オキシドールでどのくらいの酸素が作れるのか(江頭教授)
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本学の1年生向けの授業「フレッシャーズゼミ」でオキシドールを分解して酸素を発生させる実験をやっているグループがあることはこちらの記事で紹介しました。今回はこの方法でどのくらいの酸素が得られるのか考えてみましょう。酸素を保存する方法としてボンベと比べてみたいと思います。
まずはマツモトキヨシのサイトでオキシドールについて調べてみました。500mLのオキシドールが税込み404円。これは前回使用した製品です。前回通り、
オキシドールについて調べると「過酸化水素(H2O2)を2.5~3.5 w/v%を含有します。」との記述が。アバウトだなー。中をとって3w/v%とすると10mLのオキシドールには0.3gのH2O2 が入っていることになります。分子量 34で割って8.8×10-3mol。2分子のH2O2 から1分子のO2 が生じるので4.4×10-3molの酸素ガスが発生します。0℃1気圧なら22.4Lを掛けて98.56mL。約100mLのガスが発生することが分かります。
となりますから、この一瓶で体積で 100 mL の50倍、約 5 L の酸素を発生させることができることになります。物質量としては 0.22 mol、質量としては約 7 g になります。
さて、これを酸素ボンベと比べてみましょう。ガスボンベにはいろいろな種類がありますが典型的なのは大型のいわゆる 7 m3 のボンベ。これは本当にサイズが 7 m3 というわけではありません。実際のサイズは 47 L、これに高圧(約150気圧)でガスを詰めると 7 m3 くらい入るのです。
酸素ガスの入れ物として考えて比べてみましょう。オキシドールでは 500 mL から 5 L の酸素が発生するので、10倍の体積となります。気圧換算なら10気圧相当。ボンベの150気圧の約15分の1でしかありません。体積当たりではかなり劣るのですね。
重さ基準ならどうでしょうか。47 L のボンベの重さは約50 kg。 7 m3 の酸素を保存できるので 1kg 当たりで約 140 L の酸素を保存しています。オキシドールは 500 mL で 5 L なので 1kg 当たりで 10L。重さ基準では 14分の1になります。偶然ですが重さ基準でも体積基準と同じくらいの比率になります。
最後にボンベ1本分の酸素をオキシドールで得ようとしたらいくらになるのでしょうか。 7 m3 の酸素を作るには 500 mL のオキシドールが 1400本 必要になります。約56万円。重さ基準に合わせて 14分の1にすると約4万円。ボンベの値段には幅がありますがさすがにこんなに高いことはありません。金額ベースだとこの方法は桁違いに不利なのですね。
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