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2021年12月

2021.12.31

2021年を振り返る(江頭教授)

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 後年の歴史家は2021年は2020年に続いて「コロナウイルスパンデミックの年」と評価するのではないでしょうか。私達、東京工科大学応用化学科の教員にとってもこれは同じ事。昨年同様、コロナ対策に追い回された一年だったと思います。

 事の始まりは2020年4月からのキャンパス閉鎖。それに対応するオンライン授業は全く新たな経験でした。とはいえ半年もたてば我々も適応できるようになります。2020年9月に始まった後期の授業、応用化学科では「対面授業、ただし遠隔受講可」を広く実施、学生実験では学生実験室に入室する人数を制限する形で対面実験を再開しました。

 2021年はこの2020年度の後期の授業を引き継ぐ形でスタート。コロナ第三波の中でも一応満足できる授業を実施できたと思います。

 つづく2021年の新学期は「いよいよコロナ前に戻れる!」という希望の元に対面授業を中心としてスタートをきりました。これでワクチンが行き渡ればコロナ禍も終わりか。などと考えたのが甘かった。今度は第四波の影響で前期は途中からオンライン授業に移行することになってしまいました。一応、2020年度の経験からオンライン授業に対応はできたものの、学期の途中からオンラインに移行というのは厳しい。授業計画を一部変更せざるを得ませんでした。

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2021.12.30

忘れようとしても思い出せない映画「あの高地を取れ」(江頭教授)

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 「忘れようとしても思い出せない映画」というのは「昔観て印象に残っているが、映画のタイトルなどが思い出せない映画」のこと。折に触れてシーンやストーリーの断片を思い出してしまって気になって仕方がないけれど肝心の映画のタイトルが思い出せない。いっそ忘れてしまいたいほどだ、とううわけです。映画評論家の町山智宏氏がネットラジオで読者から投稿された映画の断片的な情報を元に映画のタイトルを言い当ててみせる、というネタをやっていて、そのときのタイトルがこの「忘れようとしても思い出せない映画」でした。

 私にとっての「忘れようとしても思い出せない映画」は

アメリカの軍事教練キャンプに新兵達がやってくるが、全くダメダメ。「全体進め」で歩いても隊列はすぐにバラバラに。でも数往復で見事な行進をキメて、教官は涙ながらに「おまえ達は俺の誇りだ!」

というもの。いや、いくら何でも安直だろう。それに映画なのに数分で終わっちゃったよ。

 実はこれ、TVでこの映画を観ながら私が眠ってしまって映画の頭と終わりしか覚えていないわけです。一体この間に何があったんだろう。どうしても気になって「忘れようとしても思い出せない映画」となったのです。

 なんて話をしたのが昨年のお正月。そこで兄から、それは「あの高地を取れ」という映画だよ、と教えられて長年のモヤモヤがはれました。早速DVDを買って鑑賞することに。
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2021.12.29

トイレットペーパー騒動(江頭教授)

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 普通に「トイレットペーパー騒動」といえば1970年代にオイルショック時に起きたトイレットペーパーの店頭での品不足を原因とした消費者パニックのことですが、今回は少し別のお話。私が大学の講師になって学科会議に顔を出すようになった頃に印象に残ったエピソードです。

 私の所属する学科は一つの建物に集まっていたのですが、その建物のトイレでトイレットペーパーがない、という状況が頻繁に起こるようになっていました。私自身もペーパーを使い切っても予備が置かれていない、はては予備どころかペーパーが全くない、ということが次第に頻繁になってゆきます。おっと、ここはペーパー切れだ、といって他のトイレに行っても同じこと。うーん、これは何かおかしい。

 さて、これが学科会議で話題になると、私も、私も、と皆さん心当たりがある様子。

 事務に言ってちゃんとペーパーを出してもらわないと。

実は既に事務に行った先生がいたのでした。

 いつも通り、いやいつも以上にペーパーを出しているのに、この状態。事務方も困惑している。

これは一体...。

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2021.12.28

2022年度の年賀状のはなし(江頭教授)

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 昨年の今頃「年賀状と名簿と個人情報保護法の話」という記事を書きました。年賀状の発売枚数は2003年がピークで40億枚を超えていたそうですが、その後減少を続けて20億枚を切っているというはなし。日本郵政グループのプレスリリースによれば今年、というか2022年用の年賀状の発売数は18.3億枚。2021年用が19.4億枚なのでかなりの減少。でも減少率としては昨年よりはましなのだそうです。

