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2021年10月

2021.10.29

「360」とか「365」とか「386」とか「486」とか。あと「387」も。(江頭教授)

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 最近円安で物価高が心配だ、などという話もありますがせいぜい1ドル114円程度。私の世代は1ドルが360円の固定相場制の時代を知っていますからあまり驚かない、というのは違うかな。なにはともあれ1973年までは1ドルは360円でした。戦後の混乱期に「円とは丸のこと、丸だから360°」という冗談の様な理由で決められたという話もありますが、さて本当なのでしょうか。

 この「360」という数字は360°を想起させますから、いろいろなものの名前に使われています。先の記事で触れた Microsoft社ですが、同社が作っているゲーム機、Xboxにも「Xbox360」というタイプがありました。360回もリニューアルをくり返した、訳ではなくて「360°死角なし!」という意気込みでしょう。

「Xbox360」に5を足せば「Xbox365」になって、一年365日遊んでばっかり、となってこれはイメージが悪いかも。でも「Office 365」改め「Microsoft 365」は一年365働いてばっかり、という意味になってこちらの方は少し怖いイメージですね。

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2021.10.28

デマを拡散しないように- 32  オキシジェンパルスメーター(片桐教授)

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 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、引用文献などを読んで自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

 血中酸素飽和度測定装置は、肺機能を手軽にモニターする方法として2020年末から注目されています。健康器具の通販や、新聞の通販広告などを見ると数千円で売られています。医療機関で使われている「ほんまもん」は数万円はするようです。私は近所の大型家電販売店の広告で見つけて指で測定するタイプを1台購入しました。私の購入した装置の値段は2,000円程度の安ものです。

 動作原理は、血液の「赤色」の測定です。ケガをして出血するとわかりますが酸素に満ちた動脈の血液は赤く、静脈血はどす黒い色をしています。これは酸素を受けとったヘモグロビンは赤い光を透過します。酸素を放出したヘモグロビンは赤い色の光をとともにいろいろな波長の光を吸収します。ですから、赤色の光の透過度と赤外線領域の透過度の比を取ると、血中の酸素の飽和度を見積れます。よりわかり易い解説がコニカミノルタさんのHPにあります(https://www.konicaminolta.jp/healthcare/knowledge/details/principle.html)。

実際に使ってみるとある程度の再現性で血中酸素飽和度を示します。もちろんその絶対値は信用できないでしょう。2回目のワクチン接種後の少し息苦しさを感じた時は少し低めの数値を示していたので、「息苦しさの半定量的な指標」にはなるかもしれません。その程度です。でも、何かの体調不良を訴えるときの客観的指標として使えるかもしれないと思い、毎朝、体温、血圧、脈拍、体重とともに測定し記録しています。心配症のおっさんのおもちゃになっています。

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2021.10.27

[間違い探し] Office386がいつの間にかMicrosoft386になっていた (江頭教授)

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 パソコンを使って文章を作成するときに使うワープロソフト、データの整理やグラフ作成に使う表計算ソフト、そして学会発表や授業で使うスライドを作って投影するプレゼンテーションソフト、これらをまとめたものがオフィススイート(スイートは甘いsweetじゃなくてsuiteです)。仕事でPCを使うとしたら必ず必要になるソフトウェアです。1990年代の前半辺りから登場した Microsoft 社の Word、Excel、PowerPoint、それらを統合した Microsoft Office は事実上の標準規格(デファクトスタンダード)となり、現在でも広く用いられています。

 さて、本学では以前から学生諸君にノートPCを所有してもらうことを大学教育の前提としていたのですが、コロナ以降の現在ではPCを使わない大学教育というのは考えにくい。同様に大学でこの Microsoft Office を使わないというのも考えにくいのですが、このソフトは標準的に用いられていながら公共物ではない。 Microsoft社の所有物ですから同社からのライセンスを取得する必要があります。以前は個々人がパッケージ版の Microsoft Office を購入する、というスタイルを取っていました。これでは余りにも非効率だ、ということで大学で一括してライセンスを取得する、というスタイルが一般的になりました。本学でもMicrosoft社と包括的なライセンス契約を結んでおり教員・学生はそれぞれのPCで Microsoft Office を利用することができる様になっています。

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2021.10.26

デマを拡散しないように- 31  PCR検査の虚々実々(片桐教授)

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 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、引用文献などを読んで自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

 SNSの中には、「PCR検査が新型コロナを生む」という因果関係の崩壊した論を述べている方もいます。新型コロナのPCR検査は、検体内のウイルスの遺伝子(RNA)をDNA化して、それをPCR法で複製・増幅し、その中から新型コロナの遺伝子に特有のものにより蛍光を出すプローブを使って、蛍光などによりウイルスのRNAの存在を検知する検査です。

 「PCR検査が新型コロナを生む」という方は、そのプロセスで新型コロナウイルスが製造されているとでもいうのでしょうか。PCR法の開発者のマリスさんもびっくりです。あるいはシュレディンガーの猫のようにサンプルはウイルスの存在する状態と存在しない状態の重ね合わせだというのでしょうか。コペンハーゲン解釈も真っ青です。

 それでも、PCR検査には感染しているのに陰性になる偽陰性も、感染していないのに陽性になる偽陽性もありえます。偽陰性は、新型コロナウイルスに感染していても、そのウイルスが鼻汁や唾液の中に分泌されていない場合に発生します。あるいはサンプリングの不備でも発生します。素人のへたくそなサンプリングではウイルスは見つからないかもしれません。

