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2022年1月

2022.01.31

期末試験終了(江頭教授)

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 東京工科大学八王子キャンパスの後期期末試験は1月21日の金曜日からスタートし先週の1月28日の終了しました。

 スケジュールとしては2月2日まで確保されていたのですが、今年は無事に試験を終えることができました。大雪の影響で終了日が繰り延べになった年もあったのですから、まずはほっとしているところです。

 本学の期末試験は通常、その授業が行われている時間に行われています。(いえ、試験の時間60分ですが普通の授業は100分なので「時間」といっても本当の何時何分というではなくて「時間割」のなかの時間という意味ですが。)ですが、今回は一部の授業、とくに1限の授業を別時間に移動させて電車の混雑する時間を避けるように日程が組まれていました。これは感染症対策、という意味もあっての措置だそうですが、実際に1限の授業を担当している立場からすると「1限の授業がないとこんなに楽なんだ」というのが素直な感想。教員がこう感じるのですから学生諸君はなおさらかも知れません。

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2022.01.28

体温チェックで「再試行してください」を避けるには(江頭教授)

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 コロナ禍が始まってからあちこちで見るようになったスマホの様な形の体表面温度測定器。本学にも導入されていて正門から大学キャンパスに入るときにはこれで体温チェックすることになっています。

 私は正門から歩いてキャンパスに入ることが多いので大学に行くたびにこの検温装置を使うことになります。ありがたいことにコロナ禍が始まってからこっち、発熱したことがない(いや、2回目のワクチン注射の時は少し体温が上がったか)ので、いつも「表面温度正常」という音声とともに正門を通過します。

 ところが最近これに引っかかることが多い。別に熱が出ている訳ではありませんが「再試行してください」と言われるのです。

 これは一体どうしたことか。体温が高いなら、なんかそれとわかるメッセージが出るはず。やり直せというのはどういうことか。そう言えばこのメッセージ、最近寒くなってから頻繁にでるのだが。ひょっとして体温としては通常考えられないような低い温度がでているために警告がでるのではないか。

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2022.01.27

「研究室配属に関する説明会」を開催しました。(江頭教授)

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 そうか、今のうちに4年生から始まる卒業研究を行う研究室を決めないとね。授業が終わって春休みになってからだと説明会を行うタイミングが難しいからいっそ試験期間終了の前に、という訳か。

 ええ確かに。でも実はこの説明会、実は2年生向けなのです。

 応用化学科では2年生で研究室に配属されます。でも配属されるのは2年生の3月4日の春休み中。実質的には3年生の初めからの配属となります。

 「えっ?3年の初めって早くない?」その通りですね。実はこれ、本学工学部の特徴であるコーオプ教育との関係で決まりました。応用化学科の学制諸君は3年の前期にコーオプ実習として学外での研修を行うことになります。従って、3年前期、学生諸君は大学から離れて学外に出る時間が長くなります。早期の配属を行うとしたら3年前期には無理。夏休みを過ぎれば3年後期になってしまいます。ということで、少々早いですが2年後期末のこの時期に説明会となったのです。

 

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2022.01.26

カーボンニュートラルを実現するイノベーションとは(江頭教授)

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 気候変動の問題を考えるとき、カーボンニュートラルな社会を実現することは喫緊の課題でしょう。ではカーボンニュートラルな社会を実現するのに必要なイノベーションとはどのようなものなのでしょうか。

 一番受け入れられ易いのは「無公害で安価な無尽蔵のエネルギー源」の開発、というイノベーションでしょう。いままで世界中に作られた化石燃料による発電所をこの「無公害で安価な無尽蔵のエネルギー源」での発電所に入れ換える。貧しい国には新たな発電所を造る必要があるので「安価」であるべきでしょう。天候や地形の影響を受けないためには「無尽蔵」でなくては。そして気候変動以外の問題の原因とならない「無公害」なエネルギー源であることが求められるわけですよね。

