世界のエネルギー起源のCO2排出量の動向 ―コロナ禍の影響―(江頭教授)
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新型コロナウイルス感染症の影響については本当にいろいろなところで語られています。そんな中でも多くの人の興味を引くのが温暖化への影響ではないでしょうか。多くの国でロックダウンが実施されたこともあり人間の活動は劇的に押さえ込まれた状態になっています。温暖化の主な原因は人間活動に由来する温室効果ガスの大気への放出、なかでも化石燃料の利用による二酸化炭素の排出なのですからコロナウイルスパンデミックによって二酸化炭素の排出量は減少するはず。あわよくば「温暖化の脅威がコロナウイルスパンデミックによって解消する」ことを期待するのでは。
さて、実際のところどうなのでしょうか。正式なデータが出そろうにはまだ時間がかかるのですが、いくつかの評価がすでに発表されています。以下の図は国際エネルギー機関、IEAのレポート「Global Energy Review 2021」(こちらからダウンロードできます)からの引用です。
2020年の二酸化炭素排出量は前年に比べて5.8%の減少であると見積もられています。そして2021年にはおよそ5%リバウンドする。2020年以前に完全に戻るわけではありませんがほとんど同じレベルに戻ってしまうと予測されているのです。
5.8%、実際の量にして2ギガトンの削減というのはものすごい量なのですが、それでも比率としてみれば大した量ではない。そのうえすぐに元の水準にもどってしまうのです。そして何より、このグラフが示しているのは「排出量」であって大気中での「存在量」ではない。5.8%の減少というのは変化率の変化率なのです。大気中の二酸化炭素の存在量は増え続けていて、その「増え方が減った」ということに過ぎません。
世界中でこれだけ活動抑制が行われても温暖化問題への影響はさしたるものではない。ロックダウンはある意味で究極の「節約生活」の強要なのですが、それだけでは温室効果ガスの削減に大した効果をあげることはできないのです。温暖化問題の解決には「がまんの省エネ」的な方法では力不足であり社会の産業構造の変革とそれを成し遂げる技術が不可欠なのですね。
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