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続・日本の温室効果ガスの排出量ーこのまま減ってゆくと2030年には?ー(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 昨日の記事では日本の温室効果ガスの2019年度の排出量について紹介しました。その中で2019年度の排出量は2018年の2.9%減であり、

2018年度版では前年比3.9%減、その前の2017年度2016年度と続いて1.2%減、さらに2.9%減、3.1%減と続いて、直近のピークである2013年からとうとう6年連続の減少となりました

と述べました。6年間この傾向が続いているのだから、このまま減ってゆけばどうなるのか。今回はその計算結果を紹介しようと思います。

 横軸に年度を、縦軸に2019年度までの排出量を2013年度を100として表した相対値をプロットしたのが以下の図です。この6年分のデータから近似曲線を作りました。直線近似、というか一次関数で近似しても良かったのですが、毎年「同じ比率で減少する」と考えて指数関数で近似したのがオレンジの線。未来に延長すると、たとえば2030年度では2013年度の100から32.3%減少することが分かります。

 何で2030年か、ですか?これは日本の温室効果ガスの排出量削減目標が2013年度比で46%減に改訂された、という発表を意識してのことです。今のままの削減を続けるだけでは2030年の削減は約32%で、新たな目標を達成するためにはよりアグレッシブな削減の手段が必要なのです。

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 この6年間と同じペースで削減、というのはこの6年と同じことを続ければよい、ということではありません。無駄を削るといっても限界というものがあるでしょうから、どこかのタイミングで続けることが無理になる。だから新しいことを常に見つけ出してゆかねばならない。そんな作業を続けた先の32.3%なのですが、これをさらに加速しなければ46%に行きつくことはできないのです。この46%という目標がいかに「野心的」なものであるか、が伺える計算結果です。

 では今のペースで46%減が達成されるのはいつになるのでしょうか。この近似曲線を延長すると2040年度であることが分かります。(日本も削減目標を発表する際に達成年度を少し後ろ倒しにしておけばよかったのではないでしょうか。そういう国もあるようですし…。)

江頭 靖幸

 

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