 さて「無公害で安価な無尽蔵のエネルギー源」がどんなものか。予想も付かない(だってイノベーションだもん)のですが、少なくとも電力の供給はこれでOK。車に乗せるのが難しいなら電気自動車への切換は必要でしょうか。航空機はもっと難しそうですが、いざとなったら合成燃料をつくれば今の航空機がそのまま利用できます。いや、合成燃料を大量生産すれば電気自動車もいらないか。だってこのエネルギーは無尽蔵ですからね。

 ポイントは現在の生活スタイルや、すでに作られた車や飛行機、家電などなど、なにも新しくする必要がないこと。実のところほとんどの人はカーボンニュートラルな社会が実現されたことに気が付きもしないでしょう。一部の専門家が問題を解決してくれる、一般人には無関係で無関心でも構わない、というわけです。

 イノベーションの力によって「無公害で安価な無尽蔵のエネルギー源」が実現されれば気候変動問題は解決です。

 ♪できると良いわね。できるとも。

 いつ頃できるの、いつ頃よ。

 そいつがわかれば苦労は無い。♪

いや、そんなイノベーションが起こらないとは断言できませんが、だからと言ってイノベーションが起こって「無公害で安価な無尽蔵のエネルギー源」ができるのを待っているだけ、というわけにもいきますまい。

 ではどうするのか。
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2022.01.25

続「半導体不足」を実感した話(今度はもっと深刻!)(江頭教授)

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 世は正に大「半導体不足時代」

という話を前回の記事で書いたのですが、またまたこの関係のトラブルを経験することに。今度はもっと深刻です!

 トラブルがあったのは給湯器の浴室リモコン。何時の頃からか表示パネルの文字が明滅するようになってスイッチ操作もままならなくなりました。これは配線が切れているのかも。そう思って管理会社に連絡すると早速メンテの人が来てくれました。給湯システムをチェックして曰く。

 これは浴室リモコンの基板の問題ですね。接続はちゃんと12V出てますよ。

そうか。基板の交換か。在庫があれば良いけど。

 メンテの人が部品手配のためにメーカーの人と電話をしています。話を聞くと、

 すいません。部品がないそうです。

そうか、半導体不足の問題がここにも。

 と、思ったらこの給湯器自体が廃番になっているそうです。設置が2004年。もう18年ものなので致し方ないか。

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2022.01.24

「半導体不足」を実感した話(江頭教授)

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 2021年度後期の授業、9月に始まった時点ではオンライン実施でした。その間、授業では黒板への板書の代わり、謂わばオンライン黒板として iPad+ApplePencile を使っていました。その後、対面授業に移行したのですが、オンライン黒板には、教室のどの位置からでも同じように見えること(手元のPCでも確認できますからね)、書いた内容が残ること(「もうここ消しても良いかな」という必要がない)といったメリットがあります。これは対面授業でも使い続けよう。そう思っていたのですが、意外と厄介なことに気が付きました。

 授業の間、普通は ノートPC を使ってスライドショーを見せながら授業をしているのですが、途中で詳しい説明が必要になると iPad+ApplePencile をつかったオンライン黒板に切り換える。こんな使い方だと、ノートPCからiPadに切り換える手間が意外と気になるのです。

 さてどうしよう、と考えて閃きました。そうだ、タブレットとしても使えるノートPCを使って、スライドショーもオンライン黒板も一緒の端末で動かせば良いんだ。

 そう考えて選んだのが下の写真の ThinkPad X12 Detachable です。私は ThinkPad の愛用者、というかトラックポイントの愛用者なので必然的これが選択肢になるわけです。

 で、このPCを発注したのが11月の3日。でもまだ私の手元に届いてはいないのです。

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2022.01.21

ワクチンパスポート「新型コロナワクチン接種証明アプリ」をインストールしてみた 海外用編(江頭教授)

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 「ワクチンパスポート」こと「新型コロナワクチン接種証明アプリ」をインストールをしたお話は以前こちらで紹介しました。その際、接種証明書が海外用に分かれていて、結局登録したのは国内用だけ。これは海外用ワクチンパスポートには本当のパスポート(旅券)が必要なのに、このコロナ禍の間に期限切れになっていたからです。

