pH試験紙とpHメーター(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
以前の記事で、リトマス試験紙とpH試験紙の違いを説明しました。リトマス試験紙には色見本が要らない。サンプルに漬けた部分と、まだ乾いている部分との色を比較すれば良いから。つまりリトマス試験紙そのものが色見本の役割果たしているからです。別の見方をすると色見本の見本の数だけ試験紙が必要になるとも言えます。リトマス試験紙はpH=7を挟んで酸性とアルカリ性の二つ状態のどちらに入るかを判別するもの。色見本の数は2種類なので、赤と青二つペアで用いることになっています。
ではもっと細かくpHを計りたいならどうするか。リトマス試験紙の方法を応用するなら14枚組のリトマス試験紙を用意すれば良いのでは。14枚に一斉にサンプルをつける。変色無しと変色有りの境目になったところがpHだ、ということになるでしょう。おっと、pHを1ずつ計るのなら「1以下」のリトマス試験紙から「14以上」のリトマス試験紙までの色の15枚セットが必要。もっとデラックス版では29色とか43色セットとか。これこそ子供心に訴える設定でよく売れるのでは。
一方で普通のpH試験紙は色見本との比較が必要となります。昔はカラーの印刷物の校正には「色校正」というものがあったそうで(いや、今でもあるか)、印刷で忠実に色を再現するには手間暇がかかるものでした。特にpH試験紙の色見本はメーカーが測定時の精度を保証して提供するのですからそれなりの出来のものである必要があります。もっとも例えそうだとしても15色セットとかを準備するのに比べたら楽なものですね。
さて、pHの測定方法は何もこの指示薬や試験紙をもちいた方法だけではありません。
良く知られているのは pHメーターによる測定です。
「pHメーター」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年9月20日 (月) 06:03、URL: https://ja.wikipedia.org
おっと、「pHを計るにはpHメーターを使う」というのではほとんど情報がありませんね。一般にpHメーターとして市販されている機器はガラス電極式のものです。
大まかな構造を説明すると
容積のサンプルの中に一対の電極が入っているが、一つの電極はガラス管の中に封じられている。ただしそのガラス管は部分的に非常に薄くなっており、そのガラス膜の部分は水素イオンだけが通過できる。
という構造です。つまり水素イオンだけが透過することができる「半透膜」のような機能をもっているのです。
さて、ガラス管の内部と外部(これがサンプルです)で水素イオンの濃度が違っていたらどうなるか。半透膜なら濃度を均一にしようと水分子が膜を透過するのですが、このガラス膜では水素イオンが透過します。水素イオンには電荷があるので透過するに従って膜の両側に電位差が生じます。やがて水素イオンはこの電位差に逆らって移動できなくなる。このときの電位差を測定すれば水素イオンの濃度が、さらにはpHが測定できる、という仕組みです。
pHメーターは試験紙に比べてずっと高い精度でpHの測定が可能です。測定できる範囲も自由度が高い。とはいえ試験紙に比べればサイズも大きく値も張るので一長一短。やはりpH測定には適材適所で、ということになりますね。
「解説」カテゴリの記事
- 災害発生時の通信手段について(片桐教授)(2019.03.15)
- 湿度3%の世界(江頭教授)(2019.03.08)
- 歯ブラシ以前の歯磨き(江頭教授)(2019.03.01)
- 環境科学の憂鬱(江頭教授)(2019.02.26)
- 購買力平価のはなし(江頭教授)(2019.02.19)