トイレットペーパー騒動(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
普通に「トイレットペーパー騒動」といえば1970年代にオイルショック時に起きたトイレットペーパーの店頭での品不足を原因とした消費者パニックのことですが、今回は少し別のお話。私が大学の講師になって学科会議に顔を出すようになった頃に印象に残ったエピソードです。
私の所属する学科は一つの建物に集まっていたのですが、その建物のトイレでトイレットペーパーがない、という状況が頻繁に起こるようになっていました。私自身もペーパーを使い切っても予備が置かれていない、はては予備どころかペーパーが全くない、ということが次第に頻繁になってゆきます。おっと、ここはペーパー切れだ、といって他のトイレに行っても同じこと。うーん、これは何かおかしい。
さて、これが学科会議で話題になると、私も、私も、と皆さん心当たりがある様子。
事務に言ってちゃんとペーパーを出してもらわないと。
実は既に事務に行った先生がいたのでした。
いつも通り、いやいつも以上にペーパーを出しているのに、この状態。事務方も困惑している。
これは一体...。
そこは大学の先生たち。理論的な推理が始まります。
ペーパーの出し方が以前と同じなのに不足するとすれば誰かが持ち帰っているに違いない。
建物の規模から考えてその量はかなりのもの。1人で使うには多すぎるはずで、おそらく転売して現金化しているのではないか。
要するに泥棒です。もちろん、名探偵ではないのでこれだけでは犯人を見つけることはできません。でも解決策はある。
転売が目的なら売れないようにすれば良いだろう。業務用のペーパーには袋がかかっているが、これを剥いでしまえば現金化できなくなるのではないか。
学科長の命令一下、トイレに予備のペーパーを置く際には袋を剥ぐことに。驚くべきことに、これでペーパー不足問題はすっきりと解決したのでした。
なるほど、使用価値を残して商品価値を毀損したわけだね。
大学教授らしい評価がこの顛末の締めくくり、のはずだったのですが、この話には別の落ちがあります。
このエピソードが余りにも面白かったのでいろいろな人に話したのですが、その1人、私の父親からこんな話を聞きました。
本当のトイレットペーパー騒動の時にも同じようなことがあったよ。
父は当時、銀行に務めていたのでした。
来客の使うトイレのペーパーが持ち去られる様になったんだ。お客様相手だから対応が難しかったけど、結局、ペーパーの側面に芯から外に向かってマジックで線を書くようにしたら解決したよ。
なるほど、「使用価値を残して商品価値を毀損する」のは先行事例があったのか。
いやいや、当時のことだから換金目的で持ち帰っていた訳ではないよね。
これはね「我々はトイレットペーパーの持ち去りに気がついているぞ」というメッセージなんだよ。リスクを示してやれば行動も変わるからね。
うーん、予備のペーパーの袋はぎも実は犯人に対するメッセージとして機能していたのかも知れません。理系の大学教授より銀行員の方が人間心理には詳しいのかも知れませんね。
「日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事
- 英文字略称(片桐教授)(2019.03.13)
- 地震と夏みかん(江頭教授)(2019.03.11)
- 追いコンのシーズンはご用心(片桐教授)(2019.03.07)
- Don't trust over 40℃!(江頭教授) (2019.03.06)
- 「加温」の意味は「温度を加える」?(西尾教授)(2019.03.04)