 一方、偽陽性は、感染していなくてもそのウイルスの断片がそのようなサンプルに含まれてしまっている場合に起こります。PCR法による遺伝子の増幅は指数的に増やせるので、わずか1つの感染能力を失ったウイルスの断片でも、運が良ければ(?)検知されます。

 コロナ禍の初期の頃は、検体はどの程度のウイルスを含むのな、感染者はどのくらいのウイルスを鼻汁や唾液に分泌するのかの情報に乏しかったため、偽陽性や偽陰性はしばしばPCR検査の信頼性の問題として取り上げられました。偽陽性について言えば、ヒューマンエラーの無い限り0.03%以下と報告されています [小黒一正「PCR検査体制の拡充と疑陽性の問題」 RIETI独立法人経済産業研究所HP [https://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0611.html]]。したがって、偽陰性で感染者を見逃す恐れはあっても、偽陽性で非感染者を隔離してしまう恐れはあまりありません。

 新型コロナ患者が出始めた2020年の前半の頃、日本では肺炎患者をCTスキャンやレントゲンにより診断し、その「肺炎」の治療を行なうことで、新型コロナ患者の命を救う戦略でした。新型コロナ感染症で致命的な症状は肺炎と血栓です。肺炎を糸口にして感染者を見つけて、治療する戦略は患者の命を救うということについて合目的的です。しかし、この方法では感染者を認知し、医療関係者を適切に保護できません。医療関係者のコロナ感染を招きます。また,無症状感染者を見つけ出すことはできません。それをPCR法で補うことになります。

 2021年春頃から街中でプレハブの「PCR検査場」をみかけるようになりました。八王子駅の方にもそのようなプレハブがあります。また、ドラッグストアーでPCR検査キットを販売しています。保健所に斡旋してもらわなくても、病院でなくても、個人でPCR検査を受けられるようになってきました。しかし、適切な検体のサンプリングを行なわなければ、偽陰性になります。そのような検査の信頼性についてのリスクを忘れてはいけません。また、業者によっては検査結果を送ってこないなどのトラブルも発生しているようです。

  PCR検査と抗体検査、抗原検査はよく混同されます。その違いを理解しましょう。PCR検査は唾液や鼻汁中のウイルスの遺伝子の存在を調べます。抗体検査は唾液や血液中の抗ウイルス抗体の発生を調べます。ウイルスに感染すると、そのウイルスを無効化しようとして免疫系は「中和抗体」を産生します。抗体検査ではこの抗体を検出します。妊娠検査キットのようにドラッグストアーでも販売している簡易型から、医療機関で行なう検査機器を使用する定性・定量検査まであります。また、ワクチン接種者はウイルスに感染していなくても、抗体検査では陽性になります[ 鈴木忠樹「COVID-19の抗原・抗体検査について」 令和2年度希少感染症診断技術研修会(2020.12.22)資料; https://www.niid.go.jp/niid/images/plan/kisyo/2_suzuki.pdf ]。抗原検査はそのような抗体の反応する抗原が存在するかどうかを、抗体を使って探し出します。感度は抗原の増幅プロセスのない分、PCRよりも劣るようです。

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片桐 利真

 

2021.10.25

秋の健康診断が行われました(江頭教授)

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 春、新学期の学生諸君にはガイダンスをはじめとしていろいろなイベントがありますが、その中には健康診断も。でも本学には秋の健康診断があります。いえ、学生諸君に二回目の健康診断を受けてもらう訳ではありません。秋に行われるのは教職員の健康診断なのです。

 今年も秋の健康診断のシーズンとなり、私も昨年同様に参加してきました。新型コロナウイルス感染症の対策をとった形での実施でこれも昨年と同様です。

 実は私はこの健康診断が結構苦手なのです。なんと大人げない。高校生や大学生の皆さんはそう思うかも知れません。でも皆さんが受けている健康診断と私たち中高年の受けている健康診断には決定的な違いがあります。よく「バリウム」と呼ばれている胃部X線検査がそれ。(この「バリウム」という呼び名もどうなんだか、という話は以前こちらで書きました。我々が飲まされているものの本当の名称は「硫酸バリウム」です。バリウムイオンには毒性があるので、水にとける普通の「バリウム」化合物は毒性があるのです。)

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2021.10.22

復活!八王子キャンパスのお弁当(江頭教授)

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 本学八王子キャンパスを代表する建物の一つ、片柳研究棟は我々応用化学科の拠点でもあります。その3階ロビーでは昼休みにお弁当の販売があって…というのはコロナ禍以前のお話し。もうずっと前の記憶のような。

 キャンパス閉鎖から部分的な開放、対面授業からオンライン授業などコロナの波に我々教員もいいようにもてあそばれていたのですが、このお弁当の販売も同じなのでしょう。でもここ最近の新規感染者数の減少と緊急事態宣言の解除、そしてキャンパスでの対面授業再開と、状況は整っています。そろそろお弁当の販売が始まっているのでは。そう思ってちょっと探してみると昨年同様、厚生棟でのお弁当販売が再開されていました。(やったね!)それも今回は2階ロビーでの販売。ほんの少しですが通いやすくなりました。

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2021.10.21

デマを拡散しないように-30 「新型コロナはない」という主張:オストリッチ症候群(片桐教授)

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 SNSをみていると、「コロナは存在しない」「コロナウイルスの存在証明はまだされていない」という主張をしばしば見かけます。2002年に発生したSARSエピデミックの時は、まだ遺伝子解析技術も未熟であったため、SARSの正体であるウイルスを明らかにするまでに数ヶ月かかりました。しかし、その研究と知見の蓄積のおかげで、今回の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の正体は、わずか2週間で明らかになりました。