 これはいかん、ということで先日新しいパスポートを発行したので、今度は満を持して「海外用」のワクチンパスポートに挑戦してみました。

 今回は「海外用」を選択して登録をスタート。

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2022.01.20

今日は授業開講予備日です(江頭教授)

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 お正月休みが終わって20日が過ぎました。実は今学期の授業は昨日(1月19日)で終了です。

 新年に入って最初の授業が5日の水曜日。その水曜日から金曜日までは2回分の授業がありました。月曜日と火曜日は1回分。なので新年に入って2週間で授業終了、となるところだったのですが実は10日の月曜日は休日だったのです。

 10日の月曜日も「休日登校日」にしてしまえば早く終われたのですが、その日は「成人の日」。学生諸君の中にはまさに主役の新成人たちも多いのですから、さすがにこの日はお休みに。ということで新年にはいって1回だけの月曜日の授業はやっと17日に実施、となったのでした。

 その後の18日火曜日はクォーター制の授業だけ実施。19日は補講日で、今日は「授業開講予備日」となるわけです。

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2022.01.19

これが最後のパスポート(江頭教授)

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 「新型コロナワクチン接種証明アプリ」通称「ワクチンパスポート」をインストールした話はこちらで紹介しました。国内用の接種証明は無事表示できるようセットアップが完了したので、今度は海外用にトライしよう。そう思って手順を確認するとパスポート(これは本当のパスポート、旅券のことです)が必要だとか。

 パスポートか、えっとどこに置いてたっけ。ここ最近海外に行くこともできなかったのですぐには見つからない。やっと見つけると、なんと昨年の10月で期限切れになっていました。

 これはいけない。このままにしておくといざ海外に行く、となったときに慌てることになるに違いない。ということで、新規にパスポートの発行申請をすることにしました。

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2022.01.18

テレビ番組への感想 NHK 「チコちゃんに叱られる」(片桐教授)

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 正月の夜に「ぼ〜っと」テレビを見ていたら、テレビから「ボ〜ッと生きてんじゃないよ」と叱られた。

 「チコちゃんに叱られる」という番組は、いろいろなうんちくを教えてくれる情報バラェティ番組です。つかれた時に「ぼ〜っ」と見るのに適しています。

 先日、その番組で面白いネタをやっていました。「シャボン玉を割らずに手でバウンドさせる」というものです。

 軍手をはめてシャボン玉を紙風船のようにポンポンと手で弾ませることができることを、私は知りませんでした。

 この回では東京理科大学の川村教授が専門家として、シャボン玉の割れる3つの理由、①ホコリやチリにあたる、②水分の蒸発、③重力により液が偏る、ことを解説し、それを防ぐシャボン玉液を使い軍手をはめた手の上で17回もバウンドさせていました。

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2022.01.17

コーオプ演習Ⅰ最終発表会(江頭教授)

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 本学工学部の特徴の一つ、コーオプ教育。その最初の授業と位置づけられるのが1年生後期の授業「コーオプ演習Ⅰ」です。

 おっと、先週と同じ書き始めになってしまいました。それもそのはず。先週の記事はこのコーオプ演習Ⅰ 最終発表会の「予選」について。今回は「本選」についてのご紹介です。

 学生諸君への課題は

サステイナブル社会を実現するために克服すべき問題をデータなどを用いて論理的に示し、さらに目指すべき理想的な姿を具体的に示す

 で、一週間前の予選で選抜された班の発表でした。

 「ゴミの資源化」「生分解性プラスチック」「地熱発電」「マイクロ水力発電」などいろいろなトピックがありましたが、短い時間の中でどれもよく調べていたと感じました。

 中には具体的な提案に踏み込んでいる班もあって、これはうれしかったですね。自分達のアイデアの現実性を評価してみる、という視点をもって今後物理化学など関連教科の勉強すれば有意義に学修が進められるのではないか、と期待してしまいます。

 

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2022.01.14

吸光係数の単位のはなし(江頭教授)

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 今回は前回の記事で紹介した学生実験の「ブリリアントブルー」による吸光係数を算出する課題、について補足しておきましょう。

