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発表に対して活発に質問する学生はなぜ高く評価されるのか(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 ここのところ連続で本学応用化学科の1年生の授業での発表について紹介してきました。(「工学基礎実験Ⅱ(C)」と「コーオプ演習Ⅰ」)この機会に「良い発表」というものについてコメントしておきたいと思います。

 大学の授業における「発表」というものは、やはり学会発表がモデルになってると考えるのが普通でしょう。大学の先生は大抵どこかの学会員で学会に参加して発表しているものですからね。

 では学会発表は何を目的として行われるのでしょうか。良い成績を取るため?そんなはずはありません。会場をドッカンドッカン沸かせたい。いや、それは別のところでやってもらいましょう。

 学会に集まってくる研究者達は新しい情報が欲しくてやってくる。だから発表者は聴衆に新しくて価値のある情報を正確かつ分かり易く伝えるべきだ。それができているのが良い学会発表だ。

 たしかに一面的にはそのように思えます。でも、学会の役割はそれだけではありません。

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 学会参加者は新しい情報以外に新しい発想も求めています。そして、この発想は別の研究者、それも同じ領域を研究している人とのやり取りのなかでうまれるのです。大学の中だとなかなかドンピシャリ同じ領域を研究している人はいないので、学会に集まってくる数多くの研究者の中から同好の士をさがすのです。

 学会とは各自が自分の研究室で生産した「新しい情報」という商品をやり取りする単なる「市場」ではありません。ですから、その学会のメインのコンテンツである「学会発表」も「新しい情報」のプレゼンテーション以上のものであるべきです。これは研究者同士のやり取り、つまり発表に際しての質疑応答がいかに活発で創造的であるか、も発表の善し悪しの大切な要素なのだ、ということを意味しています。「良い発表」は発表者の努力だけでは完成しません。質疑応答に参加する聴衆にも良い発表にする責任があるのです。

 さて、大学の授業における「発表」に戻りましょう。学生諸君は研究者の様には「新しい発想」を求めていないかも知れません。成績評価、という目で見れば「新しい発想」の有無・善し悪しを判定することは極めて困難ですから、直接的な意義を感じることも難しいでしょう。だからといって先生としては「新しい発想」という要素を外したくない。

 新しい発想は活発な議論から生み出されます。活発な議論が必ずしも新しい発想を導くとは限らないのですが、ともかく活発な議論がなければ新しい発想も生まれようがありません。そして議論の活発さなら客観的に確認できる。望むらくは「発表会では活発な議論が行われるべきだ」という規範が学生諸君に内面化され、いつの日にか新しい発想に結実せんことを。

 こう考えて先生たちは活発な質疑を行う学生を高く評価するのですね。

江頭 靖幸

 

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