 自分自身で考えてもここ何年か新しい年賀状の送り先は増えていません。その一方で徐々に送り先が減っている、という状態で年賀状の発売数の減少傾向は納得できるものです。

 リタイアされた方からの「来年からは欠礼させて頂きます」とのおことば。なるほど、将来自分もどこかのタイミングでこんな決断をくだすのだろうか。年賀状の送り先の方からの忌中欠礼の葉書でご本人の訃報に触れることもあり、これは寂しい限り。

 中には「今度からメールベースに移行します」と宣言した同窓生も。でも年賀メールも来てないなあ、などと考えているとご両親から病気で亡くなった旨のご連絡をいただく、というケースも。これは少なからずショックでした。

 年賀状の送り先は少しづつ減少し、新しい送り先が増えることはない。個人情報保護法によって年賀状という文化は緩慢な死を迎えているというべきでしょう。

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2021.12.27

2021年の授業は今日で終了です(江頭教授)

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 クリスマスも過ぎてもう後は大晦日を待つばかり。いえいえ、本学の授業は本日27日まで。もう一日頑張らなくては。そう、今年は例年になく遅い授業の終了日なのです。

 昨年度は25日金曜日で授業が終了していたのですが、今年は週明けまで授業が続くことに。これは月曜日の授業は他の曜日と比べて遅れているのが原因でしょう。例えば本学の学園祭である「紅華祭」は10月に予定されていて10月11日の月曜日はその代休でした。これで月曜日の授業は一週遅れに。実際には対面での「紅華祭」は実施できなかったのですが、すでに組み上がっていた予定は変更できず、結局本日27日で月曜日の遅れを取り戻すこととなりました。

 おかげで今まで冬休みを使って行われていた電源の点検が学期の途中で行われることに。点検中はキャンパス全体が停電するので、写真の様な非常用の発電装置が設置され、非常電源に切り換えられます。例年冬休みに入った後のイベントですが、今回は先の土曜日を使って点検と停電があった、という次第です。

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2021.12.24

「サステイナブル工学プロジェクト演習」最終報告会予選(2021)(江頭教授)

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 12月22日の水曜日「サステイナブル工学プロジェクト演習」最終発表会の予選が開催されました。これは本学工学部の3年生によるグループワークでの発表会です。この「サステイナブル工学プロジェクト演習」の特徴は3学科合同の授業である、という点ですが、この中間発表に向けた取組では異なる学科の学生が集まってグループをつくることが特徴になっています

 さて、今回の最終発表(予選)はスライドを用いた口頭発表です。昨年度はオンライン形式ので実施を余儀なくされたのですが、今年は中間報告会と同様、対面での実施に復帰です。58班の発表、さすがに一会場では捌ききれないのでパラレルセッションとなりました。発表は8会場で同時進行し、我々教員は手分けして各会場での発表を聞きくことに。

 さて、今日の最終報告会は予選、ということで各会場の教員には、7~8件の発表の中から本選に進出する班の選定する、という作業も。各会場での厳正な審査の結果、無事、本選に進む班を選定することができました。

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2021.12.23

van der Waals の状態方程式(江頭教授)

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 こちらの記事では常温・高圧のメタンの挙動は理想気体の状態方程式からずれる、という話をしました。その上で、より実在のメタンに近い状態方程式として「van der Waals の状態方程式」による計算結果を紹介しました。今回はこの「van der Waals の状態方程式」について少し説明をしましょう。

 まずはどんな状態方程式なのか、の説明から。状態方程式なのでPVT、n そしてR(それぞれ圧力、体積、絶対温度、物質量、ガス定数)の関係式で以下の様な形です。理想気体の状態方程式にはなかったabというパラメータが新たに加わっているのが特徴です。

 この式の一つ目の特徴はV=nbとなるときPの値が無限大に発散すること。これが前回の記事で「どんなに高い圧力をかけても体積は一定値以下にはならない」と説明したところです。気体の体積はnb以下になることはない。つまりbは分子一個の体積(のようなもの)なのですね。

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2021.12.22

ワクチンパスポート「新型コロナワクチン接種証明アプリ」をインストールしてみた(江頭教授)

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 「ワクチンパスポート」という名前は聞いていたのですが海外のお話しかと思っていました。ところがふと気が付くと日本でも利用がスタートするというニュースが。

