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ビジネスホテルで白米を調理する方法(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 こういう記事は新聞社としてどうかと思うんですよね。いや、朝日新聞社Digitalの12月2日のこの記事です。海外から帰国した人がコロナウイルスのオミクロン株の水際対策で隔離措置になった。そのときの食事が「カップ麺と白米」であんまりだ、というのです。

 これはおかしいでしょう。写真をみるとカップヌードルとご飯。カップヌードルはカップ麺で良いですがご飯は白米じゃないですよね。「白い米の飯」という言い回しがある様に米を炊いたのが飯。もっと言うと、ここで「白米」という言葉は「炒飯」や「赤飯」のように混ぜ物があるご飯と対比して、なにも入っていないご飯という意味なのでしょうが、本来は白米は玄米との対比で使われる言葉です。

 まったく困った記事です。ホテル(おそらくビジネスホテル)の部屋の入口に白米(本当に炊いていない米)が置いてある、というシュールな絵柄のインパクトがあまりに強烈だったので、つい「ビジネスホテルで白米を調理できるか」真剣に考えてしまったじゃないですか。

 記事の中には

ホテルの部屋には電子レンジがなかったため、冷たい白米を口に運んだ。カップ麺は部屋で湯を沸かしてすすった。同じホテルで隔離生活を過ごす知人からは、浴槽に湯を張り、白米の入った容器ごと温めたと聞いた。

とあります。電子レンジはなし。でもお湯が沸かせるというのですからお茶をいれるためのケトルはある様ですね。

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 ケトルがあるなら話は早い。米を研いで水と一緒にケトルにいれて加熱。沸騰させてご飯を炊けば良いのです。水を米よりも過剰にいれて8分程度沸騰させたあとケトルの電源を切り、余ったお湯を捨て、その後さらに8分ほど蒸らすと良いと思います。ケトルは水を湧かすためだけに作られていますから、水分が少ない状態で加熱すると沸騰によって撹拌されない部分が焦げてしまう可能性が高いでしょう。

 ケトルが無い場合はどうでしょうか。お風呂用に供給される温水だけでご飯を炊くのは難しいですね。炊飯という作業は「お米の中のβデンプンをαデンプンに転移させるための熱処理」ですが、100℃にかなり近い温度が必要です。(高い山では気圧が低くて炊飯が巧く行かない、などという話がありますよね。)

 昔のビジネスホテルならガスストーブなど炎が有ったかも知れませんが、最近ではエアコンしかないでしょう。となればケトルが無い場合、ビジネスホテルの室内で100℃に近い温度を達成できるものはなさそうです。これじゃあ白米は食べられないな。

 だが、ちょっと待ってほしい。

 熱によって物理的に変性できないなら化学的な方法はどうでしょうか。ビジネスホテルの一室に化学薬品なんかないというのが一般の意見でしょう。でもホテルにはなくても、私達人間の体にはいろいろな反応を触媒する物質、酵素があります。体を切り刻んで酵素を取り出さなくても、人間の唾液の中にはアミラーゼという酵素があることが知られています。このアミラーゼをつかって白米のデンプンを分解、糖化させれば物理的な炊飯とは違っても「白米を調理」することができるのではないでしょうか。

 要するに「口噛み酒」を作れば良いのです。映画「君の名は。」(最後に「。」が付いている方。2016年のアニメ映画)に出てきたあれです。ただ発酵してお酒ができるまではいささか時間かかるのがネックですね。いや、そのまえにこれは密造酒のような。

 このブログの内容を不用意に拡散しないように。必要なら必ず裏をとり、引用文献などを読んで自分で確認し、理解し、検証してから、自分の言葉として発信しましょう。他人のことばをそのまま鵜呑みにするのは極めて危険な行為です。


江頭 靖幸

 

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