LCAと人間の労働(江頭教授)
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LCA(Life Cycle Assessment)とはある製品やサービスが消費する資源や排出する廃棄物の量をその製品等が作られてから廃棄されるまでの全工程(Life Cylce)に渡って評価することで、このブログでもこちらの記事やこちらの記事で紹介しています。
ではこのLCAでの評価には「人間の労働」というものは入っているのでしょうか?たとえば大学のLCAを考える事にしましょう。大学のサービス(?)には建物や実験施設などもありますが、やっぱり中心となるのは教員の存在です。(ですよね?)大学のLCAで例えば温室効果ガスの排出量を評価するなら、教職員各自の二酸化炭素排出量を加算する必要があるのでしょうか。
具体的には、日本は人口1人あたり年間8.5t=8500kg の二酸化炭素を排出しています。ですから1日8時間働くとして8500/365.25×(8/24)=7.75kg の二酸化炭素がLCAの評価に加算されるべきなのか。
答えは、加算されない、です。
LCAは「その製品またはサービスが存在することで世界にどのぐらいの影響があるのか」を評価しているわけですが、これは「その背品またはサービスが存在する世界と存在しない世界の差」を評価しているとも表現できるのです。
東京工科大学を例にすると、現実は「東京工科大学が作られた世界」ですが、仮に「東京工科大学が作られなかった世界」が在ったとしましょう。東京工科大学八王子キャンパスは存在しないはずで、それに付随する電力消費や水利用もないし、自家発電設備や下水処理施設もないはずです。同様に教員、例えば私も存在しない…、ってことはないですよね。(ですよね?)
もちろん、東京工科大学教授、という肩書きではないはずです。でも私の両親は別に東京工科大学の教授にするために私を生んだわけではない(ないよね?)のですから「東京工科大学が作られなかった世界」にも私は存在して、年間8.5tの二酸化炭素を排出しているでしょう。ですから、LCAによる温室効果ガスの排出量評価に私(教職員)由来の二酸化炭素は含まれないのです。
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