 せっかくワクチンを接種したので(1回目2回目)、いざというときのために接種券(接種済みのシール付)の写真をスマートフォンに入れておきました。でも、写真を見つけ出すのが結構な手間で結局一度も使っていませんでした。

 ということで早速「ワクチンパスポート」というか「新型コロナワクチン接種証明アプリ」を自分のスマホにインストールしてみました。こちらがそのスクリーンショット。「日本政府公式」で「デジタル庁」の名前も入っています。

 インストールしようとしたときによく似た別のアプリもあったのですがあれは何だったんだろうか。これからインストールする人は一手間かけてデベロッパを確認した方が良さそうです。

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2021.12.21

BS1スペシャル「コロナシフトでつくる日本の未来 デジタル」を観て(江頭教授)

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 今回紹介するのはNHKのBS1で放送した番組

BS1スペシャル

「コロナシフトでつくる日本の未来 デジタル」

です。

 落合陽一氏をキャスターに迎え、コロナ禍で明らかになった日本の課題を探る、というシリーズの1作目。本放送は2021年12月3日でしたが、私が見たのは12月19日の再放送(の録画)です。

 「NHKの企画力はスゴイ!」とは先のブログで「魔改造の夜」を表した片桐教授のご感想ですが、残念ながらことこの番組について、私はNHKについて厳しい意見を言わざるを得ません。というか、この「BS1スペシャル」は一体誰に向けた番組なのか、少し考え込んでしまいました。

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2021.12.20

LPG(液化石油ガス)の代わりにLNG(液化天然ガス)が使えるか その2 高圧編(江頭教授)

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 先日の記事「LPG(液化石油ガス)の代わりにLNG(液化天然ガス)が使えるか」では室温では天然ガス(メタン)は液化しないのLNGにはならない。だからLPGにはかなわない。と書きました。

 確かに液化しないならLNGとは呼べませんね。でも問題はボンベにどれくらい詰め込むことができるかです。液化しないなら思い切り高圧にガスを押し込んでしまえば良いのでは。液化はしなくても液体と同じくらいの密度でボンベに詰め込むことができれば良いしょう。

 家庭用のLPGの主成分であるプロパンは大気圧では-42℃で液化。そのときの密度は0.493g/mLです。LPGボンベの中ではこれより高圧で温度も高いので多少密度は変化すると思いますが、まずはボンベに詰め込む密度の目標値を0.5g/mLとしましょう。

 メタンを加圧して0.5g/mLの密度でボンベに詰める。そのときの圧力はどのくらいなのでしょうか。

 理想気体の状態方程式から密度ρ

ρ=Mn/V=MP/(RT)

と表されることが分かります。ここでP,V,Tはそれぞれ圧力、体積、温度、nは物質量、Mは分子量、そしてRは気体定数です。Pについてとくと

P =ρRT/

です。これに M=16 g/mol、R=0.0821 L・atm/(mol・K)、室温20℃を想定してT=293.2K、それにρ=0.5g/mLを代入します。単位に注して結果は

P=752 atm

となりました。

 750気圧。普通のボンベの5倍の圧力。これはいくら何でも大きすぎる。でもこの計算にはそれ以前の問題があるのです。

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2021.12.17

テレビ番組への感想 NHK BSプレミアム 「魔改造の夜」(片桐教授)

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 最近のNHKの企画は規格外でスゴイ。「魔改造の夜」は年に2回?だけ新作の放映される番組ですが、ある意味「大人のロボコン」いや「プロのロボコン」です。一流企業や技術を誇る企業のエンジニアが、極めてばかばかしい競技課題に挑むというものです。指定された元マシン(おもちゃだったり家電だったり)、その機能を局限まで問う競技です。それに対して、どこまでも知恵を出して極限的なスペックを示すマシンを作る番組は、すごい企画です。企画力です。NHKすごい!。https://www.nhk.jp/p/ts/6LQ2ZM4Z3Q/

 ポップアップ・トースターのパン高飛び、お掃除ロボットの走り幅跳び、ワンちゃんおもちゃの25 mレース、扇風機50m走などなど、その詳細は私にはことばで表現できません。しかもそこへ一流企業のエンジニアが(おそらく)まじめに総力をあげて取り組む姿には,感動を憶えます。上記NHKのホームページの解説でもその雰囲気や番組の「魔力」は伝え切れていません。

