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2021年6月

2021.06.30

2010年~2019年の地球の炭素収支(江頭教授)

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 先に紹介した2020年の地球の炭素収支、これはコロナウイルス感染症のパンデミックの影響に関連して取り上げました。今回はパンデミック以前の地球の炭素収支について紹介しましょう。前回引用した論文「Global Carbon Budget 2020」にはパンデミック以前の最近10年間の炭素収支についても述べられています。(というか、この論文の本来の目的はどちらかというとこちらの方でしょう。)

 前回

さて、人間活動によって大気中の放出されるCO2(とCH4)のうち最大のものはもちろん化石燃料に由来のものです。これと「土地利用変更」つまり森林破壊等に由来する発生が主な項目となります。そして放出されたCO2の一部は海に、別の一部は陸地の植生に吸収され、残った部分が大気中に蓄積することになります。温暖化に直接関係するのは大気中の温室効果ガスの濃度です。

と説明しましたが、本論文では2010年から2019年の10年間の平均でこのそれぞれの項目がどの程度の量だったのかが推定されています。

 まず化石燃料由来のCO2。これは 9.4 ± 0.5 GtC /y と見積もられています。これは炭素基準の数値なので二酸化炭素を基準とすれば約35 GtCO2/yとなります。ただこの排出量は年平均1.2%で増加を続けいるというので最近の値(といってもコロナウイルス感染症パンデミック以前ですが)としては過小評価でしょう。

 これに土地利用の変化に由来するCO2の排出量 1.6 GtC/y が追加されます。排出量全体を100%として化石燃料由来が86%とほとんどを占めていることがわかります。

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2021.06.29

新型コロナワクチン接種してきました(片桐教授)

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 27日(日曜日)のお昼に、自宅近くの小学校の会場へワクチン接種にいってきました。

 その日は65歳以上のご老人と、『基礎疾患』を持つ人の接種日でした。日曜日なので、近所の小学校が会場でした。必要書類と身分証明書を持参して接種会場へ参りました。

 当日朝に体温(36.4℃)をはかり、書類に記載しました。その他の体調や既往症についても記載した上で、書類一式を持参し、現場に向かいました。

 予約時間は11:15〜11:30でしたが、いつものように余裕を持って10:45に到着したところ、この時点で受付が遅れており、列に並んでいる人は10:15〜10:30の予約の人でした。そのため、しとしと雨の中、屋根のある体育館のエントランスには人が多くたまっており、3密になっておりました。接種会場、特に日曜日はあまり早くいかないようにした方が良いですね。遅れるのは論外ですが、受付開始時刻ちょうどくらいに行くのが良いようです。

 隣にたっているおじさんが「この小学校の会場には駐車場がないので困る。仕方が無いから近所のスーパーに車を停めてきた。帰りになんか買って帰ろうかな。」と申していました。会場へのアクセスには公共交通機関を使う方が良さそうです。

 11:05に10:30−10:45の人の人が並びはじめました。われ先でもなく、年寄りに順番を譲る光景もみられました。列に並ぶ人は60〜70人くらいでしょうか。

 11:20にトイレに行きつつ会場を覗き見(下見)しました。接種は6ブースで行なわれているようです。救護コーナーも準備されています。

 11:45にやっと私の予約時間、11:15〜11:30受付の列が呼び出され、列ができました。私はその列の真ん中ぐらいです。

 11:55に受付の順番が回ってきました。書類がそろっており,本人確認できれば受付はとてもスムーズです。基礎疾患持ち(BMI > 34)ですので、お医者様の問診を受けました。11:56に医師の問診を受けました。私はアレルギー体質なので、接種終了後は30分間経過観察するべしとの判定を受けました。通常は15分の経過観察だそうです。

 12:00ちょうどに看護婦さんによる接種をうけました。ワクチンはファイザー社製です。左上腕部への筋肉注射は思ったより痛くありませんでした。受付から接種まで5分もかかっていません。すごくスムーズで、案内の方もこなれていました。