 この素早いウイルスの解明は、別の陰謀論を生みました。「こんなに短期間のうちにSARSウイルスの変異株だと明らかにできるのはおかしい。」「このウイルスは生物兵器として研究されてきたものだ」という陰謀論です。この素早い遺伝子解析も、その背景にあったSARSの知見の存在を考えれば、不自然な話しではありません。わざわざ陰謀論を持ち出すべき話しではありません。

 新型コロナを否定する集会が各地でしばしば開催されているようです。新聞報道(読売新聞2021.9.9, 10,社会面)によれば、居酒屋や飲食店の店主のように、新型コロナで店を開けられない方は、店を開ける理由として「コロナは嘘だ」論を採用しているそうです。

 自己承認欲求の強い方も、自分を目立たせるために他者とは異なる発言を好むそうです。あまのじゃくですね。

 このような、「新型コロナはない」と主張する方々の中には、「オストリッチ症候群」で理解できる方もおられます。ダチョウ(オストリッチ)は外敵などの脅威に遭遇すると、穴の中に頭を突っ込んで外敵を直視しないようにする、というものです。現実逃避の心です。でも、実際にダチョウがそんなことをすればすぐに敵の餌食になります。危険な敵は真正面から見据えて対峙しなければなりません。

 

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敵はいない! 

敵は見えないから、

いないんだってば!

 我々に今一番大事なのは、新型コロナという病を認め、真正面からその感染予防に取り組むことです。

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片桐 利真

 

2021.10.20

「2020年の自然エネルギー電力の割合は20%を越えた」のですが(江頭教授)

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 私の担当する大学院の授業では日本のエネルギー需給の状況について説明する回があるのですが、その際の学生さんのレポートに環境エネルギー政策研究所(ISEP : Institute for Sustainable Energy Policies)のレポートが引用されていました[文献1]。ポイントは「2020年の自然エネルギー電力の割合は20%を越えた」という点。今回はこのデータについて少し考えてみたいと思います。

 まず、私はこのデータに別に疑問があるわけではありません。それどころか、この様な形でデータをとりまとめて公表する活動を高く評価したいと思っています。エネルギー問題についての議論に必要なデータは広く公表されるようになっていますが、その内容を理解するのは難しい(というか煩雑)なので、このように判りやすい形でデータを示してくれることは本当にありがたい。現に、私の授業を受けている学生さんもこの活動の恩恵に預かったわけですし。

 さて、ここでの結論「自然エネルギーが20%越え」はとても印象的です。ここまで来ているのか。将来に明るい希望が見えますね。

 とはいえ、私は先の記事「再生可能エネルギーのインパクトはどのくらい?(エネルギー白書2020より)」では「再生可能エネルギーの占める割合はまだ4.0%に過ぎません」と述べています。

 あれ、こっちだと「まだまだ」という感じなのですが…。

 

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2021.10.19

デマを拡散しないように- 29 新型コロナは「ただの風邪」か? ウイルスの細胞選択的な感染(片桐教授)

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 2021年におこなわれた千葉県知事選挙の候補者のうちのひとりの「新型コロナはただの風邪」という主張は知事選の政見放送で繰り返し耳にしました。確かに新型コロナ(COVID-19)は、パンデミックの初期には肺炎を起こす風邪の一種と認識されていました。しかし、この認識は正しいのでしょうか?。「新型コロナはただの風邪」というのは言い過ぎですが、新型コロナは「風邪」の一種とみなせるのでしょうか?。

 ここからの解説は理解し易くするために、厳密さに欠けた「噓も方便」を使います。ご容赦ください。

 風邪はくしゃみ、鼻水、のどの炎症、咳、たん、発熱などの症状を引き起こす病気です。これらの症状を引き起こす上気道炎症の原因はウイルスの感染です。その他には細菌の感染もあります。上気道の粘膜細胞に感染したウイルスをその細胞ごと駆逐するために細胞性免疫(白血球による免疫)は活性酸素で感染してしまった細胞を攻撃します。このとき、免疫細胞の働きを活性化するために、体温を上昇させます。周囲の健康な細胞はその活性酸素の流れ弾に被弾し、傷つき炎症を起こします。熱や炎症などは、ウイルスそのものの作用によるものではなく、ウイルスを排除し撲滅するための細胞性免疫の働きです。問題なのは、その細胞性免疫の作用はその人の体を必要以上に破壊してしまうことです。

 インフルエンザを含めて、風邪を引き起こすウイルスは上気道粘膜細胞に特異的に感染し、そこで炎症をひき起こします。インフルエンザの特異的な感染部位選択性は、上気道粘膜細胞表面のインフルエンザウイルスの取り付けるレセプター(SAα2,6Gal)の存在によります。一方、強毒性(致死率の高い)H5N1鳥インフルエンザは上気道だけではなく、肺にも取りつけます。これは肺にも鳥インフルエンザの取り付けるレセプター(SAα2,3Gal)の存在することによります [新矢恭子,河岡義裕, ウイルス 2006, 56, 85-90.]。このように細胞の持つレセプターの違いにより、ウイルスの感染する臓器や部位は異なります。

 旧来型のコロナウイルス4種も主に上気道粘膜細胞に取りつき風邪を起こすウイルスです。「新型コロナはただの風邪」との主張は、この4種の風邪コロナウイルスからの類推で、コロナウイルスの起こす病気=風邪、と理解し、その外挿から新型コロナウイルスもただの風邪とみなすようです。

 ところが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の取りつくレセプターは全身の血管の内皮細胞に存在します。血管内皮細胞のACE2という、血圧を調製するアンジオテンシンという物質を合成する酵素に新型コロナウイルスは取りつき、細胞内へ感染していきます。血管は全身にくまなく広がっています。ですから、新型コロナはそのウイルスが上気道や肺だけに取りつく「風邪」ではなく、全身性の感染症です。

