指数とpH(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
指数って何だろう?そう思って調べると「不快指数」や「知能指数」といった何かの性質の程度を数字で表したものだ、という説明が見つかります。でも指数の用例はこれだけではありません。例えば「指数関数」で使われている指数という用語は何かの程度を表すものではありませんよね。
指数にはもう一つ、102(10の二乗)の2、103(10の三乗)の3といったべき乗を表す数字、という意味があり、これを冪指数といって区別することもあるそうです。先ほどの指数関数は10やeなど、きまった数に対して与えられた数字を冪指数としたときの値を対応させる関数ですからこちらの意味での指数なわけです。
などと考えていてふと気がついたのですがpH、つまり水素イオン指数の「指数」はどちらの意味の指数でも通じるのでは。いや、ちょっとまって。水素イオン指数の定義には「マイナス」がついているな。中性は水素イオン指数では7だけど水素イオン冪指数だと-7とすべきなのでしょうか。
pHについてもう一つ疑問が。pHのpって何の略なのでしょうか?
さきほどの冪指数は英語では exponent ですが、102 を読み下す時は "10 to the power of 2" などと言いますから power の pなのでしょうか。水素イオン指数だと指数はindexですが、強度という意味で potential の p というのもありそうです。
少し調べてみるとpHの概念を提唱したセーレン・セーレンセンの論文では(pHではなくPHと表記されていたそうですが)、そのPが何の略かは明言されていないそうです。ということでpHのpが何なのか、いまでは分からない。pはpだとしか言えない、ということですね。
というか…。水素イオン指数にしろ、potential や power にしても、pHが「小さい方が水素イオン濃度が大きい」というのがそもそも変なのだと思います。不快指数が低い方が不快だとか、知能指数が低いほど頭が良い(いや、哲学的に深いことを言いたいのではありませんよ)とかだったら、普通におかしいのでは。そう考えると pH は pH だ、それ以上でもそれ以下でもない、という方が潔いのかも知れませんね。
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