 

 

 

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2021.06.28

2020年の地球の炭素収支(江頭教授)

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 2020年には新型コロナウイルス感染症によって世界経済は大きな痛手を受けました。でも、これも悪いことばかりではないはずだ。例えば経済活動が低迷した代わりに温暖化問題にブレーキがかかるのでは。そんなことを考えた人も多いのではないでしょうか。このブログでも先日のこちらの記事で世界のエネルギー起源のCO2排出量の動向について、IEA(国際エネルギー機関)のデータを紹介しました。今回はこの排出量の減少がどのように地球の炭素収支に影響を与えたか、についての研究を紹介しましょう。”Global Carbon Budget 2020"(1)というタイトルの論文で2020年11月に公開されたもの。2020年の途中までのデータを対象としているため推測を含む内容となります。

 さて、人間活動によって大気中の放出されるCO2(とCH4)のうち最大のものはもちろん化石燃料に由来のものです。これと「土地利用変更」つまり森林破壊等に由来する発生が主な項目となります。そして放出されたCO2の一部は海に、別の一部は陸地の植生に吸収され、残った部分が大気中に蓄積することになります。温暖化に直接関係するのは大気中の温室効果ガスの濃度です。

 まず2020年の世界のエネルギー起源のCO2排出量について、この論文では産業分野別の経済データや交通量データ、発電量データなどをベースとしたいくつかの推計を比較して平均で7%の減少となると予測しています。IEAの推計では5.8%の減少となっていたのでやや大きめの推定となっています。また土地利用変化のCO2排出にはコロナウイスル感染症の影響は見られず、2010年から2019年の平均値と同程度でした。ただし2019年はインドネシアでの乾燥と森林火災の影響が大きかったので2020年は2019年よりは少ない発生量となっているそうです。

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2021.06.25

来週から授業形態が変わります(江頭教授)

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 2020年、コロナ禍で授業をオンラインを中心としたものに移行せざるを得なかった本学。でも2021年度は違う、ということで一部オンライン授業を残しながらも対面授業に移行した、という話はこちらの4月14日の記事で紹介しました。ところが予想外の緊急事態宣言が出されたため、連休に相前後して再びオンライン中心の授業態勢に移行することとなった、という話がこちらの5月6日の記事。思えば、わずか2週間と少しで対面授業の多くを断念することになったのですね。

 さて、5月の始めにスタートしたオンライン中心の授業形態、当初は5月29日までの実施を予定していて5月31日からは当初の時間割に戻すことを計画していました。ところが5月末になっても新型コロナウイルス感染症の蔓延状況に顕著な改善は見られず緊急事態宣言も延期に。このため本学のオンライン中心の授業形態も6月26日まで、つまり本日まで延長されることとなったのです。

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2021.06.24

温暖化対策と経済成長(江頭教授)

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 子供のころ、たぶん小学生のころでしょうか、祖父の家に遊びに行ったときに「くたばれGNP」というタイトルの本が置いてあったことをなぜか鮮明に覚えています。GNP(国民総生産)とは要するに国の豊かさの指標です。GNPは大きければ大きいほど豊かなのだから、GNPをどんどん大きくしよう、と考えるのが普通なのですが、これに「くたばれ」と罵声を浴びせるというのは一体どういうことか。これは当時の時代的な背景有ってのことですね。

 この「くたばれGNP」の発刊は1971年だそうです。高度経済成長の真っただ中であり、それゆえに経済成長の問題点も見えてきた時代。特に公害問題への関心が経済成長への疑問に、そして「脱」成長論に類する問題意識へと発展してゆく始まりの時代だと言えるでしょう。その流れは現在の環境保護の観点からの温室効果ガス削減や省エネルギーにもつながっていると思います。

