pHとpKa(片桐教授)
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このブログの9月13日の江頭先生の記事で、pHの話題が出ました。今回はこのpHに類するpKaの説明で、このpHやpKaがエネルギーに比例する尺度であることを説明します。
pHに類する概念として、かなり前のこのブログの「有機化学Ⅰ」の講義解説でpKaという酸性度を表す指数についてお話ししました。(http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2015/11/-1pka-035c.html)。
さて、pKaの定義を以下に示します。このようにしてみると、このpKaは[A− ]という化学種のエネルギー的安定性(ポテンシャルエネルギー)を表現しています。このpKaはいろいろな操作で、そのH-Aという化学種のプロトン放出能を[A− ]という化学種のエネルギー的安定性として表現しているわけです。
つまり、平衡定数をエネルギーに換算するためにlogを使い、ポテンシャルエネルギーは値の小さい方が安定、大きい方が不安定だから、マイナスの符合を付けるわけですね。つまり、pKaもpHもそのポテンシャルエネルギーと比例する尺度です。
これだけでは何だか良く分かりません。もう少し説明しますね。
まず、平衡とエネルギーの関係です。これはしばしば「6 KJ / mol 則」で理解できます。
2つのポテンシャル状態があるとき、その2つの状態のポテンシャルエネルギー差が6 kJ/molの時に、エネルギー的に不安定な方と安定な方の比が1:10になります。そして、安定な方に100分子あり、不安定な方に1分子の場合は、その2つの状態のあいだに12 kJ/molのエネルギー差があるということになります。もちろん、1:1000ならば18 KJ/molになります。これを憶えておくと、大まかに平衡からエネルギー差を、エネルギー差から平衡比を見積もることができます。このような話しは高校までの化学では教えてくれません。
そして、この話しで高校の化学と大学の化学がつながったと思います。
大学の化学ではいろいろな事象を「定量化」します。分子の形や置換基の反応への影響までこのような換算を用いてエネルギーの次元にして「定量的に比較」できるようにします。高校までの化学が定性的な化学なら、大学の化学は定量的な化学です。
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