 そして、会社名を伏せ字にしているようで全然隠していないところがまたすごい!。山口百恵が「緑の中を駆け抜けてく真っ赤な「車」」と紅白で歌っていた頃を思うと隔世の感があります。

 ワンちゃんおもちゃの競争では世界のTヨタのエンジニアが、その素晴らしい美的センスでかわいいわんちゃん人形をケルベロス化していました。

 またお掃除ロボットの走り幅跳びではH田技研の改造により、飛び上がった瞬間に変形していました。それはロボットアニメのワン・シーンを見ているようでした。

 赤ちゃん人形の綱上りではN産自動車が「やっちまったぜN産」してました。

 参加している組織は大企業だけではなく、ユニークな技術を誇る町工場や大学など多彩です。

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2021.12.16

「待つも親切、待たぬも親切」(江頭教授)

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 今回のタイトル、元ネタは「貸すも親切、貸さぬも親切」で大ヒットしたテレビドラマ「半沢直樹」の第二部に出てきたセリフです。困っている会社にお金を貸すのは親切。でもお金を貸すことでその会社の本来の問題の解決が先延ばしにされるなら、敢えてお金を貸さないことでその企業が問題にきちんと向き合えるようにしてあげることこそが親切だろう。大意はこんなところでしょうか。(このセリフの本来の意味は少し違っている様ですが。)

 で「待つも親切、待たぬも親切」の待つ待たないはお金の話ではありません。レポートや課題の期限のお話しをしたいと思うのです。それというのも先日紹介した本学の全学教職員会で行われた講演「ハラスメントのない大学づくり」の中でコロナ禍に対応したオンライン授業のガイドラインが紹介されていて、そのなかに「講義の録画を視聴できる期間は1週間以上」「課題の提示から提出までは1週間以上」という項目があったからです。

 これについて私は懐疑的なのです。

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2021.12.15

LPG(液化石油ガス)の代わりにLNG(液化天然ガス)が使えるか(江頭教授)

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 家庭用のLPGはよくプロパンガスと呼ばれますが正式な名称は液化石油ガスた、という話はこちらの記事で紹介しました。その一方都市ガスは通常天然ガスが使われています。天然ガスの主成分はメタンガス。プロパンはC3H8、メタンはCH4。1分子内の炭素や水素の数が違うので酸化反応での発熱量はプロパンガスのほうがずっと大きくなります。重量基準なら大差は無いところですがガスは気体で供給されるのですから体積当たりの発熱量には1分子当たりの特徴がストレートに反映される。つまりLPGというかプロパンの方が発熱量が大きいのですね。このため調理器はLPG用の調理器と都市ガス用の調理器は互換性がありません。

 これは不便だ。いっそLPGも都市ガスも同じガスを使えたら良いのに。そう考える人がいるかも知れません。天然ガスを液化したものはLNG ( Liquefied Natural Gas まんま液化天然ガスです)と呼ばれています。海外から天然ガスを輸入するとき、天然ガスはLNGの形で船で輸送されています。なら港についたLNG船からボンベに詰めて各家庭に配送すれば便利なのでは。

 でも、これには大きな問題があるのです。

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2021.12.14

「SFパニックドラマの超有能なイケメン官僚に転生してしまった件」じゃなくて「日本沈没 希望の人」の感想(江頭教授)

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 「日本沈没」は小松左京氏のSF小説で1973年に刊行後すぐに大ヒット。同年に映画化されてこれもヒットし、引き続き翌年にはTVドラマ版も放送されました。私より上の世代には耳慣れたタイトルなので、これが新たに映像化、TVドラマになると聞かされてはどうしても見てしまいます。小松左京を今リバイバルさせるなら「復活の日」じゃないか、とも思いますが、あれはいくら何でも生々しすぎて無理ということなのでしょうか。

 ということで、全9話見て思うこと。この「日本沈没 希望の人」の「日本」、いくら何でも現実の日本と違いすぎです。現実の日本の人口一億二千万人の一万分の一くらい、きっと一万二千人くらいの人口で、面積も本当の日本の一万分の一くらいにしか見えません。(いや、作中で「二千万人の移民受け入れが決まった、あと一億人だ」というセリフがありました。きっと人間については一人を一万人と数える特殊な風習のある異世界なのでしょう。)たまたま現実世界の日本と同じような形をした島国ですが、あれも偶然の一致にちがいない。