 では温室効果ガス削減の基礎となる温室効果ガスの排出量をどうやって見積もるのか。これに技術的な問題が多数あることは容易に想像できますが、なにが温室効果ガスなのか、それぞれのガス種がどの程度の温室効果を持つのか、これについては国際的な合意がとれた科学的な根拠のある数値がベースになっています。一次エネルギーの供給量も同じ。何がエネルギー源として用いられていて、それぞれのエネルギー源をどのように一次エネルギーとしてカウントするか、には客観的な基準が定められています。

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2021.06.23

東京はあまりに遠し(江頭教授)

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 この記事が公開されるときはもう一昨昨日のことになるのでしょうか。山手線が結構な時間運転停止になったのだとか。思えば本学の工学部開設の準備に合わせて着任した当時、久々の東京暮らしで驚いたことの一つが「電車のトラブルが多い」ということでした。一時は人身事故が多い印象がありましたが、最近は車両故障など技術的な理由もある様な。(これわたしの感想なので「なんかそういうデータあるんですか?」とか追求しないでくださいね。)

 では、この山手線のニュースにふれて、ああ大変だと思ったかというとそんな事も無い。なんか遠くの出来事の様な気が。それもそのはず、実は昨年の3月から身近な駅の周りを移動しているだけ。よく考えると、オーストラリアの出張から帰って以来東京都23区内に入ったことがないのです。

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2021.06.22

新型コロナワクチン接種の予約(片桐教授)

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 先週、八王子市から『新型コロナウイルスワクチン接種クーポン券』が郵送されてきました。年齢が60歳から64歳の人に、まず郵送されるようです。家族の中では私だけが60歳以上なので、送られてきたのは私だけでした。

 「いつから予約できるのかな?。」中に入っている日程表を見ると、60歳から64歳の人は6月25日から予約できるそうですが、『優先接種対象者』は6月21日月曜日の9時からでした。優先接種は、『基礎疾患』を持つ人が対象です。私の場合、項目15の『基準(BMI 30以上)を満たす肥満の方』があてはまります。私のBMIは34.8….余裕で基準を満たしてしまっています。

 さて、21日の9時にネットから申し込もうとしました。4桁×2の予約受付番号を打ち込み、生年月日を入れて、ログイン。あれ、時間がかかります。それでもなんとか予約選択の方法のページに入れました。

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2021.06.21

LCAと人間の労働(江頭教授)

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 LCA(Life Cycle Assessment)とはある製品やサービスが消費する資源や排出する廃棄物の量をその製品等が作られてから廃棄されるまでの全工程(Life Cylce)に渡って評価することで、このブログでもこちらの記事こちらの記事で紹介しています。

 ではこのLCAでの評価には「人間の労働」というものは入っているのでしょうか?たとえば大学のLCAを考える事にしましょう。大学のサービス(?)には建物や実験施設などもありますが、やっぱり中心となるのは教員の存在です。(ですよね?)大学のLCAで例えば温室効果ガスの排出量を評価するなら、教職員各自の二酸化炭素排出量を加算する必要があるのでしょうか。

 具体的には、日本は人口1人あたり年間8.5t=8500kg の二酸化炭素を排出しています。ですから1日8時間働くとして8500/365.25×(8/24)=7.75kg の二酸化炭素がLCAの評価に加算されるべきなのか。

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2021.06.18

自分が息を止めても溺れた人は助からないですよね(江頭教授)

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 見ましたか、「ポセイドン・アドベンチャー」。豪華客船が転覆して沈み行く船体のなかに閉じ込められた人たち。怖いですねー。恐ろしいですねー。特にあの、脱出のために水の中をくぐり抜けてゆくシーン。見ているこっちの方まで息が詰まってしまいますねー。

って、何の話かって?海洋パニック映画の傑作、「ポセイドン・アドベンチャー」の1シーンです。実はこのシーン「NHKスペシャル 2030 未来への分岐点」の第2回「飽食の悪夢~水・食糧クライシス~」(内容についてはこちらで説明しています)を見て思い出しました。この手の番組をみるとどうしてもこの「ポセイドン・アドベンチャー」の「主人公達が浸水した通路を潜水具なしで通り抜けるシーン」を思い出してしまうのです。まさに息が詰まるように緊張するシーンで、映画の登場人物達が水をくぐり抜けたところで見ているこっちも思わずふーっ、と息をつくことになります。