 分光光度計でブリリアントブルーの水溶液による光の吸収を測定するとき、水溶液の濃度が高いほど、水溶液の中を光りが通る長さ(光路長)が長いほど光の吸収が大きくなります。ここで言う「光の吸収」は単純に考えると「水溶液の中を光が通り抜ける間に吸収されてしまった光の割合」つまり吸収率(=1-透過率)のように思えるのですが、前回説明したようにLambert-Beerの法則が適用されて「透過率の対数にマイナスを付けたもの」(これを「吸光度」と呼びます)になります。

 この吸光度が「水溶液の濃度と光路長の積」と比例する。その比例係数が吸光係数なのですが吸光度の次元は無い、というか次元は1なので吸光係数は「水溶液の濃度と光路長の積」の次元の「逆数」になるのです。水溶液の濃度としてモル濃度、mol/L を用い光路長を cm で表すとモル吸光係数(モル濃度で定義したので「モル」を頭に付けています)の単位はL・mol-1・cm-1となります。

 では、この単位で表したモル吸光係数はどのくらいの大きさになるのでしょうか。

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2022.01.13

吸光係数とランベルト・ベール(Lambert-Beer)の法則(江頭教授)

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 本学応用化学科の一年生の学生実験では光吸収の実験も含まれています。このなかで学生さんたちは以下のブリリアントブルーという分子のモル光吸収係数をデータから算出してレポートに記述することになっています。今回、提出されたレポートをみて思ったことを書いておきましょう。

 まずモル吸光係数とはなにか。実験テキストではまずランベルト・ベール(Lambert-Beer)の法則の説明から始めて、透過率の対数にマイナスを付けたものが吸光度であること。吸光度は吸光分析器で光が通る長さ(光路長)と対象分子のモル濃度に比例していて、その比例定数をモル吸光係数とよぶ、と説明しています。

 この説明はモル光吸収係数を計算する立場(学生さんの立場ですね)から分かり易い様に書かれているわけですが、逆になぜこの計算でモル光吸収係数という分子に固有の物性値が算出されるのか、という疑問もあるのではないでしょうか。もっと具体的に言うと、いろいろな吸光光度計でいろいろな濃度のブリリアントブルー水溶液の光の透過率を測ったとしても、どんな場合でも「透過率の対数にマイナスをつけて光路長とモル濃度で割れば」一定の値になる、それは何故か?ということですね。

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2022.01.12

修士(博士課程前期)中間審査会が開催されました(江頭教授)

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 先週の土曜日、1月8日に表題の「修士(博士課程前期)中間審査会」が開催されました。昨年はオンライン実施となったこの審査会、今回は対面で実施することにしたのですが、新型コロナウイルス感染症が再度拡大してきたことから感染対策を厳にして行うことに。

 このため発表会は前半Aパート、後半Bパートに分割されました。会場も広く取ることで写真の様に以前の発表会よりも人がまばらな感じになってしまいました。また、例年は発表者の学生さんはポスター発表に最低限に3人の教員のコメントをもらうことが義務づけられていましたが、今年は2人に引き下げに。それでも割り当てられた発表時間では不足となり、あとで予備の時間(パートCですね)を当てることになりました。

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2022.01.11

コーオプ演習1 最終発表会予選(江頭教授)

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 本学工学部の特徴の一つ、コーオプ教育。その最初の授業と位置づけられるのが1年生後期の授業「コーオプ演習Ⅰ」です。授業内容は最新の工学・技術的トピックスについて調査し、発表すること。グループワークを中心とした授業で、

サステイナブル社会を実現するために克服すべき問題をデータなどを用いて論理的に示し、さらに目指すべき理想的な姿を具体的に示す

という課題に対して調査を行い、調査結果に基づいたディスカッションの内容を発表します。

 先週の金曜日、この「コーオプ演習Ⅰ」の最終発表会の予選が開催されました。

 今年のこの授業、グループの数は16班となっています。全グループが発表するとなると1班10分でも160分。これでは1コマの授業に収まらないので会場を二つに分けてパラレルセッション形式で行われることとなりました。また、今回新しい試みとして授業を手伝ってくれている学生さん(SA、つまり Student Assistant の人たち。授業を受けている1年生からみると先輩ということになります。)たちに司会をおねがいすることになりました。

