再生可能エネルギーのインパクトはどのくらい?(エネルギー白書2020より)(江頭教授)
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エネルギー白書については先日の記事でも少し紹介しました。また以前にはエネルギー白書をもとに「再生可能エネルギーのインパクトはどのくらい?」という記事を書きましたが、これはエネルギー白書2019のデータに基づいて書いたもの。最新のエネルギー白書は2020なのでアップデートしよう、というのが今回の記事です。
ということで今回は再生可能エネルギー の普及状況について。まずは代表的な再生可能エネルギーである太陽光発電の世界での導入量。エネルギー白書2019にも同じ図がありますが、当時の導入量は40,329万kWでした。グラフを見てもわかりますが、どんどん成長していることがわかります。でも新型コロナの影響は...おっと、このデータは2018年のものなのでコロナは関係なし。この手の統計データには少しタイムラグがあるのです。新型コロナの影響が分かるのはエネルギー白書2022になるでしょう。
エネルギー白書2020より【第222-2-11】世界の太陽光発電の導入状況(累積導入量の推移)
なお、エネルギー白書2020には注釈として「出典:IEA「PVPS TRENDS 2019」を基に作成」とある。
では、再生可能エネルギーのもう一つの代表である風力はどうでしょう。
エネルギー白書2020より 【第222-2-12】世界の風力発電の導入状況
なおエネルギー白書2020には注釈として「出典:Global Wind Energy Council (GWEC)「Global Wind Report(各年)」を基に作成」とある。
こちらの最新データは2019となっていますから太陽光より一年進んだ状況を見ています。エネルギー白書2019での最新だった2018でのデータは59,155万kWだったものが65,058万kWとなっています。順調に増加していると言えるでしょう。絶対値では太陽光より上ですが、上昇速度では負けている様で、近いうちに太陽光発電に追い抜かれるかもしれません。
今回も「世は正に大 再生可能エネルギー時代!」という印象です。では他のエネルギー源とくらべてこれら(水力以外の)再生可能エネルギー源はどのくらいの存在感があるのでしょうか。
エネルギー白書2020のデータはこれです。
エネルギー白書2020より【第221-1-3】世界のエネルギー消費量の推移(エネルギー源別、一次エネルギー)
なおエネルギー白書2019には注釈として「出典:BP「Statistical Review of World Energy 2019」を基に作成」とある。
昨年と同様、
全一次エネルギーに対して再生可能エネルギーの占める割合はまだ4.0%に過ぎません。化石エネルギーも石炭はやや消費に陰りが見えますが、化石エネルギー全体としては抑制どころか未だに増加が続いている、というのが世界の現在(正確には2年前ですが)の姿です。再生可能エネルギーの導入が進んでいる、とは言っても世界的に見ればまだまだ「導入が始まった」程度の段階にある、というのが実情。再生可能エネルギーの存在感を持つのはこれからの様です。
といって締めることができそうです。
とはいえ、再生可能エネルギーの占める割合は前回は3.6%だったのですから、そこから0.4%の上昇がありました。これを大きいとみるか、小さいとみるか。2050年に温室効果ガスゼロ、などと考える人が見れば明らかに小さすぎるのですが...。
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