デマを拡散しないように- 37 同調圧力(片桐教授)
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このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、引用文献などを読んで自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。
個人の安全vs.公衆の安全
社会的に許容されるレベルとは言え、ゼロリスクではないワクチンを、「臨時接種」という法の枠組みの中で、金銭的負担無しで,行政の多大な努力で行なっているのは、このワクチン接種の受益者は接種を受ける個人というよりも社会全体にあることを示しています。社会全体の利益は「集団免疫の形成」です。それによる医療崩壊の回避です。今回のワクチン接種は個人の安全というよりも公衆の安全を目指すものです。そして、公衆の安全はひとりひとりの安全につながります。
この公衆安全=「みんなのための予防接種」という考え方は暴走すると、ワクチンを射てない人への理不尽な同調圧力になります。何らかの理由でワクチン接種を受けられない人は一定数存在します。そのような人へ短絡思考的に「ワクチンを射て」「射たないのは公衆の敵だ」とする行為、差別的な行為はなにがあっても避けなければなりません。しかし、ワクチンパスポートなどの実施により,ワクチンを受けた者と受けなかった者が区別されると、その区別は差別の種になります。どうすれば良いのか、まだ答えはありません。
ワクチンを射つか射たないかは、個人のマターです。周囲にワクチン忌避者がいた場合、「十分に調べて考えたか」を問うことは良いのですが、「ワクチンは射つべきだ」という結論をもって圧力を掛けるのは間違った行動です。
副反応が怖いからワクチンを忌避する人には、ワクチンと感染のリスクを冷静に比較させましょう。あるいは、このブログにあげたような心理バイアスにその人がはまっている可能性を教えてあげましょう。
陰謀論からワクチンを忌避する人には、ワクチンをディスるSNS上の噂の多くが、ワクチンで第3国を牛耳りたい特定の2カ国発であるとのEU委員会の報告を教えてあげましょう[https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-disinformation-idJPKBN2CF2MR]。そのようなカリコ・ワクチンをディスる行為は、「洗脳により国際謀略の片棒を担がされているのかも知れない」と教えてあげましょう。そういう陰謀論の人は、自分が別の陰謀論の手先になり加担させられているということを嫌います。
それでも一定数の人は体質的にワクチンを射てない場合があります。あるいは何らかの理由でお医者様に止められているかもしれません。そのような場合にワクチンを射つように圧力を掛けるのは、もはやハラスメント、犯罪行為です。
そして、同調圧力にはファシズムの臭いを感じます。それを許す社会は健全ではありません。
そのような同調圧力はどのようにして発生するのでしょうか。私はいくつかの要因があると思います。
- おせっかい:親御さんが十分なワクチンへの理解もなく、子どもにすすめる場合、あるいは「周りが接種しているから」等の理由で、考えなく、しかし、善意から勧めてくることがあります。
- 自説の正当化:ワクチンを忌避している人を,自分の論理で接種者に寝返らすことができれば、自分の論理、ワクチン接種を正当化できます。自説の正当性を確認できます。だから、積極的に寝返らそうとします。自分のワクチン接種に自信のない人の行動です。
- 公衆衛生の立場からの圧力:集団免疫の形成にはワクチン接種者を増やすことが必要です。その目的で、相手の個人的な事情よりも公共の福祉を優先しようとします。
- 異端諮問(正義の味方):とにかく集団の行動に従わない人間が気に食わない人はおります。マスク警察もそうですね。
- 要するに、同調圧力でごり押ししてくる人の多くは、自分が正しいと思っている、思いたい人だと思われます。それだけに同調圧力は厄介です。
ワクチン忌避を決めた人は、これからも重症化の恐怖におびえながら、ワクチンパスポートの恩恵も受けられず、皆が安心を獲得した時にも危機に立ち向かう、そんな覚悟と矜持を持って孤高の生き方を選んだ人です。もしワクチン忌避がその人の十分に考えた末の決断なら、それは十分に尊重すべきです。
正直、私には、その覚悟も矜持もありません。このワクチンの仕組みを十分に理科し、自分のアレルギー体質というリスクを勘案し、それでも今回のワクチン接種を受けました。
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