LPガスは実は液化プロパンガスの略称ではなくて液化石油ガスの略称なのだけれど家庭用のLPガスの主成分はやっぱりプロパンガスだって知ってましたか?(江頭教授)
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「電気、水道、ガス」と並べて言われるようにガスというのは生活のためのインフラの一つとなっています。ガス管を通じて供給されるガスを都市ガスと呼びますが、この都市ガスが整備されていない場所で利用されるのがボンベに入ったガス。LPガスです。
この「LPガス」ですが、「プロパンガス」とも呼ばれています。となれば「LPガス」は液化プロパンガスの略称で、Liquified Propane Gas の頭文字だと思うところです。恥ずかしながら私もそう思い込んでいた時期がありました。でも本当は Liquified Petroleum Gas (液化石油ガス)の略称です。
石油は油で液体なのに石油ガスとはこれ如何に。石油、というか原油は利用する前に蒸溜によってガソリンや軽油、重油などいろいろな成分に分けられるのですが、その行程で生じるガスが石油ガス、という訳です。石油ガスの成分は低級アルカンのうち特にC3のプロパン、そしてC4のブタンです。C5のペンタン以降は常温で液体になるので、石油ガスは比較的液体に近いガスと言いましょうか。そのためある程度圧力をかけるだけで液体になる。実際ボンベに加圧して詰めると液化し、ボンベの中に大量のガス(というか液)を保存できる点で、各家庭に配送するという用途に向いているのです。
ではなんでLPガスのことをプロパンガスと呼ぶのでしょうか。(ブタンガスの立場は?)実は家庭用のLPガスは主成分がプロパンガスになるように調整されているのです。
こちらは本学八王子キャンパスの近くにあるラーメン屋さんに置かれたプロパンガスのボンベ。プロパンガスは都市ガスよりも発熱量が高いので中華料理の様に高い火力が必要な場合に好んで用いられるのだそうです。
圧をかけると液化してボンベの保存しやすい。これはプロパンよりもブタンの方が有利です。でも、行きはよいよい帰りは怖い、とでも申しましょうか。ブタンには取り出す時に問題があるのです。室温付近で液化したプロパンの蒸気圧は10気圧くらい。これにくらべてブタンの蒸気圧は3気圧程度しかありません。利用時に家庭の配管にガスを流し込むときのことを考えるとブタンの圧力では少し物足りないのですね。
もちろん、ブタンの常温でも圧力がそれほど高くならない、という特徴が有利になる利用局面もあります。いわゆる100円ライターの燃料はプラスチックの容器でも閉じ込めが可能です。またブタンの体積当たりの発熱量が大きいことから工場でも利用されています。
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