 人数の規模感についてもさることながら、このドラマでは物理現象としての「日本沈没」と、それを予測する「科学」のあり方が現実の私達の世界と根本的に異なっています。現実世界の科学は「分からない」という前提からスタートして現実と格闘しながら利用可能な仮説を組み立ててゆくものです。繰り返しの多い現象なら比較的容易に予測が可能になりますが、希に起こる現象の予測は困難を極めます。日本の沈没というような現象(たとえそれが一万分の一の面積でも)は作中でも前代未聞の現象とされているのですから、現実の科学であるなら正確な予測などできるはずもありません。

 これを確信を持って予言する人間は精神に変調をきたしている可能性が高い。でもこの世界ではその予言が本当のことになってしまうのです。変調をきたしているのは世界の方か。と言うか、この物語世界は我々の世界とは異なった物理法則によって支配されているのでしょう。

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「日本沈没」のサイトのトップページなのに人の顔の写真ばかり。爆発する富士山もくずおれた東京タワーもない。これだけで今回のドラマの作り手の姿勢が分かるというものです。

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2021.12.13

「安全工学」の講義番外編 ボンベのおもいで(片桐教授)

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 12月7日の江頭先生のブログ(http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2021/12/post-74d8e9.html)で、ボンベの話しをしておられました。それに便乗して:

 昔、学生時代に私のいた離れの化学実験室の建物にはエレベーターがありませんでした。正確に言うと、あったのですが、遠くて使えませんでした。
 当時は安全意識も皆低く、ボンベ・キャリアも買ってもらえず、ストップトフローに使う窒素ボンベを「転がして」運んでいました。「転がして」というと寝かしてゴロゴロを想像するかもしれません、でも、そうではなく、ボンベの頭を片手で持って、ボンベの底の円周を利用してクルクルと回転させ運んでいました。倒しが甘いと回転させてもあまり距離をかせげず、倒しがキツイとボンベが重くて倒しそうになります。へたくそな挿絵を描いてみました。

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 だから,「遠くのエレベーターを使うくらいなら」と、1〜2階差ならボンベを抱えて階段を昇り降りしていました。あのころは若かったから、そんな無茶ができました。

『ボンベのおもいで(重いで〜)』

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2021.12.10

ハラスメントに関する講習会が開かれました。(江頭教授)

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 東京工科大学では月に一度、八王子キャンパス、蒲田キャンパスでそれぞれに「全学教職員会」と称した講習会を開いています。学長が大学の運営方針を説明する回もありますし、各学部がそれぞれの教育目標を発表する回もあります。時には外部講師をお願いして大学の教育にかかわる最新の話題を解説していただくこともあります。

 今週のタイトルは「ハラスメントのない大学づくり」。本学では毎年このようなハラスメントに対する講演を行っていますが、今回もその1つ。今回はNPO NAAH(アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク)の御輿 久美子先生に講師をお願いしました。

 ハラスメントについての講演会はこの「全学教職員会」でも何回か行われ、それぞれに事例紹介や考え方の説明がありました。今回ご講演いただいた御輿先生のお話、とくに具体的な事例についてのお話しは、さて何というのでしょうか、ある種の実感というか気持ちのこもったお話しだったと思います。実際にハラスメントを体験した方の話を聞いて、その思いを追体験したが故のものだからなのでしょうか。被害者に寄り添う気持ちが強くでていたと思います。

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2021.12.09

LPガスは実は液化プロパンガスの略称ではなくて液化石油ガスの略称なのだけれど家庭用のLPガスの主成分はやっぱりプロパンガスだって知ってましたか?(江頭教授)

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 「電気、水道、ガス」と並べて言われるようにガスというのは生活のためのインフラの一つとなっています。ガス管を通じて供給されるガスを都市ガスと呼びますが、この都市ガスが整備されていない場所で利用されるのがボンベに入ったガス。LPガスです。

 この「LPガス」ですが、「プロパンガス」とも呼ばれています。となれば「LPガス」は液化プロパンガスの略称で、Liquified Propane Gas の頭文字だと思うところです。恥ずかしながら私もそう思い込んでいた時期がありました。でも本当は Liquified Petroleum Gas (液化石油ガス)の略称です。