 このようにウイルスの取りつく部位や細胞の違いにより、その病態も異なります。風邪やインフルエンザをこじらせて肺炎になる場合、呼吸器の粘膜細胞から、肺胞表面に感染し、肺実質側に炎症を起こします。一方、新型コロナ肺炎の場合は肺胞ではなく、その裏側の血管側=肺間質側に炎症を起こします。間質性肺炎です。間質性肺炎は、しばしば肺組織の繊維化を伴います。そのため、回復しにくい肺炎です。重症化すると肺機能を奪うので、その人の寿命とQOLを大きく下げてしまいます。

 新型コロナのいろいろな症状や無症状感染であるにもかかわらず発生する後遺症なども同様に、全身性の感染症であること、血管に取りつくウイルスによる感染症であることで理解されます。

 無症状感染には2種類あると思われます。ひとつはまだ発症していない潜伏期間の場合、これは体内ではまだ免疫が働いておらず、したがって細胞性免疫の攻撃により引き起こされるいろいろな症状はまだ出ていない状態です。この潜伏期間にウイルスは体内でどんどん増殖していいます。インフルエンザでも発症2日前の唾液のウイルス量が一番多く、他人にうつすと言われています。もうひとつは、無(自覚)症状感染状態です。新型コロナ感染症は最初の頃は武漢肺炎と呼ばれていました。その病態は肺炎と認識されています。したがって、肺の血管以外での炎症の発生は新型コロナ肺炎の症状とはみなされませんでした。

 血管の内皮細胞内のウイルスに対する細胞性免疫の攻撃は、血管を痛めます、血管の酸化老化をおこします。これは、高血糖の作る活性酸素による血管の酸化老化病である糖尿病に似た症状を起こさせます。糖尿病の厄介なところは、なかなか自覚症状が現れないことです。そして、倦怠感などの自覚症状の現れた時には、すでに病気はかなり進行していることです。倦怠感以外にも、神経症状(知覚異常)、血栓などの症状を引き起こします。これらの症状は新型コロナの後遺症に似ています。新型コロナウイルスは「伝染性の糖尿病」とまでいうと言い過ぎでしょうか。若い人の命は奪わなくても、そのQOLを大きく下げるおそれがあります。

 以上のように、新型コロナ(COVID-19)はただの風邪とは異なる全身性の感染症です。その本当の怖さを我々はまだ理解できていません。

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片桐 利真

2021.10.18

本日から対面授業が再開します(江頭教授)

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 本日(2021/10/18)から我々工学応用化学科が所属する八王子キャンパスで対面授業が再開となります。授業そのものは新学期の始まり、9月27日からスタートしていました。当初は最初から対面授業を中心に進める予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応として発令された緊急事態宣言に呼応して今月15日までのオンライン授業を中心とした対応が決定された、という経緯があります。(この辺の事情はこちらの記事でも説明しています。)

 ところが、何というか、コロナウイルス感染症の新規感染者数もピークを越え、緊急事態宣言はいつの間にか取りやめに。(正確には9月30日です。)その後も感染者数はどんどん減っています。今回の対面授業の再開は遅すぎた、とまでは言いませんが、機は熟したとはいえるでしょう。

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2021.10.15

書評 りょうしりきがく for babies サンマーク出版、2020 サイエンス・コミュニケーターを目指す人の必読書…かな?(片桐教授)

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 本年度も後期の量子化学の講義が始まりました。毎年、第1回は量子力学の誕生の歴史の解説を行ない、その課題として「前期量子論に最も貢献したのは誰か?」という課題を出します。
 今年の一番人気はやはり「プランク」で62%の受講者に支持されました。次点は「アインシュタイン」の17%、3位は「ボーア」の12%でした。

 さて、この量子化学の第1回をその誕生の歴史から始めるのは、学生さんたちの多くがニュートン力学を引きずっているからです。マクロの世界を記述する「力を基盤とする」ニュートン力学の不都合と克服から「エネルギーを基盤とする」量子論が生まれてきたことを理解してもらい、マクロの世界の物理がミクロの世界に通用しなかったという歴史的事実を理解してもらうことから始めるためです。我々マクロの住人には、生活感覚で力は理解できても、エネルギーを理解することは困難です。生活感覚で量子の世界を理解することは極めて困難です。

 そのような講義をどのようにすすめれば、学生さんにわかってもらえるか、を考え、ネットであれこれ調べている時に、『クリス・フェリ−著「りょうしりきがくfor babies」サンマーク出版、2020年』という絵本の存在を知りました。「大学生に教えることの難しい量子論の幼児向け絵本?」「なんじゃそりゃ?」と興味をひかれました。早速、アマゾンでポチりました。

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2021.10.14

腕時計と手帳(江頭教授)

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 私がはじめて腕時計を付けるようになったのは中学校に入学したときでした。父が入学祝いに買ってくれたもので、それ以来ずっと腕時計を付ける習慣が出来ました。私立の中学校だったので毎日電車に乗って通学することになった。これからは電車に間に合うように時間が分かる腕時計を、という配慮でしょうか。

 手帳についてはいつから持ち始めたのか、記憶が定かではありませんが、これも父の勤め先で顧客用に配っていた手帳の残りを分けてもらったのが始まりです。

 腕時計は電車に乗るのでいつも見ていました。いえ、授業の終わりの時間を今か今かと腕時計で確認していたような気もします。とは言え、中学生にとっても腕時計は役に立つ道具ですよね。その一方で手帳の方はなかなか身につきませんでした。

