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体温計と音響カプラ(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 先日、スマホに情報を送ることができる体重計に買い換えた、という記事を書きました。その体重計用のスマホのアプリでは他の機器とも連携できるとか。その対象製品のリストに「体温計」が入っていました。おや珍しい。ついでにこれも買ってみよう。

 さて、新しく購入した体温計ですが、スマホとの連携に bluetooth を使うのではないのですね。いや、 Wi-Fi も使いません。でも体温計をスマホの上に置くとちゃんと体温が転送されます。実はこの体温計、スマホのマイクに向かって音で情報を伝えるのだそうです(通信時の音が聞こえることもあるそうですが、私には測定終了を伝える「ピッピッ」という音しか聞こえませんでした。年寄りには聞こえない波長なのでしょうか。)

 確かにデータはせいぜい3桁の数字が1個。新たにbluetoothやWi-Fiのチップを載せずに、従来から搭載されていたであろう「ピッピッ」という音をならすための電子ブザーを使えば追加のハード無しでデータを転送できる。それに電力消費も少なそう。これは良いアイデアだ。凄いことを考える人がいるなあ。そう思ったのですが、よく考えてみると音でデータを送る、という技術は昔からあったのでは。

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「音響カプラ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年9月19日 (日) 20:22、URL: https://ja.wikipedia.org

 

 

 写真で盛大にネタバレしている? いえいえ、知らない人は写真をみても何だかわからないのではないでしょうか。

 もったいぶらずに説明すると、この写真の装置は電話機の受話器とセットで使うものです。受話器のスピーカーから出る音をマイクで集音し、スピーカーを使って受話器のマイクに音を送るのです。

 えっ、スマホのサイズに合わないって。受話器の形も色々あるだろうって?いえいえ、これはスマホはおろか、携帯電話さえない時代。電話と言えば黒電話一択だった時代の製品なのです。当時、情報をリアルタイムで送ることのできるインフラと言えば電話しかありませんでした。(一応、電報はありましたが。)ですからデータを一旦は音に変えて、その音を電話回線で送信、再びデータにもどす、というのがコンピューター同士の通信方法でした。おっと失礼、コンピューター同士というのは不適切ですね。計算機センターと端末というべきでした。要するに、そんな時代のデータ通信の方法なのです。

 私が卒論生のとき、部屋にこのカプラーがあったことをよく覚えています。一緒の部屋にいた同級生が「ピーヒョロロロロ」となんとも独特の音を響かせながら計算機センターにプログラムを送信していたものです。

 時代は流れ今では音声がデータとしてやり取りされる時代になりました。でもこの音響カプラのような古いアイデアが、体温計という全く異なったところで採用されたりする。技術の世界は面白いものですね。

江頭 靖幸

 

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