 映画を見ている我々は映画の登場人物とちがって息が苦しいわけではない。なんならカウチポテトでジュースもポテチも飲み放題に食べ放題で、なんのつらさもありません。息を吸うのに困る事なんて全く無いのですが、でも映画の巧みな演出のおかげで自分も息ができない様な感覚を覚えるのですね。

 さて、ここで問題です。映画を見ている私が息を殺して空気を吸うのを我慢したら映画の登場人物の息が楽になったりするのでしょうか?絶対にそんな事はありません。そも映画はフィクションですからね。

 

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2021.06.17

世界のエネルギー起源のCO2排出量の動向 ―コロナ禍の影響―(江頭教授)

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 新型コロナウイルス感染症の影響については本当にいろいろなところで語られています。そんな中でも多くの人の興味を引くのが温暖化への影響ではないでしょうか。多くの国でロックダウンが実施されたこともあり人間の活動は劇的に押さえ込まれた状態になっています。温暖化の主な原因は人間活動に由来する温室効果ガスの大気への放出、なかでも化石燃料の利用による二酸化炭素の排出なのですからコロナウイルスパンデミックによって二酸化炭素の排出量は減少するはず。あわよくば「温暖化の脅威がコロナウイルスパンデミックによって解消する」ことを期待するのでは。

 さて、実際のところどうなのでしょうか。正式なデータが出そろうにはまだ時間がかかるのですが、いくつかの評価がすでに発表されています。以下の図は国際エネルギー機関、IEAのレポート「Global Energy Review 2021」(こちらからダウンロードできます)からの引用です。

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2021.06.16

「蚊取り線香」の歴史は130年だとか(江頭教授)

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 だんだん暖かく、いや暑くなってきたなあ、とは思っていたのですが夏はまだ先のはず。でもやってきてしまいました、日本の夏が。昼間は暑くても朝には涼しくなっている今日この頃なのですが窓を開けて寝たのが悪かった。思いっきり蚊に刺されてしまいました。

 ということで液体式の電子蚊取り器に昨年から買い置きしておいた90日用のボトルを取り付けてスイッチオン。これで夏の準備ができました。

 私が子供のころの蚊取り線香は由緒正しい渦巻タイプ。夜に点火して一晩寝ると朝には燃え尽きていたものです。火を使う上に灰を片付けて毎晩新しいものを準備するのですから結構な手間暇だったでしょう。物心ついたころには兄と私の子供部屋の畳に蚊取り線香の曲線とそっくりの焦げ目がついていましたから、火事になりそうなヒヤリハットがあったことが容易に想像できます。

 さてこの蚊取り線香、除虫菊(正式名称は「シロバナムシヨケギク」だとか)という植物のもつピレトリンという成分が昆虫類に対して強い毒性を示し、その一方で人間など哺乳類に対しては毒性が無いことを利用した製品だ、ということは知っていたので、

日本の伝統の背後には化学的にも正しい知恵があったんだなあ

などと思っていました。現在ではピレトリンに類似した化合物(ピレスロイド)が化学的に合成されて今私が使っている液体式電子蚊取り器にも使われているのです、などとブログで蘊蓄&化学のアピールをしよう、と思いついて少し調べてびっくり。

除虫菊ってアメリカから輸入されたんだ!ってことは明治以降ってこと?明治なんてついこないだじゃないか!(そんなことはない。)

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2021.06.15

三学科合同授業をオンラインで学科別に配信してみた!(江頭教授)

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 この記事は以前の「授業『サステイナブル工学基礎』の構成」(その1その2その3)と題して掲載して記事の続編、というか番外編です。