 石油は油で液体なのに石油ガスとはこれ如何に。石油、というか原油は利用する前に蒸溜によってガソリンや軽油、重油などいろいろな成分に分けられるのですが、その行程で生じるガスが石油ガス、という訳です。石油ガスの成分は低級アルカンのうち特にC3のプロパン、そしてC4のブタンです。C5のペンタン以降は常温で液体になるので、石油ガスは比較的液体に近いガスと言いましょうか。そのためある程度圧力をかけるだけで液体になる。実際ボンベに加圧して詰めると液化し、ボンベの中に大量のガス(というか液)を保存できる点で、各家庭に配送するという用途に向いているのです。

 ではなんでLPガスのことをプロパンガスと呼ぶのでしょうか。(ブタンガスの立場は?)実は家庭用のLPガスは主成分がプロパンガスになるように調整されているのです。

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こちらは本学八王子キャンパスの近くにあるラーメン屋さんに置かれたプロパンガスのボンベ。プロパンガスは都市ガスよりも発熱量が高いので中華料理の様に高い火力が必要な場合に好んで用いられるのだそうです。

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2021.12.08

『ビジネスホテルで白米を調理する方法』についての捕捉(片桐教授)

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 12月6日の江頭先生のブログで、私のよく使っているフレーズを取られてしまいました。

このブログの内容を不用意に拡散しないように。<中略> 他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。

「やられた」と思いました。さすが江頭先生です。

 廊下での立ち話でそのブログの内容、『ビジネスホテルで白米を調理する方法』について立ち話をしました。

 もう40年以上前の、大学生のころ、私は地域ユネスコの主催する夏休みの小中学生のキャンプのアドバイザー(相談員)をボランティアで行なっていました。業務は小中学生を大井川の中流域の河原のキャンプ場まで引率し、テントを張る指導、夕飯を作る指導、その後キャンプファイアーの準備や指導、そして、その後に小さなたき火の周りで寝ずの番。そこで怪談を語り、夜中にひとりでトイレに行けなくなった子の付き添い、などでした。

 この経験のおかげで、私は飯ごう(今はメスティンと呼ぶそうですね)という道具でたき火を使ってご飯を上手に炊けます。その準備で仕入れた知識のひとつに、少量のご飯を大きな飯ごうを使って炊く方法,というものがありました。出典は確か誠文堂新光社の「楽しいキャンピング」という雑誌体の本ですが、昔のことなのでうろ覚えです。

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2021.12.07

ボンベの容量いろいろ(江頭教授)

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 このブログを読んでいるあなたが都市ガスの供給される地域に住んでいるならボンベというものにあまりなじみがないかも知れません。でも都市ガスのガス管がない地域に住んでいる人にはLPガスボンベは必需品ですよね。他にも病院で酸素ボンベが使われているところを見たことがある人もいるでしょう。

 大学の、それも化学系の学科であればもっといろいろなボンベが使われています。ではそのボンベにはどれくらいのガスが入っているのでしょうか。

 私が学生の頃にはボンベには大型の「7立米(りゅうべ)のボンベ」と小型の「1立米(りゅうべ)のボンベ」がある、と教わったものです。あ、「立米(りゅうべ)」はm3のこと(詳細はこちらの記事で紹介しています)。いくら大型と言っても7m3のボンベというのはでかすぎ(1m × 1m × 7mですもんね)。実際にはガスは150気圧程度に圧縮されていて体積も150分の1に縮んでいますから、だいたい46.7Lという計算になります。これは高さ約1.5m、半径25cm程度の円柱のボンベで47L型と呼ばれます。一方で「1立米(りゅうべ)のボンベ」は高さ約1m、半径15cmの10L型のボンベのことで、これに100気圧でガスを充填すれば(大気圧で)1m3のガスを詰めることができます。

 ボンベは鉄製の肉厚な容器ですからかなりの重く、47L型は40kg以上の重さです。小ぶりな 10L型でも10kg以上。では、この中に詰まっているガスはどのくらいの重さなのでしょうか。

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これは病院で使われる10Lの酸素ボンベです

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2021.12.06

ビジネスホテルで白米を調理する方法(江頭教授)

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 こういう記事は新聞社としてどうかと思うんですよね。いや、朝日新聞社Digitalの12月2日のこの記事です。海外から帰国した人がコロナウイルスのオミクロン株の水際対策で隔離措置になった。そのときの食事が「カップ麺と白米」であんまりだ、というのです。