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 最終発表予選の前日はあいにくと雪。欠席する人が多いかと心配していたのですが、一部の人が遅刻するていどで済みました。

 

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2022.01.10

「ファクター」って何(江頭教授)

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 「ファクター」という言葉は日本語になっていると言って良いのでしょうか。私としては、少し難しい「横文字」という程度には広く知られている言葉ではないかと思います。最近(?)話題になった山中伸弥教授による「日本で新型コロナウイルスのまん延を防いでいる要因をファクターXと呼ぼう」という提案でも特に説明無しに「ファクター」という言葉が使われています。

 山中教授のファクターXにある「ファクター」ですが、日本語にすれば「要因・要素」といった意味です。ファクターXは日本語にすれば「未知の要因」といったところですが、これだと一つの言葉として認識されにくいのかも知れません。

 話変わって今回は生物学ではなくて化学における「ファクター」の話をしたいと思います。具体的には滴定の実験の際に用いられるファクターのお話し。

 まず、滴定では濃度が未知の溶液Aを一定の量とり、それと正確な濃度のわかっている溶液Bを反応させ、ちょうど反応が終了した時点での溶液Bの体積を求めます。それぞれの溶液に含まれていた物質A、Bの物質量が同じ(反応によっては1:1以外の簡単な整数比)になっていることから未知試料の濃度Aを求めることができます。ここで「正確な濃度のわかっている溶液B」はどうやって作るのか、という問題があるのですね。

 固体の試薬を測り取ってその重さを正確に測定する。それを溶かしてメスフラスコで正確な体積に希釈する、というのが標準的な操作です。ただ、目標の濃度を設定してメスフラスコの体積と試薬の重量を決めても、このやり方だと必ずしも目標通りの濃度にはならない。これは試薬の重量を完全に目標通りにはできないから。とは言っても1割2割ずれるという程ではなくてせいぜい数パーセント程度のずれとなるはずです。

 例えば 0.01 mol/L の溶液を目標としたとしましょう。この溶液は毎回作るたびに 0.01 mol/L に近い濃度になるのですが、やはり回ごとに少し異なる濃度になってしまいます。

 この場合、作った溶液の実際の濃度を目標の濃度で割ったものをファクターと呼んでいます。たとえば 0.01007 mol/Lの溶液は「濃度 0.01 mol/Lの溶液でファクターは1.007です」という言い方です。

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2022.01.07

雪の八王子キャンパス(江頭教授)

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 昨年2021年、この冬は雪が降らないなあ、などと思っていたら雪がちらほらと。天気雨ならぬ天気雪か。これが年末の30日か31日だったかと思います。八王子キャンパスでは、というか東京では昨年中はほとんど雪が降らなかったわけですが、昨日(2022年1月6日)には一転、東京都をふくむ関東南部の広い地域で「大雪注意報」が出されたとか。本学八王子キャンパスでもお昼ごろから雪が降り始めてご覧の通り。

 以下の写真をとったのは1月6日の16:20頃。建物の屋根や芝生には雪が積もりましたが人が歩く歩道の雪は溶けているようです。

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2022.01.06

「サステイナブル工学プロジェクト演習」最終報告会本選(2021)(江頭教授)

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「サステイナブル工学プロジェクト演習」については本ブログでも何回かとりあげています。こちらこちら、そしてこちら 

 昨日、1月5日には半年、というか後期14回の授業の最終回として「最終報告会」の本選が開催されました。本選、とあるのは先週予選を行い選抜された班による発表会であること(これは本選の本の部分)と、今回の選ばれた班が学部長賞で表彰されること(これが本選の選の部分)によります。

 「サステイナブル工学プロジェクト演習」は本学工学部の3年生によるグループワーク形式の授業です。特徴としては3学科合同の授業であること。異なる学科の学生が集まってグループワークを行うことになっています。三学科合同で約300人、通常授業は二クラスに別れ、それぞれ28班、30班でのグループワークとなります。

