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授業「サステイナブル工学基礎」の構成(その2)(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 本学の工学部が掲げる「サステイナブル工学」、その最初の授業として本学2年生が履修している授業が「サステイナブル工学基礎」です。今回もこの「サステイナブル工学基礎」の授業内容について紹介しましょう。

 授業前半の内容は前回の記事で紹介しましたので今回は後半の授業について。まず後半では教科書の目次にもある以下のテーマが対象となります。

7. ライフサイクルアセスメント
8. 製品の環境効率評価
9. サステイナビリティの評価
10. サステイナブル工学の展望

7章で取り上げる「ライフサイクルアセスメント」についてはこのブログでも触れたことがあると思います。一つの製品やサービスを対象に考えてみましょう。「その製品の有る世界」と「その製品の無い世界」を比べたとき両者にはどのような違いがあるのでしょうか。ライフサイクルアセスメントはその二つの世界の差を資源の枯渇や環境負荷などで評価するものです。「その製品の有る世界」では「その製品の無い世界」より○○kgの二酸化炭素が過剰に大気中に排出されると考えられる、といった評価です。「ライフサイクル」と強調されているのはその製品が使われている場面での環境負荷だけに注目するのではなく、製品が作られ、使われ、廃棄されるまで、その製品の一生すべての過程(ライフサイクル)を評価に含めるからです。

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 さて、ライフサイクルアセスメントではある製品、あるサービスの負の側面のみが評価の対象となっています。極論で「環境はすべてに優先する」と考えればライフサイクルアセスメントなどするまでも無く何も作らない(そして人類全部で座して死を待つ)のが正解となってしまいますが、もちろんそれは持続可能から一番遠い問題外のおはなしです。

 人類にとっての価値は環境だけではない、環境以外の価値と環境の価値とを以下にバランスさせるか、そこに持続可能な社会、サステイナブル社会成立のための条件があるはずだ。そしてライフサイクルアセスメントは環境への負荷を定量的に示す手法である。ではPlanet以外の価値、People、Prosperityの価値をどの様に定量化して、それらの間のバランスをとるのか。

 実は「サステイナブル工学基礎」の授業はここまでで終わっている、というか上記の課題に対して完全な答えを与えられずに終了します。

いや、そんな中途半端な。

はい。それはそうなのですが「サステイナブル工学」そのものが完成していない、発展途上の学問である以上これは仕方のないところなのです。

江頭 靖幸

 

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