 「サステイナブル工学基礎」は本学工学部の三学科が一緒に受講する授業であって、その中でグループワークを行います、というのが今までの話。今回はこの三学科の授業で学科別のグループワークを実施したお話しです。あ、もちろん現在の状況下ですのでグループワークはオンラインで実施しました。オンラインでのグループワーク授業については昨年度の後期にも実施した経験があるので、正直それほど難しいとは思っていませんでした。

 学科別のグループワーク、対面で授業を実施していたころには教室にある種の座席指定(正確には学科ごとに着席する領域を指定するもの)を行って、そのあとで「近くの人とグループを作りましょう」という実施方法でした。それから類推して三つのオンライン授業を平行しておこなって、その中でグループに分かれてもらえば良い、と考えました。「机に二つPCを並べて二クラスのオンライン授業を平行しておこなっている」という話も聞いたことがあるので机に三台PCを並べれば良いだろう。普段からデスクトップPCとノートPCを並べて使っているので後1台PCをならべて...。

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2021.06.14

第1期(クォーター制)終了、第2クォーターが始まりました。(江頭教授)

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 4月にスタートした新年度、従来の前期後期の学期制なら今頃は「前期も半分過ぎて折り返し点です」ということになるでしょう。実際、本学科の3年生以外の学生にとってはその通り。気を引き締めて前期残りの期間を充実させましょう。

 なんで3年生以外?それは応用化学科の3年前期の授業がクォーター制で行われるからです。クォーター制とは前期を第1期、第2期の二期に分けて行うもの。本来は1年を4期に分けて行うものですが、本学のクォーター制は前期後期制の一方の期を二つの分ける、やや変則的な制度です。(ハーフ・アンド・ダブルクォーター制とでもいうのでしょうか?)

 でも、なんでこんな制度に?

 これは本学工学部の教育の重点の一つ、コーオプ実習制度に対応したものです。すべての学生が企業で8週間の実習教育を受ける、というのがこの制度の要点ですが、では前期15週間の残りはどうしているのか?もちろん遊んでいる訳ではなく、授業を受けるのですが、こんどは授業期間は短くなってしまう、という問題があります。

 そこでクォータ制。1週間に受ける授業の科目数は少なくなりますが、一つの科目は原則週2回実施します。(一部2回より多い科目もあります。)半分の科目を倍のスピードですすめるのがクォータ制。そのため、本年度の第1期は6月9日という早い時期に終了となったわけです。

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2021.06.11

蟻の巣は雨水で水没するのか?(江頭教授)

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 まず最初にお断りをしておきましょう。この記事では「蟻の巣は雨水で水没するのか」とうい疑問に白黒つける研究報告等を紹介しているわけではありませんので、その点に興味がある方には申し訳ありません。今回のテーマは私達のものの考え方が自分達人間のサイズにとらわれているのでは、というお話しです。

 話の始まりはラジオから。梅雨入りの話題で「蟻が騒いでいるのは雨の前兆」というようなお話しから「蟻さんも雨が降ってきたら巣が水浸しになって大変ですね」などと。これを聞いて私は「はて、蟻の巣に水なんて入るのだろうか」と疑問に思ったのです。いや、確かに少しの水は入るとは思います。でも巣が水浸しになるなるほどの水が入るのでしょうか。

 雨が降って蟻の巣に水が流れていく様子を想像してみましょう。雨水はきれいな水でしょうが、巣穴に流れてくるまでに既に泥水になっているのでは。また巣穴に入った水は壁面にしみ込みますから、やわらかくなった土の壁はやがて崩れてしまう。そう考えると、巣穴が水浸しになる前に入口が詰まってしまうのではないかと思います。

 人間サイズで、それも壁面がきれいに処理された道路や鉄道のトンネルの様なものを念頭に、そこに大量の水がやってくる様子を想像すると「巣が水浸しになる」という心配も当然のことの様に思えます。でも蟻の巣の壁面はコンクリートで塗り固められているわけではありません。そもそもサイズが小さいので穴に入りうる水の量に比べて壁面の面積の比率がすごく大きい。壁面が崩れて水に泥が混じるとすぐに流れが止まる程度に「どろどろ」になる。

