鍋の「効率」はどのくらい(江頭教授)
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エアコンの効率とかならわかるけど「鍋」の効率って何?と思った方もいるかも。これは私が以前授業で行っていたデモ実験のお話しです。
教室に鍋とカセットコンロを持ち込んで、実際にお湯を沸かしてみせる訳ですが、それだけでは意味が無いですよね。お湯を沸かす前後でカセットコンロのカセットの重さを量ってガスの消費量を計る、というのがこのデモのポイントです。カセットに入っているのはブタンガス。その完全燃焼を仮定すればその燃焼熱を求める事ができる。それに対して鍋のお湯を沸かすために必要な熱量はどのくらいか。沸騰させなければ水の比熱と室温と水の沸点(100℃)との差、そして水の量から計算することができます。
授業の本来の目的は、このような方法で「お湯」を製造(?)するとき、どのくらいのコストがかかるか、を計算することです。実際計算すると水道水のコストやカセットコンロ、鍋の減価償却などを抑えてカセットの値段がダントツ。使った分だけの比率で計算しても、この燃料の費用が圧倒的なのです。これを受けてコストダウンをするにはどこに注目するべきかを明らかにすることが肝心ですよね、というお話しをします。
さて、実際に普通サイズの鍋で1Lのお湯を沸かしたとき、この効率は40%程度になりました。
より大きな鍋を持ってきて、今度は4Lのお湯を沸かしてみました。水が増えた分時間もかかるのですが、それでも4倍にはなりません。消費されるガスの量もやはり4倍以下、約3倍にしかなりません。4倍の水を3倍の燃料で加熱できるわけですから効率は4/3倍に、つまり50%とちょっとに向上するのです。
これの授業で教えたいことの一つ。サイズが変わったとき、それに比例して現象が変化すれば効率は一定になるはずですが、実際にはそうでもない。一般にサイズが大きい方が効率が良くなる。だから大量生産が有利なのですね。
さて、タイトルの鍋の効率ですが、お湯を沸かす、という目的なら40~50%程度。鍋が大きいほど有利、という結果になりました。
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