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2022年4月

2022.04.29

再録「今は昔のリーマン・ショック」(江頭教授)

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 リーマン・ブラザーズが倒産したのは2008年の9月のことでした。そのとき、たまたま緑化関係の研究仲間の人たちとインドを訪問していたのですが、遅れて合流した人から「リーマン・ブラザーズが破綻して大騒ぎになっている」という話を聞いたのが私にとっての最初の情報だったと思います。金融には関係のない私でもリーマン・ブラザーズの名前は知っていましたから、大変なことが起こった、とは思ったのですが、その影響の大きさを実感したのはずっと後のことです。

 リーマン・ショックの大きさを実感させてくれたのはその後明らかになった世界の温室効果ガスの排出量変化です。リーマン・ショックはエネルギー起源のCO2排出量を減少させるほど甚大な影響を世界経済に与えていたのでした。つまりリーマン・ショックによって工業製品の生産などの実体経済が縮小する、という現象が世界規模で確認されたということです。

 私は、金融の世界でのサブプライムローンとかCDSとか、実態のない仮想的な取引の問題が実体経済に影響を及ぼす、それも非常に大きな悪影響を与えるということが、最初は信じがたく、やがては不条理に感じられる様になりました。東日本大震災のような天変地異があったわけでも、コロナウイルスのような伝染病の流行でもなく、単純に人間側の問題だけでこれだけ大きなことが起こったというのです。しかも、金融業は農業や工業とは違って完全な虚業です。金融によって工業生産や農業生産が影響をうけるというのは「尻尾が犬を振り回す」ようなものではないでしょうか。

 食料や工業製品などの実態のある財を効率的に生産して配分する、市場経済はそのための仕組みだったはずなのですが、これはどうしたことでしょうか。実態のある財の価値とは異なるものが市場における価値(つまりお金)に紛れ込んでいるのではないか。私にとって14年前のリーマン・ショックはそんなことを考えさせる事象でした。

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2022.04.28

SSDのポータブルハードディクスを買いました(江頭教授)

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 しまった、パソコンが壊れてデータがなくなった!なんて経験はありますか?私はあります。ということで、ポータブルハードディスクを準備して定期的にバックアップをとるようにしています。もう随分前からの習慣ですが、最近バックアップするファイルが増えて作業に時間がかかるようになりました。

 多分コロナの影響でしょう。授業のビデオ録画を保存するようになってファイルの容量がぐっと大きくなったのです。だんだん待ち時間が気になってきましたが、さてどうしましょう。そうだ!SSDに替えればよいのでは。

 今まで使っていたのは2.5inchの普通のディスクドライブ、というか機械式の?ディスクドライブを利用したポータブルハードディスクでしたから、SSD(半導体式)のドライブならスピードアップ間違いなしでしょう。

 ということで購入したのが以下の製品。ちょっと奮発して容量2TBのものを買いました。

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2022.04.27

フレッシャーズゼミで実験をしよう!(江頭教授)

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 「フレッシャーズゼミ」は本学全体で行われている一年生向けの授業です。本学固有の授業なのでしょうか、「フレッシャーズゼミ」で検索すると本学のサイトがヒットします。(私の環境のせいも知れませんが。)

 大学に入ると「クラス」というものが無くなってしまい、学生諸君は時間ごとに授業の行われる教室を転々とすることになります。大学で自分の居場所ができるのは研究室に配属された後となります。これが通常の大学のスタイルなのですが、入学から数年の間、居場所の無い期間は大学生にとっていろいろな意味でリスクの多い期間でもあります。

 そこで、本学ではアドバイザー制度を設けて新入生の時点からいわゆる「担任の先生」のような教員を一人一人の生徒に割り当てています。

 フレッシャーゼミはいわばその「担任の先生」が受け持つホームルームの様な授業だ、と思ってください。とはいえ、ホームルームだけで毎週一コマ100分では時間がもったいない。ということでグループワークとポスター発表を行うようにしています。

 グループワークのテーマは基本的には学生さんにお任せなのですが、応用化学科ではここ数年は(コロナの2020年は除いて)授業時間に空いている学生実験室を使ってなにか実験をすることを推奨しています。

 さて、今年度も学生さんを2チームに分けてグループワークをスタート。テーマを話し合ってもらいました。

 先生、カルメ焼きを作りたいんですけど。

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2022.04.26

給湯器とグローバル経済(江頭教授)

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 以前、「続「半導体不足」を実感した話(今度はもっと深刻!)」という記事で家の給湯設備が要交換になり

給湯システムの納期ですが…だいたい4ヶ月くらいです。

といわれた、という話を紹介しました。これが今年2022年の1月のこと。「半導体不足」問題の影響もあって給湯器は全般に納期が遅れているそうです。

 さて、今はもう4月後半なので給湯器が交換されました、という報告かと言えばさにあらず。じつは4月の最初にガス会社さんから電話があって

すいません、まだ納品の見込みがたたなくて。

との話。

 まあ、故障したのが給湯器の浴室リモコンだけだったのでお湯自体は使えているのが救いです。お湯が出ない状態だったら目も当てられません。

 さて、この給湯器の不足、いろいろなところで問題になっているそうです。浴室リモコンなら半導体不足が原因でしょうが、給湯システム全体としては東南アジアにある組立工場がコロナの影響を受けていることが原因だそうです。

