「再生可能エネルギーのインパクトはどのくらい?」追記 エネルギー白書2016と2017を比べてみる(江頭教授)
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前回の記事では「再生可能エネルギーのインパクトはどのくらい?」と題してエネルギー白書2020からいくつかのグラフを引用しました。中でも「【第221-1-3】世界のエネルギー消費量の推移(エネルギー源別、一次エネルギー)」という図は重要で「全一次エネルギーに対して再生可能エネルギーの占める割合はまだ4.0%に過ぎません。(中略)再生可能エネルギーの存在感を持つのはこれからの様です。」と結論づけました。
定性的に「再生可能エネルギーの存在感を持つのはこれから」というのはエネルギー白書2019でも同じ。2018でも2017でも同じです。下の図はエネルギー白書2017の図で、定量的に「全一次エネルギーに対して再生可能エネルギーの占める割合はまだ2.8%に過ぎません。」となっていて、まだまだ感が強いですね。
ところがエネルギー白書2016には少し違ったグラフが示されています。2017以降にはなかった「可燃性再生可能エネルギー他」という項目があってそれが10.1%もあるのです。いや、再生可能エネルギーも結構な割合で使われているのでは…。
エネルギー白書の同じ章、同じ図番号、同じタイトルで出てくるグラフなのですが、2016年以前と2017年以降には少々違いがあるのです。
実は2016までと2017以降では出典が異なっています。2016年版には
出典:IEA「Energy Balance 2015」を基に作成
とありますが、2017以降は
出典:BP「Statistical Review of World Energy 2016」を基に作成
の様になっています。
実は2016年版には注がついていて
(注)「可燃性再生可能エネルギー他」は、主にバイオマス燃料。
とあります。
なるほど、図の10.1%はバイオマスエネルギーなんだ。バイオマスは意外と広く導入されているんだな。
おっと、早とちりしないですください。2016版のグラフをよく見ると「可燃性再生可能エネルギー他」は1970年からそれなりの量が計上されています。これは新たなバイオマス発電だけではなくて、伝統的な「薪炭」(つまり「おじいさんは山に芝刈りに」というやつ)が含まれているのです。「薪炭」がどんどん増加して石油・石炭・天然ガスといった化石エネルギーを代替するとは期待できないでしょう。ですから「再生可能エネルギーの存在感を持つのはこれから」という結論はやはり変わらないと思います。
実はエネルギー白書2016と2017のこのグラフのデータをダウンロードして比較すると、2013年の世界のエネルギー消費量の値は2016年版のデータの方が2017年版より約1割ほど大きくなっています。2017年版以降のデータでは「薪炭」の相当する部分は計上されていないのですね。
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