ガスが増えると、大気による赤外線の吸収も増える。地球から出ていこうとする赤外線が大気に吸収されてしまうのに入ってくる光はそのまま。地球のエネルギーバランスが崩れて温暖化が起こるのです。
と、このように言われると、そうかな、と思うかも知れません。でもこれは正しい言い方ではありません。
地球に入っているエネルギーは一定。そこで地球から出て行くエネルギーが減ったら、すぐにその差のエネルギーで地球は暖まります。温度が高くなった地球からはより多くのエネルギーが赤外線として放出されます。大気中の温室効果ガスで吸収された分がちょうど埋め合わされるまで地球が暖まって温度上昇は止まります。その状態では地球に入っているエネルギーと地球から出て行くエネルギーは一致する。一致するような新しい温度まで地球が温暖化するのです。
こうしてみると、温室効果ガスで温暖化が起こるのは地球に出入りするエネルギーのバランスがかならず保たれなければならないからだ、ということが分かります。実はエネルギーのバランスが崩れたままで維持されるなら人間にとっては万々歳。でも地球は自然にバランスを取り戻すための新たな状態に変化する。その状態が人間にとって不都合だ、ということなのですね。
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