 手帳、といっても単に「手頃なサイズのノート」という意味ではありません。手帳の本体部分はカレンダー形式でそれぞれの日のメモを書き込むことが出来るページでしょう。1ページ1週間のレイアウトなら1年分で52ページ。見開きで1週間なら104ページ。ここに将来の予定を書き込み、毎日「今日は何があるか」を確認するのが手帳の使い方です。

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2021.10.13

デマを拡散しないように- 28 必要対策・十分対策:安全工学の視点で新型コロナ対策を考える(片桐教授)

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 十分条件・必要条件ということばがあります。新型コロナ対策にはそれと同じように十分対策と必要対策を考える必要を私は感じます。これはmustでしておかなければならないという必要最小限の対策を必要対策と呼びましょう。ここまでしてあれば十分といえる対策を十分対策と呼びましょう。

 リスクアセスメントによる産業事故防止対策は、「十分対策」であることを求められます。あらゆる事故の可能性を洗い出して対策します。しかし、現在、政府の国民に対して「お願いしている」新型コロナ対策は十分対策と呼べません。残念ながら、現在の対策は必ず必要と思われる対策であっても、これで十分な対策とは言えません。実際、まだ対策は十分でないから、長期的にみて新型コロナの感染拡大を人為的に収められません。何度も波がやってきています。

 その対策が「必要対策」なのかどうかは国や集団、個人により異なります。日本ではマスクは必要対策という認識です。そのようなコンセンサスがあります。マスクの有効性はインフルエンザにおいても確認されています。浮遊飛沫を吸い込む可能性を大幅に確実に下げます。この対策により2020-2021年期のインフルエンザの発症数は、前の年の1/200だったそうです。また、マスク習慣の浸透している日本の2021年9月の時点での陽性者の人口比率は、欧米の1/10程度であることも、このマスク習慣の有効性を示唆します。しかし、欧米ではマスクは必ずしも必要対策と認識されていません。

 2020年10月になって、CDCは「「COVID-19 can sometimes be spread by airborne transmission」と言う声明を注意喚起のために出したそうです[https://www.asahi.com/articles/ASNBB3GMWNB8UBQU003.html]。

 ここで「airborne transmission」は機械翻訳では「空気感染」と訳されますが、日本の専門用語の空気感染=飛沫核感染、だけではなく、飛沫感染やアエロゾル感染などの、空気層を媒体とする感染全てを意味する広い概念です。日本では当たり前に理解・認知されている感染経路です。

 少し脱線しますが、2021年8月27日の新聞報道で「「コロナは空気感染が主たる経路」研究者らが対策提言」という記事が出ました。CDCが「空気感染」の可能性を認めたという記事です。その記事に添付されている報告書の写真には、やはり「airborne transmission」と書かれていました。この記事が日本で紹介されると、「新型コロナは(飛沫感染だけではなく)空気感染を起こす」という誤解を招く記事になります[https://news.yahoo.co.jp/articles/694fc9ee7cb1a79c830e23126ba994f8ca93f64a]。日本で当たり前に認知されていることは、アメリカでも当たり前であると考えたのでしょう。

 日本では当たり前のマスクによる飛沫感染防止が、アメリカでは少なくとも2020年10月まで当たり前ではなかった。マスクの着用は必要対策になっていなかった、ということです。日本の記者さんは、マスクは当たり前という前提でCDCの記事を読んだのでしょう。その上で空気感染対策が必要と考えてしまい、あたかも日本では対策できていない感染経路があるように誤解してしまったのでしょう。

 確かに、アメリカ大統領選挙の集会で、トランプ氏はマスクにしておりませんでした。必要対策の認識はTPOや国などの地域、果ては人により大きく異なるもので、任意性を持ちます。

十分対策を提案する必要性

 2020-2021年期のインフルエンザの激減(おおよそ1/200)に比べ、新型コロナの感染拡大は著しいものです。これは2021年3月15日の予算委委員会での尾見会長の言われる「見えない感染源」によるものでしょう。

 専門家は自分の守備範囲で問題を理解しよう、解決しようとします。そのためウイルスの専門家は感染の拡大収束をウイルスの性質に帰そうとします。ワクチンの専門家は高くなってきたワクチン接種率によると仮定します。公衆衛生の専門家は人の流れや行動様式に帰そうとします。しかし、真の感染拡大・収束の原因はそれ以外の要素であるかもしれません。専門家であるが故に、専門家の仮定する感染拡大・収束の原因はその専門分野のうち側に仮定され、その対策はその分野での必要対策になります。

 新型コロナ禍を根絶するための「十分対策」の立案には、安全工学的なリスクアセスメントの視点が必要です。学際的な多面的な視点が必要です。多重的ではなく、ありとあらゆる可能性からの多面的な対策立案が、今、もとめられています。

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 私はこのブログで経皮接触感染、汗腺からの感染の可能性を示唆しました(2021.1.21 http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2021/01/post-90684f.html)。しかし、実際に安全工学誌に公表した論文の共著者で論文の作成を指導してくれたY教授は、そのような経皮感染の可能性を論文に記載することに反対されました。Y教授はその分野の専門家であるが故に、情況証拠という弱いエビデンスによる仮説に基づく対策案の公表を学術的にはばかりました。確かに、学術の世界ではtoo much speakingを行なう者はbig mouseと呼ばれ、蔑まれます。専門の研究者は自分の口から出ることばにどうしても慎重になります。私も化学の研究者の端を汚す者として、自分の専門でのtoo much speakingは自制し避けます。