 人間サイズの穴を想像すると穴が一旦塞がっても泥の自重だけで崩れてしまうでしょうがサイズの小さな蟻の巣の穴だと、どろの自重に比べて支えになる壁面の面積の比率も大きいため、塞がったらそのままではないでしょうか。Photo_20210606073801

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2021.06.10

5気圧ってどのくらい?(江頭教授)

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 本学の1年生向けの授業「フレッシャーズゼミ」は少人数制の授業。10名程度の学生さんが先生と一緒にグループワークを中心とした課題に取り組むものです。この授業のなかで応用化学科では簡単な実験をしてみましょう、という話が進んでいます。私が担当する学生諸君も2グループに分かれてそれぞれにテーマを探しています。最近は便利になったものでネット、とくに youtube などで「面白い実験」の具体例をいろいろ見ることができる。その中から一つの班が選んできたのが「野菜×爆発」です。

 「岡本太郎か!(いや、学生諸君には分かりますまい。)」とか思ったのですが聞けば「すりおろした野菜とオキシドール(オキシフル?)をフィルムケースに入れておくと勢いよく蓋が飛ぶ」という話らしい。オキシドールに含まれる過酸化水素が野菜に含まれるカタラーゼの触媒作用で分解されて酸素ガスが発生。フィルムケースの中に溜まると内圧が上がることで蓋が飛ぶ、という仕組みらしい。

 「いや、フィルムケースって。写真のフィルムなんて今の学生諸君には分かりますまい。」などと言ったら実はフィルムは無くてもフィルムケースだけがネット通販で売っているのですね。その体積、約30mLだとか。サイズも以下の図の様に示されています。

 

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2021.06.09

続・日本の温室効果ガスの排出量ーこのまま減ってゆくと2030年には?ー(江頭教授)

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 昨日の記事では日本の温室効果ガスの2019年度の排出量について紹介しました。その中で2019年度の排出量は2018年の2.9%減であり、

2018年度版では前年比3.9%減、その前の2017年度2016年度と続いて1.2%減、さらに2.9%減、3.1%減と続いて、直近のピークである2013年からとうとう6年連続の減少となりました

と述べました。6年間この傾向が続いているのだから、このまま減ってゆけばどうなるのか。今回はその計算結果を紹介しようと思います。

 横軸に年度を、縦軸に2019年度までの排出量を2013年度を100として表した相対値をプロットしたのが以下の図です。この6年分のデータから近似曲線を作りました。直線近似、というか一次関数で近似しても良かったのですが、毎年「同じ比率で減少する」と考えて指数関数で近似したのがオレンジの線。未来に延長すると、たとえば2030年度では2013年度の100から32.3%減少することが分かります。

 何で2030年か、ですか?これは日本の温室効果ガスの排出量削減目標が2013年度比で46%減に改訂された、という発表を意識してのことです。今のままの削減を続けるだけでは2030年の削減は約32%で、新たな目標を達成するためにはよりアグレッシブな削減の手段が必要なのです。

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2021.06.08

日本の温室効果ガスの排出量(2019年度版)(江頭教授)

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 最大の環境問題である地球温暖化、その原因物質である二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスはだれがどのくらい出しているのでしょうか。温室効果ガス削減のための基本的な指標となるこのデータ、日本国内での発生量については温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)がとりまとめて毎年発表しています。最新版はこの4月に発表された2019年度のデータ。少しタイムラグがあり、一昨年度のデータを昨年度のうちに整理して今年度発表する、というながれになっています。

 さて、実はこの記事、昨年もほぼ同じ書き出しで書いた「日本の温室効果ガスの排出量(2018年度版)」のアップデート版ですが、その2018年度版の記事も2017年度版2016年度版2015年度版2014年度版のアップデートなので、同じテーマで6回目の記事となります。さて、今回の結果は

