「People」「Prosperity」「Planet」あなたのどこに属していますか?(江頭教授)
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サステイナブル工学や、その目標であるサステイナブル社会を説明するために下図のような三つPのバランスを表現した図が用いられることがあります。三つのPとは「People」「Prosperity」「Planet」のことです。( SDGs にまで視点を広げると「Peace」「Partnership」をいれた五つのPになりますね。)すべての人々は「People」「Prosperity」「Planet」という三つの価値のために働いていることを意識せよ、ということなのですが、今回は少し変わった質問をしてみましょう。あなた自身は三つのPのどこに属しているでしょうか?
まずは「People」。このブログを読んでいる以上、読者のあなたは確実に「People」の一員です。そのうち「いえ、私はAIです」なんて読者が現れる可能性はありますが、2021年9月の時点では大丈夫かと。
では「Planet」はどうでしょうか。人間だって自然の一部なんだ、生きているんだ、友達なんだ、という視点にたてば人間も「Planet」の一部かも。でもわざわざ「People」と対峙させられている項目なのですから人間は属さない、と解釈するべきではないでしょうか。
最後が「Prosperity」。これが一番判断がつきにくいのでは。説明には「社会システム」とありますから(ロビンソン・クルーソーみたいな人は別として)全ての人間は「Prosperity」に属することになるのでしょうか。でも、それならわざわざ「People」が置かれている意味がわかりません。
図をよく見ると「Prosperity」は産業・経済のシステム、「経済・産業・技術に関する」社会システムだと書いてあります。なら、こう考えるとわかるでしょうか。「Prosperity」が社会システム、つまり社会であることを意識すると「People」は人間システムというより個人といった方が相応しい。つまり「People」と「Prosperity」の調和という言い方は、個人と社会の良好な関係、と言い換えられるでしょう。
さて、最初の質問に戻りましょう。「Prosperity」が社会なら全ての人間は「Prosperity」に属しています。そして、一人の人間の中に、個人として自己実現と社会に一員としての役割という二つの側面が同時に存在しているのです。この人間存在の両面性という問題は人の歴史と同じくらい古くから存在する普遍的な課題です。現代のサステイナブル社会においては、そこに新たに「Planet」という価値が容赦なく介入してくることになる。この図は現代はそう言う時代だ、という表現でもあるのです。
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