 一方で、このような姿勢は、例えば原子力の安全の実務では許されません。原子力の安全では、考えられる・想定される全てのインシデントの可能性を疑い、それぞれに十分な対策を講じることが求められます。全ての事故の可能性は公に検討されるべき課題です。同様に安全の実務者・担当者はあらゆる可能性の検証と伝達を求められます。そして、それぞれ可能性のあるリスクに対して、たとえそのリスクの発生のエビデンスに乏しくても、適切な対策を施すことを求められます。そして、日本の産業安全はこのような十分対策で支えられています。同様に、新型コロナの感染を完全に食い止めたければ、十分対策を行なわなければなりません。

 リスクアセスメントはそのような事故の可能性を体系的に洗い出す作業です。リスクアセスメントは対策を十分対策に近づけるための手法です。しかし、リスクアセスメントも人の思考に頼っている限り完璧なものにはなりえません。福島第一原子力発電所のように想定外は必ず残ります。十分対策やゼロリスクに近づくことはできても達成することはできないと考えるべきです。

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、引用文献などを読んで自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

 

片桐 利真

 

2021.10.12

「保護者会」が開催されました(江頭教授)

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 先週の土曜日、10月9日に保護者懇談会が行われました。従来から本学の保護者懇談会は春と秋、二回行われています。昨年、2020年はコロナ禍の影響で実施できませんでしたが、今年の春から再開されたことはこちらの記事でも紹介しています。春の懇談会は以前は全国の地方都市でも開催し、希望される保護者の方々と広く面談をする機会を用意していましたが、今年の春は本学キャンパスに限定しての開催でした。また、秋の保護者会は本来は本学八王子キャンパスの学園祭である「紅華祭」と同時期に実施することになっているのですが、今回の紅華祭は残念ながらオンラインで11月開催ということに。いつもなら面談のついでに学園祭を見てもらえるところが面談のみとなってしまいました。

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2021.10.11

「紅華祭」は対面開催中止となりました(江頭教授)

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 本日(2021/10/11)、東京工科大学八王子キャンパスでの授業はお休みです。

あれ、何で? 10月11日は祝日でも代休でもないはずでは?

そう思う人もいるでしょう。実は10月8日も同じで授業なし。もっとも、授業がないといっても大学が休業という訳ではなく、私もちゃんと通勤するのですが。

 先週の金曜日(2021/10/8)と今日の月曜日(2021/10/11)が休みなのは本学八王子キャンパスの学園祭である「紅華祭」のためでした。「でした」という言い方になってしまいます。というのも今年度の紅華祭、残念ながら対面というかたちでは実施せず、11月にオンラインで実施することになったからです。

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2021.10.08

おいしいパン屋さん(片桐教授)

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 だいぶ前になりますが、このブログで「手土産の難しさ」(2016.4.18; http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2016/04/post-7842.html)でおいしい和菓子の話しをしました。また、前回(2021.10.7;http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2021/10/post-7c082d.html)はおいしい洋菓子屋さんの話しをしました。今回はパン屋です。最初にお断わりしますが、この文章は私個人の狭い経験を元にしています。またパン屋さんとの間に一切の利害関係はありません。

 岡山在住時には、家から車で15分くらいのところにあった「岡山パン工房」のパンがおいしくて、毎週のように通っていました。市街地の外れにある地元民しかいかない郊外型のパン屋でした。このお店のおかげで私はパンに目覚めました。おいしいパンは、生活の質をひきあげてくれます。

 八王子へ来て驚いたのが、さらにおいしいパン屋さんが多いことです。また、最近の高級食パンブームで、少々値ははりますが、おいしい食パンも手に入ります。八王子にはそのような高級食パン専門店が何件もあり、どのパンもおいしく、目移りします。

 土曜日に私が八王子駅の方へいく時は、まず10時半にユーロードの先にある「ブールブール・ブランジェリー」でいろいろなパンの中から何点かを購入します。今は新型コロナ対策でお店の中には4名しか入れないので、外に長い行列が伸びています。このお店の「ブールブール」というクロワッサンはおいしゅうございます。私は硬い「リュスティック」と木の実の沢山入っている「桑の都」が好きです。また、柔らかな「パンドミー」もおいしいのですが、気をつけて持って帰らないと他の荷物に潰されてしまいます。

 ブールブールのその先にある「サルドゥパン」は何と言っても「カレーパン」がおいしいですヨ。とてもとても小さなお店で、一度に1人しか入れません。ここで家族人数分のカレーパンを買うのが定番です。

 国道に戻って、少しだけ駅前の方に歩き、セブンイレブンの角を曲がると、「ゴンチャノフ」があります。ここは「ボストーク」がおいしいですね。買いすぎてしまいます。横山町のあたりはおいしいパン屋が多くあります。

 さらに国道の北側を歩いていくと「ハレパン」があります。11時にこの店で1本2斤の「高級食パン」を買っておうちに帰るのがルーチンです。

 八王子みなみ野にもおいしいパン屋がたくさんあります。

 

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2021.10.07

おいしい洋菓子(片桐教授)

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 だいぶ前になりますが、このブログで「手土産の難しさ」(2016.4.18; http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2016/04/post-7842.html)でおいしい和菓子の話しをしました。今回は洋菓子です。最初にお断わりしますが、この文章は私個人の狭い経験を元にしています。また洋菓子店との間に一切の利害関係はありません。

 東京へ来てからもう6年半、これまでにお世話になった大先生方、親戚にお中元、お歳暮をお送りするのですが、その選択はなかなかに難しい作業です。

 片桐は甘党ですから「お菓子」を贈ります。『片桐 = お菓子にうるさい』という風評と過度の期待がよせられます。さらに偉い先生方は舌が肥えているため、どのようなお菓子をお贈りするかには気を使います。