2019年度の温室効果ガスの総排出量は12億1,200万トン(二酸化炭素(CO2)換算)で、前年度比2.9%減(2013年度比14.0%減、2005年度比12.3%減)でした。

となっています。2018年度版では前年比3.9%減、その前の2017年度2016年度と続いて1.2%減、さらに2.9%減、3.1%減と続いて、直近のピークである2013年からとうとう6年連続の減少となりました。昨年発表された2019年の排出量がリーマンショック後の2009年を下回って「排出量を算定している1990年以降で最少」という結果になったのですが、今回はその記録をさらに更新しているのです。これだけ減少傾向が続くところをみると、日本社会が温室効果ガスを出さない社会に向けて構造的な変化を起こしていると言ってよいのではないでしょうか。

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2021.06.07

「いじめの無い学校」は作れるのか(江頭教授)

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 今回の記事は「『事故の無い世界』は作れるのか」と「『事故の無い世界』は目指せるのか」を受けてのものです。とくに「『事故の無い世界』は目指せるのか」の方。この記事では事故を未然に防ぐ取り組みとしての「ヒヤリハット報告書」の作成について触れました。(「ヒヤリハット報告書」については片桐教授の記事その1その2その3を参考にしてください。)

 「ヒヤリハット」とは何か。言ってしまえば被害のほとんどない小さな事故のことです。でも「ヒヤリハット」がたくさん起これば一部は「軽微な事故」となり、さらにその一部は「重大な事故」になります。ですから「ヒヤリハット」を徹底的に防ぐことによって致命的な「重大な事故」を防ごうとするのです。

 この考え方を流用すれば、「いじめの無い学校」を作ろうとしたら「ヒヤリハット」に相当する被害のほとんどない小さな「いじめ」を報告させてその発生を抑制することが必要だ、ということになります。

 さて、皆さん想像できるでしょうか。「さあ皆さん、今週自分がやったちょっとしたいじめについて報告書を書きましょう!」いや、これはさすがに...。

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2021.06.04

「正しい知識」はめざせるのか(江頭教授)

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 今回の記事は「『事故の無い世界』は作れるのか」と「『事故の無い世界』は目指せるのか」を受けてのものです。両記事の結論として

「事故の無い世界」を無理矢理に作ろうとすれば「進歩も発展もない世界」にならざるを得ない

むしろ

「事故」を在ってはならないものと見るのではなく、実際に存在するものとして一旦は受け入れることが「事故の無い世界」を「めざす」正しい方法

なのだ、ということでした。

 今回は「正しい知識」がめざすべき目標なので、上記にならって言い換えれば

「間違い」を在ってはならないものと見るのではなく、実際に存在するものとして一旦は受け入れることが「正しい知識」を「めざす」正しい方法

なのだ、となります。こういう「正しい知識」のめざし方、皆さん覚えがありませんか?

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2021.06.03

研究室の床のワックスがけ(江頭教授)

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 小学校や中学校くらいの生徒さんたちは自分の教室の掃除をしているのではないでしょうか。高校生の皆さんもやっているのでしょうか。自分がどうだったのか、あまりにも古いことで思い出せません。とはいえ、一般的なビルのオフィスで社員がみんなで掃除、さあ机を動かしましょう、という姿は想像しがたいと思います。そういう場所では清掃は専門の業者に依頼しているのではないでしょうか。

 本学、東京工科大学もそれは同じです。床、廊下の掃除からゴミの回収、庭の手入れまで、専門の方々が担当してくれいていて、学内は清潔に保たれています。

 とはいえ、例外もあります。(いや「清潔」の例外じゃありません、業者の方が担当するかどうかの例外です。)研究室の中は一般の清掃業者の方には依頼できない場所です。何しろ、研究室の中には危険な薬品や高価な測定装置がゴロゴロしていて、その部屋を使っていない人にはどこをどう掃除して良いのか分からないのが普通でしょう。