 予選では全体で58班がグループワークの成果を8会場に分かれて発表し、その中から10班が今回の本選に進みました。

 発表の内容は工業製品やサービスのLCAによる評価と機能的・経済的価値を統合化した環境効率の算出です。さらに対象とした工業製品やサービスに対する改善提案を行い、その環境効率への影響を検討しました。LCA評価では環境ラベル「エコリーフ」に登録さている公開情報を利用して実際の製品に近い条件での評価をおこなっています。一方、改善提案については各班のメンバーが自分の学科のバックグラウンドを生かしつつ自由に発想しています。

 

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2022.01.05

二酸化炭素の環境基準は何ppmが相応しいか(江頭教授)

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 前回の記事で温暖化問題の大きな割合を占めている化石燃料の利用をフェードアウトさせるには国家による人為的な介入が必要だ、という考えを説明しました。では、その「人為的な介入」とは具体的にどのようなものになるのでしょうか。

 政府がいきなり「今後化石燃料は使わない」と宣言したとしても、それだけでは何の影響もないでしょう。化石燃料を利用しているのは別に政府ではなく、民間の企業と一般の国民なのです。企業や国民が政府に「忖度」してくれるとはとても思えません。やはりここは何かの手法で強制しなくては。

 目的を企業や国民の活動を制限して有害な物質を大気に排出させないこと、と考えるとこれには先例があることに気が付きます。そう、昭和43年、1968年代に公害問題を解決する際に作られた法律のひとつ。大気汚染防止法です。化石燃料の燃焼から発生する硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)を規制する法律ですから、これに二酸化炭素の期制も加えてはどうでしょうか。

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2022.01.04

化石燃料はどのようにフェードアウトするのか(江頭教授)

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 化石燃料はいつかは枯渇してしまうから、他のエネルギー源が必要だ。この考えはおそらく1970年代半ばの石油危機によって日本中に、いえ世界中に広まったものだと思います。当時考えられていた「他のエネルギー」は原子力で、短期的には核分裂、長期的には核融合でした。核融合が実用化されればエネルギー問題にはけりが付く。核融合は事実上無尽蔵のエネルギーだ。その様に当時は考えられていたのです。

 その後、チェルノブイリの原子力発電所の事故(1986)の影響でしょうか、原子力は未来のエネルギーの座から滑り落ちてしまいました。その後、未来のエネルギーは空位の状態になってしまったのですが、石油をはじめとしたエネルギー資源の供給は安定していたため、世間の注目がエネルギー問題に集まることはなかったのだと思います。

 その後、1990年代に入ってからでしょうか。温室効果ガスとしての二酸化炭素の問題が注目され始めました。再び、化石燃料からの脱却が必要だ、他のエネルギーが必要だ、という意識が高まってきました。ここで注目されたのは再生可能エネルギーで、太陽電池、風力発電、バイオマスなどがその代表です。

 つまり現在では化石燃料を再生可能エネルギーに置き換えることが温室効果ガス問題の解決だ、という認識が広く共有された状況にあるわけです。では、その置き換えは具体的にはどのように進められるのでしょうか。

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2022.01.03

新年のご挨拶(2022)(江頭教授)

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新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 振り返れば本学、東京工科大学の工学部の一翼を担う応用化学科、その開設は2015年でした。手探り状態の中から新たな学部を構築し、最初の4年間が終わる2019年3月には第一期生を送り出すことで一つの区切りを迎えました。引き続き新たな4年間をスタートさせてホップ、ステップ、ジャンプのステップに当たる段階が始まったのですが、そのすぐ後に、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックという状況を迎えることとなりました。

 日本中の、いえ、世界中の大学にとってこのパンデミックは大きな危機であったと思います。ただ、本学工学部について言えば、この大きな危機が、学部の立ち上げ終がわった段階で、それでいて学部立ち上げの記憶が薄れない間に起こった事は敢えて言えば不幸中の幸いでした。教育の規範のとなる前例が一応は揃っている状態でありながら、その形式のみならず決定の理由まで理解した状態で事に当たることができたこと、これによって状況に応じて柔軟に対応することができたと思っています。

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