リトマス試験紙とpH試験紙(江頭教授)
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酸と塩基、いやアルカリについて勉強したのは小学生の頃だったと思います。「リトマス試験紙」をつかって酸性は赤、アルカリ性は青、などなど。このリトマス試験紙というのが「色が変わる」のはもちろん、「赤と青でワンセット」とか、いかにも子供の好奇心をそそるような設定ですよね。(設定言うな!)「青いリトマス試験紙を酸に漬けて赤くすれば赤いリトマス試験紙の代わりになるのか?」などと考えたことを覚えています。
酸性とアルカリ性と中性、小学生のころは単純で良かった。でも中学、高校と進むと酸性にもアルカリ性、いや塩基性にも程度があるよ、という話がでてきた。それが pH です。酸性とアルカリ性は「酸の素を含む」と「アルカリの素を含む」というよりも、「酸の素が多い」酸性と「酸の素が少ない」塩基性、と理解するべきだ。そして「酸の素」の正体は…酸素じゃないんですよね。
結局「酸性」の指標は水素イオン濃度であり、その程度を表す数値としてpH、水素イオン指数が導入されているわけです。では、この水素イオン濃度は具体的にどのように測定するのか。その一つがリトマス試験紙の発展型であるpH試験紙です。
リトマス試験紙にもどって、そもそも「リトマス」って何なのでしょうか?人の名前か、などと思ってしまいますが、実はこれ、リトマス苔という地衣類の一種の名前なのだそうです。このリトマス苔から染料がとれて、その染料が酸性では赤に、アルカリ性で青に色が変わるのだと言います。
同様に酸性や塩基性の度合いによって色が変わる化学物質はいろいろあります。その中で使いやすいものが「pH指示薬」として利用されている。有名どころの「フェノールフタレイン」などは中高の化学実験でも利用するでしょう。そのpH指示薬をリトマスよろしく紙にしみ込ませてつくった試験紙、それがpH試験紙となるわけです。
でもリトマス試験紙とpH試験紙には大きな違いがあります。pH試験紙は1種類しかない。いえ、pH試験紙と呼ばれるものにはたくさんの種類があるのですが、リトマス試験紙のように赤青2種類でペア、となってはいないのです。
pH試験紙は変色した試験紙を色見本と見比べることで、具体的なpHの数値(とはいってもそんなに精度はないのですが)を求めることが使用の目的です。一方、リトマス試験紙は「酸性かアルカリ性か」を判定することが目的ですから、赤青2種類でどちらの色が変わるかで判定する。色見本も不要ですから、この方式は理にかなっていると言えるでしょう。
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