 と、いうわけで研究室の掃除は研究室を使う人間、つまり我々教員と学生諸君、ということになるのです。では、どのくらい清潔度が保たれるのか。これは研究室によってレベルはバラバラだと思います。まあ、使用する装置や実験の形態など、もともと研究室の環境はバラバラですからね(ということにしておきましょう。)

 とはいえ、例外もあります。こんどは「研究室の掃除は業者の方が担当しない」ということの例外。それが年に一度のワックスがけです。

 私達が自分でワックスがけをするのはさすがに難しいので、このときばかりは専門家のお世話に。外部の人が研究室で作業をする前提で部屋の片付けをします。椅子やキャスターのついた作業台などが部屋の外の廊下に移動させて、なるべく作業のじゃまにならないように。

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2021.06.02

「地域連携課題」の発表会が行われました(江頭教授)

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 今週の月曜日(2021年5月31日)2021年度、第一期の「地域連携課題」の学科内発表会が行われました。

 「地域連携課題」という言葉、聞いたことがない、という方も多いと思いますが、本学の授業の名称です。本学科では3年生前期の授業。つまりクォーター制(前期を1期、2期の2つに分ける制度)で実施されるコーオプ実習の際、大学に残っている学生に向けて行われている授業です。シラバスには授業の内容は、「学生が地域の関係者と連携しながら地域・社会的な課題等に取り組む」ものとあります。

 本学部は八王子キャンパスにありますから、この場合の「地域」は具体的には八王子市のことです。八王子市の「担当者等を講師に招いて地域が抱える各種の課題を学んだ後」に、「学生が自ら主体的に地域から課題を選定」し、その解決方法を提案する、それが地域連携課題の授業内容です。この授業はグループワークを基本とし、いろいろな施設や企業を訪れて課題の解決方法を調査・分析、結果を比較検討することで効果的で具体的な提案を目指します。

 実はこの「地域連携課題」、昨年度はコロナウイルス問題のためグループワークができず発表会を行うことができませんでした。今年度も緊急事態宣言が出される状態ですが、なんとかオンラインでも発表会を開くことができました。

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2021.06.01

「事故の無い世界」はめざせるのか(江頭教授)

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 本学の1年生向けの授業「フレッシャーズゼミ」は少人数制の授業。10名程度の学生さんが先生と一緒にグループワークを中心とした課題に取り組むものですが、そのなかの安全教育の一環として「ヒヤリハット報告書」の作成が課題となっています。授業を前にこの課題を準備しながらふと考えました。はたして「事故の無い世界」をめざすことはできるのでしょうか。

 えっ、前回の記事と同じだって?いえいえ、よく見てください。前回のタイトルは「『事故の無い世界』は作れるのか」だったでしょう。今回のは「めざせるのか」になっています。

 「作る」と「めざす」じゃ同じだと言われるかも知れません。でも全然違うと私は思います。その良い例がこの記事の枕に置いた「ヒヤリハット報告書」です。

 「ヒヤリハット報告書」についてはこのブログの片桐教授による記事(その1その2その3)が参考になるでしょう。

 「ヒヤリハット」とは重大な事故はおろか、軽微な事故とも言えないようなちょっとしたトラブルのことです。「ヒヤリハット」は「軽微な事故」のタネであり「軽微な事故」は「重大な事故」に成長する可能性がある。だから「ヒヤリハット」の情報を収集し、その原因を潰してゆけば「重大な事故」を未然に防ぐことができる。それが「ヒヤリハット報告書」の意義です。

 ちょっと待ってください。「ヒヤリハット」は「軽微な事故」にもならないほどだ、とはいえやはり事故の一種なのです。会社や大学は「ヒヤリハット報告書」を提出した人間には詳しい調査を行って厳しい罰を与えなくてはならないのでは?

 Bakuhatsu

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