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(推薦図書)野口 悠紀雄著 「「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)」(1993/11/1) (江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 1993年の(偶然ですが)ちょうど11月出版の本なので、28年前の本ということになります。この当時、なんでもかんでも「超」という言葉を付けるのが流行っていたので、私のこの本のタイトルを見たときの第一印象は「また流行に乗って「超」とかタイトルにつけちゃって」というややネガティブなものだったような。ところが読んでみてビックリ。本当の意味で「超」整理法、整理を超越する、つまり整理をしない、というのがこの本の要点なのです。

 ちょっと話が先走りしましたね。この本はビジネスマンや研究者に向けて、自分のところに入ってくる情報を如何に整理して効率的にアウトプットにつなげるか、という方法・ノウハウについて書かれた本です。これに類する本は「知的生産の技術(岩波新書)」(梅棹忠夫著)をはじめとしていくつも出版されていました。先に「入ってくる情報」と書きましたが、当時のことなので情報は本当に物理的なかたちで入ってきます。要するに情報が印刷された紙がどんどん届いて処理しきれないで溜まっていく、さあどうしよう。という訳で書類整理のノウハウをもとめてこの手の本が読まれていたのですね。

 そこでこの「「超」整理法」なのですが、先ほども述べた様に「整理」という考えを越えた情報の処理方法を提案しています。

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 さてそのノウハウとは。A4より少し大きなサイズの封筒(角型2号の封筒)を大量に準備。本棚に一定の区画をつくる。そして著者の書きぶりを引用すると

さて、机の上に散らばっている書類などを、ひとまとまりごとに封筒に入れる。このまとまりを「ファイル」と呼ぶことにする。封筒裏面の右肩に日付と内容を書く。封筒を立てにして、内容の如何に関わらず、本棚の左から順にならべていく。これで終わりである。(29ページ)

というきわめてシンプルな方法。

 なるほどこれは「整理」とは言えない。でも書類を整理する目的は必要な書類を短時間で見つけ出せるようにすること。そのために実はこの方法にはもう一つ仕掛けがあります。

 一度出した「ファイル」(封筒)はもとの位置に戻さずに本棚の一番右側に置く、というのです。

 これを続けていると最近使ったファイルが本棚の右側に集まることになる。探す必要のあるファイルは普通は使用頻度の高いもの。だから必要性の高いファイルほど本棚の右に集まるので、右から探してゆけば大した時間をかけずに目的の書類を見つけることができるのだ。これが「超」整理法の原理なのです。

 当時の私にとってまさに「目からうろこ」のアイデアで、早速自分でも実施したものです。もちろん、ここで説明したのは本書の内容のほんの一部。特に著者自身も強調していますが本書で解説されているのは整理法についての単なるノウハウに限りません。書類やその他の情報に対処する手法の一般的な理論が目指されています。各自の状況に応じてカスタマイズができるように手法の有効性の理由が丁寧に説明されている。これが本書が類書とひと味ちがった有用さ、魅力をもっている理由でしょう。

江頭 靖幸

 

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