 これはおかしいでしょう。写真をみるとカップヌードルとご飯。カップヌードルはカップ麺で良いですがご飯は白米じゃないですよね。「白い米の飯」という言い回しがある様に米を炊いたのが飯。もっと言うと、ここで「白米」という言葉は「炒飯」や「赤飯」のように混ぜ物があるご飯と対比して、なにも入っていないご飯という意味なのでしょうが、本来は白米は玄米との対比で使われる言葉です。

 まったく困った記事です。ホテル(おそらくビジネスホテル)の部屋の入口に白米(本当に炊いていない米)が置いてある、というシュールな絵柄のインパクトがあまりに強烈だったので、つい「ビジネスホテルで白米を調理できるか」真剣に考えてしまったじゃないですか。

 記事の中には

ホテルの部屋には電子レンジがなかったため、冷たい白米を口に運んだ。カップ麺は部屋で湯を沸かしてすすった。同じホテルで隔離生活を過ごす知人からは、浴槽に湯を張り、白米の入った容器ごと温めたと聞いた。

とあります。電子レンジはなし。でもお湯が沸かせるというのですからお茶をいれるためのケトルはある様ですね。

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2021.12.03

俳句とブログ(江頭教授)

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 以前、他の大学に居た頃の話です。コロナなんか無かった時代ですから、卒業生主催の謝恩会や職員の忘年会など、いろいろなパーティーがありました。さて、そこでときどき挨拶にたつ偉い先生、このひとが実に話が長い。ごちそうをまえに待たされるのはつらいし何とかならないか。お恐れながら先生は話が長い、と切り出すのも憚られるし。などと思っていたらその先生がどうやら俳句をはじめた、という噂が。これは良い!きっと話が短くなるに違いない。

 私自身は俳句というものとは全く縁が無いのですが、一体何が良いのだろう。「会心の一句」でこころスッキリ!ライバルと切磋琢磨して「俳句王に、俺はなる!」いや「ゴムゴムの 俺はなるなり 俳句王」とか。(季語がない!)

 まあ、冗談はともかく、俳句をたしなむ人が挙げる魅力の一つに感受性がするどくなって活き活きとした毎日が送れる、ということがあるそうです。俳句というアウトプットを常に意識しているからインプットの感度も上がる。その影響で自分のアクティビティも向上する、ということでしょうか。

 なるほど。そういえばそんなものが私にもあったぞ。そうだ、このブログを書くことだ!

 

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2021.12.02

「誰でもできる英語発表」(江頭教授)

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 私が大学院生だったころ、はじめて国際学会で発表する、という時に先生が「誰でもできる英語発表」という小噺を教えてくれました。

まず念入りにスライドを準備する。

"Next slide please"で新しいスライドが出たら"This is important"と言う。

これをくり返す。

ここぞ、というときに"This is most important!"

これが今から40年くらい前の話で、小噺自体ができたのがそれよりも前。日本の国際化もまだまだ。英語の読み書きはともかく、話すのに抵抗を感じる人が多かった時代の話です。スライドは時間をかけて準備することができますが、発表で話すのは負担だ、という思いからこんな小噺が作られたのでしょう。

 いくら何でもこれを実際にやった人はいないと思います。でも、発表を聴く側の立場で考えると意外と良い発表なのではないか、とも思えます。

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2021.12.01

発表に対して活発に質問する学生はなぜ高く評価されるのか(江頭教授)

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 ここのところ連続で本学応用化学科の1年生の授業での発表について紹介してきました。(「工学基礎実験Ⅱ(C)」と「コーオプ演習Ⅰ」)この機会に「良い発表」というものについてコメントしておきたいと思います。

 大学の授業における「発表」というものは、やはり学会発表がモデルになってると考えるのが普通でしょう。大学の先生は大抵どこかの学会員で学会に参加して発表しているものですからね。

 では学会発表は何を目的として行われるのでしょうか。良い成績を取るため?そんなはずはありません。会場をドッカンドッカン沸かせたい。いや、それは別のところでやってもらいましょう。

 学会に集まってくる研究者達は新しい情報が欲しくてやってくる。だから発表者は聴衆に新しくて価値のある情報を正確かつ分かり易く伝えるべきだ。それができているのが良い学会発表だ。

 たしかに一面的にはそのように思えます。でも、学会の役割はそれだけではありません。

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