 そのなかでも「受け」たのは、錦糸町山田屋の「人形焼き」でした。これを洋菓子と言うかどうかには、異論があると思います。それでも、箱をあけるとかわいいタヌキが整列している様は、皆さんの笑いを誘うそうです。お礼の手紙を読むと、皆、びっくりしてから笑う様子が伝わります。でも、錦糸町はいささか遠いのが難です。2016年の夏には、名古屋大学の天野先生へ講演会のお礼にお贈りしました(2016.4.14 http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2016/04/post-d381.html)。

 都立大学のアディクト オ シュクルのかわいいネコ缶のクッキーは、若い女性に好評なようです。クッキーそのものもおいしく、お勧めです。その年にお世話になったお茶の水大学の先生に贈ったら、ずいぶんと喜ばれました。「片桐先生は何でそんなに東京のお菓子に詳しいの?」と、ほめられた…のでしょうねえ。

 クッキーなら西荻窪のこけし屋もいろいろな詰め合わせの缶クッキーがおいしいですね。すこしシュール・レトロな女の子の絵が包みのアクセントです。クッキー詰め合わせの定番です。

 シュール・レトロな女の子の絵といえば、学芸大学のマッターホーンのクッキーも大変おいしいですね。この3年間は、夏はここのクッキー、冬はバウムクーヘンを贈っています。特に、このお店のバウムクーヘンの薄切りは、朝9時の開店と同時に売り切れる人気商品です。贈答品として送る場合は2か月前から予約をしなければ手に入りません。今年も10月2日に12月のお歳暮の手配に行きました。「八王子からわざわざいつもありがとうございます」とお店の人に顔を憶えられてしまいました。

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2021.10.06

水曜日の午後は「半ドン」(江頭教授)

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 応用化学科水曜日午後の時間割。1年生、2年生は選択の語学が中心。3年生は基本的に授業なしです。

水曜日となれば週の真ん中。疲れが溜まるといけないから水曜日は「半ドン」にできるように考えられているな。

でもちょっと待って。1年生は「コーオプ演習Ⅰ」という授業で、3年生は「創成課題等」(「等」って何だよ)の授業で「全体会」というのがあることになっています。しかも「実施の場合は別途掲示」という注釈つき。

 学生さんから見ると変な時間割、となるでしょうか。でも我々教員からみるとちゃんと理由があるのです。

 

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2021.10.05

デマを拡散しないように- 27 ワクチンを躊躇する心-2:反知性主義と確証バイアス。そしてサイエンス・コミュニケーターに求められるもの(片桐教授)

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 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、引用文献などを読んで自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

 2021年10月号の「文藝春秋」に「読んではいけない「反ワクチン本」」という記事がありました。大阪大学の忽那教授の署名記事です。そこでは7冊の「反ワクチン」本とその内容に対する批判的な意見を掲載していました。興味がある方は、ぜひ購入してお読みください。このような反ワクチン勢力による『デマ(?)』の拡散は行政のワクチン接種推進の妨げになっています。

 先のブログ「デマを拡散しないように、ワクチンを躊躇する心25 2021.5.10」でスロビックの11因子、カーネマンのプロスペクト理論という人間心理の側面から、ワクチンを躊躇する心を記述してみました。今回は、それに加え、反知性主義(反権威主義)から、ワクチンを忌避する心理を考えてみます。このブログの内容は来年の安全工学の講義に反映させる予定です。もし私の認識に何か間違いがあれば、是非ご指摘ください。

 国立精神・神経医療センターの調査(https://www.ncnp.go.jp/topics/2021/20210625p.html)によると、『一人暮らし』『所得水準の比較的低い人(100万円未満)』『中学卒業および短大・専門学校卒業を最終学歴とする人』『政府ないしコロナ政策への不信感がある方』『重度の気分の落ち込みがある人』でワクチン忌避者の割合が高かったとのことです。

 ここからは片桐の個人的な仮説と意見です。

 ではなぜ、そのような「社会的に恵まれていない方々」「抑圧されている方々」でワクチン忌避が発生するのでしょうか。
 2016年のアメリカ大統領選挙ではクリントン女史を抑えてトランプ大統領が誕生しました。このとき、トランプ大統領の支持者もまた、中産階級から下、学歴や所得があまり高くない人たちでした。(https://www3.nhk.or.jp/news/special/2016-presidential-election/republic5.html
現在の生活に不満を持つ彼らはアメリカ第一主義を掲げるトランプ氏を支持し、彼を大統領におしあげました。
 そして2020年の大統領選挙の時に、トランプ氏はワクチン問題に関して、興味深い発言をしています。“He (Biden) will listen to the scientists.” “He (Biden) will listen to Dr. Fauch.” と発言しています。Fauch氏は国立アレルギー・感染症研究所所長で、アメリカの感染症対策の専門家です。その意見を聞くことを「問題である」とする姿勢が支持されていたわけです。
 それに対してバイでン氏はツイッターで“For once, Donald Trump is correct: I will listen to scientists.”と返しています(https://twitter.com/JoeBiden/status/1318357515680116737)。専門家を「敵」と見做し支持者の心をつかんだトランプ氏と、専門家を「味方」としたバイデン氏の争いの結果は、ご存知のようにバイデン氏の勝利におわりました。
 ご存知のようにトランプ大統領はマスクを拒否し、“コロナはただの風邪”という態度を取り、2020年のアメリカでの感染拡大を招き、自らも10月に感染しました。人口比でのアメリカの感染率は日本の10倍以上です。

 先のトランプ氏の発言は、彼の支持者の「感染症専門家」を軽視する姿勢、あるいは学術権威に対する反感・反発を表しています。このような専門家を軽視する姿勢を批難する人はトランプ氏の行動原理を「反知性主義」と呼び、賛同する人は「反権威主義」と呼ぶようです。
 反ワクチンを主張する方々もまた、そのような「反知性主義」あるいは「反権威主義」なのではないでしょうか。

 反ワクチンを主張する人の主張には類似性をみつけられます。厚生労働省や山中教授のブログなどの内容を引用せずに、SNS上の噂や反ワクチンを主張する一部のお医者様のコメントを、『市民の生活感覚に沿う主張』と高く評価し、採用しています。まさに権威を否定する姿勢です。このような反ワクチン主義者の論拠を支えているのは、反知性主義(反権威主義)と確証バイアスとだと思われます。
 確証バイアスとは、自分の主張に沿う情報のみを採用し、それに反する情報を無視する心理バイアスです。

 我々、科学技術者は、知らず知らずに「権威」とみなされ、反発を受けているかもしれません。周りをそのような反知性主義に陥らせないようにするためには、科学技術の丁寧な説明を心がけなければなりません。
 文芸春秋の記事は、それらの反ワクチン本に書かれている間違った内容を一つ一つ丁寧に潰しています。しかし、それだけではくすぶっている反ワクチンの火を消し止められないと思います。ワクチン忌避者の説得は、「理」だけでなく、権威に対する不信感を払拭する「情」の対応も必要です。
 科学技術を正しく伝えるサイエンス・コミュニケーターはこれからますます社会の中で重要な役割を果たしていくでしょう。そしてサイエンス・コミュニケーターには「正確にわかり易く」科学技術を伝えるだけではなく、権威者ではない立場から「市民感情」に沿って科学技術を説明することが求められるでしょう。

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片桐 利真

2021.10.04

デマを拡散しないように- 26 第6波に備えましょう。(片桐教授)

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 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、引用文献などを読んで自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

 私自身はウイルス学の専門家ではありません。しかし、30年前に免疫学を学び抗アレルギ薬の創薬に従事した経験を持ちます。そのときの(少し古い)知見やその後の科学者としての経験を元に、今回の新型コロナウイルスを理解する努力を行っています。その結果は、医療保健学部の横田先生の指導下で仮説論文にまとめました。

 片桐、横田 安全工学、2021, 60(1), 49-52. (https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/60/1/60_49/_article/-char/ja/)

この論文の内容は、今年の本ブログ(その1その2その3その4その5その6)に分割して紹介しています。私は感染症やウイルスの専門家ではありませんので、感染拡大・収束をウイルスそのものだけには求めていません。外部要因として、季節変化や気候との関係で解析しています。

 さて、昨年の東京の新規陽性者数のグラフを10倍したもの(青線)を、今年のグラフ(赤線)に重ねると、第1波と第4波、第2波と第5波がよく重なっています。昨年よりも今年の波は2週間程度後ろにずれているようです。この重なりは、東京における新型コロナの感染は季節性のものである可能性、気候により何らかの影響を受ける可能性を示唆します。しかし、その本質はまだ未解明です。

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 このグラフの波のシミラリティだけで、感染拡大収束の要因を分析し明らかにすることはできません。先に紹介した論文では湿度や日照時間と新規感染者数の増減を表す差分とのあいだの相関について述べました(ブログ 2021.1.13)。しかし、湿度や日照時間が直接的な要因なのか、それとも何らかの「疑似相関」であり、真の直接的原因である「潜伏変数」の存在はまだわかりません(ブログ2020.3.31)。例えば、夏の第2波第4波は、高温多湿になり、半袖の人の増加による思わぬむき出しの腕の皮膚接触により感染拡大した(ブログ2021.1.21)、というような仮説も立てられます。真の要因解明は広い視野からの今後の研究を待たなければなりません。

 そして,このグラフは、今年の11月終わり頃からの第6波の到来を示唆します。第6波に備えましょう。マスクを付けましょう。3密を避けましょう。「早寝早起き朝ごはん」で免疫力を強化しましょう。

  この「予言」が外れてくれることを、私は心から祈ります。

 

片桐 利真

 

2021.10.01

台風コロッケ(片桐教授)

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 台風16号は2021年10月1日に日本へ接近するそうです。雨は9月30日の今夜から降り始め、強風のピークは明日の昼〜午後になりそうです。その頃の台風の気圧は950 hPa、台風本体は関東の東沖合を通過するようです。八王子は強風域に入り、暴風域には入るか入らないかは微妙なところのようです。大きな被害のないことを祈ります。

 我が家では数年前から台風の夜はコロッケを食します。奥さんがジャガイモをふかして、人参のみじん切りや炒めた合い挽き肉を混ぜ、パン粉をまぶして揚げてくれます。まんまるの少し大きめのコロッケをキャベツの千切りとともに中濃ソースを掛けて夕飯に食します。次の日の朝ごはんは食パンにはさんだコロッケサンドになります。

 安全工学の第14回(最終回)の「災害から身を守る」の回では、

  • 台風の被害は予想可能である。
  • 雨→ 洪水
  • 風→ 飛散物による被害

 情報を収集し、危険を予想し、対策をとる。とを述べています。そして、その下に小さめの字で:

「コロッケ買ったら、家でおとなしくしよう。必要なら避難しよう。「ちょっと田んぼを見に行く」はしないように。」と記載しています。

 この「台風コロッケ」は、かなり前からある風習のようです。最初に私が知ったのは、近所のスーパーの販売促進のポップでした。安全工学の講義のためにまじめに調べてみたところWikipediaに「台風コロッケ」という項目がありました。Food_croquette

 

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