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2022.04.25

グローバル経済を実感した日(江頭教授)

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 私が「グローバル経済」というものを意識しはじめたのはおそらく今から30年くらい前になるでしょうか。NHKでメキシコで働く労働者の生活について紹介するドキュメンタリー番組を見たときでした。細かい内容は忘れてしまいましたが、失業してしまったお父さんを密着取材する構成だったと思います。職探しに一日を費やしても結局仕事を見つけられなかったお父さんが、男の子の手を引きながらとぼとぼと家路をたどる、という映像が私には強烈に印象に残ったのです。

 だって、その男の子が着ていたの、セーラームーンのTシャツだったんだもん。

 えっ、なんで?どう考えても日本向けの製品ですから、おそらくは日本企業の下請けでメキシコの企業が製造したのではないでしょうか。そのうち検査で跳ねられたか、予備として生産されたか、とにかく日本に送られなかった分が安価(無料?)でこの労働者の親子の元にやってきたのでしょう。なるほどこれがグローバル経済か。

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そのときのドキュメンタリーではなくて映画「自転車泥棒」の一シーンです。失業者のお父さんと男の子と、というとこういうイメージですが…。

 

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2022.04.22

イノベーションを担う人材とは(江頭教授)

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 「これからの日本にはイノベーションが必要だ」それはその通りですね。ではイノベーションを担う人材とはどのような人たちなのでしょうか。具体的なイノベーションを実現した人々、たとえばAmazonの創設者などを念頭に考えるとイノベーションを起こす人材とは「自分のビジョンを信念を持って実現するひと」となるでしょう。だから学生諸君には自分のビジョン、というか夢を持ってもらう様な教育をするべきなのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。

 えーっと、君の夢は何かな?

海賊王に!!!俺はなる!!!

えっ、そうなんだ。うん。じゃあ隣の君、君の夢は。

海賊王に!!!俺もなる!!!

そっ、そうなの。じゃあ次の人。

海賊王に!!!私はなる!!!

いや、女の子だから「海賊王女」じゃないかな。つぎは…

 まあ、これは冗談ですがこのまま少し考えを進めてみましょう。全員が「海賊王」を目指している海賊団ってどうなるんでしょうか。たとえ仲間割れがなかったとしても一味としては機能しないでしょう。船長が「海賊王」を目指しているなら他のメンバーはコックとか航海士とかそれぞれの役割を果たさないと。

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2022.04.21

ITとペーパーレス化(江頭教授)

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 新学期が始まって授業をしているなかでこんな話をしました。

僕が子供の頃にはスマホはおろか、パソコンだってなかったんだ。Windows95が発表されたのが1995年。その年がインターネット元年と言われたということは、それ以前にはインターネットは一般的ではなかった、ということだよね。

そうなんです。今の学生さん達にとっては当たり前のモノでも私達の世代にとっては目新しいモノだったんですよね。

 さて、パソコンが一般的になって私の身近に現れたのは1995年より結構前でした。当時はWindowsも発表されておらず、パソコンの用途はほとんどワープロに限定されていたと思います。要するに文書を清書して印刷する機械だったんですね。

 昔は手書きするか、あるいは和文タイプなど専門的な道具をつかうか、いっそ印刷工場に依頼するしかなかった印刷物が手軽に作れる様になったことで書類の数が激増。職場は紙で溢れることに。パソコンの導入イコールIT化、そしてペーパーレス化、という連想とは裏腹に紙の利用機会は増えた、という記憶があります。

 さて、実際のところはどうだったのでしょうか。日本製紙連合会という業界団体のWEBサイトには以下の様な統計資料が載っていました。

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日本製紙連合会WEBサイトより(https://www.jpa.gr.jp/states/paper/index.html

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2022.04.20

授業開始から1週間、履修登録のはなし(江頭教授)

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 本学の前期の授業も最初の一週間が終わり、今日から第2週間目に入ります。学生諸君もそろそろ落ち着いて、授業にもリズムができてきた頃でしょう。

 さて、小学校から高校まで、学生諸君が度の授業を学ぶかは基本的には学校側が決めていました。選択授業があってもごく一部。それに対して大学の授業では学生諸君による授業の選択の幅が非常に大きくなっています。

 これは大学側からみると、どの学生がどの授業を受けているのかが分からない、という事になります。ですから学生諸君に「自分はこの授業を選択します」と宣言してもらわなくてはならないのです。

 そのための仕組みが「履修登録」です。本学では約1週間の履修登録期間にWEB上で学生が各自の履修する授業を登録することができる様になっています。その期間に体調を崩した人は自宅から登録することも可能です。

 最初の1回は様子見として、2回目以降は履修する科目を決めてきちんと出席する、履修登録はその決意を表明する機会だ、というえば少々大げさでしょうか。

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2022.04.19

オーストラリアとクルーズ船と渡航規制(江頭教授)

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 NHKのBS1チャンネルでは海外のニュースに日本語の同時通訳をのせてそのまま放送する時間があります。その一つにABCニュースがあります。おっとABCといってもアメリカのABCではありません。AustraliaのABCニュースです。私は研究の関係でオーストラリアにたびたび出張していたので、このオーストラリアABCのオープニングを日本のTVでみて、おっ、と思ったものでした。

 さて本日(2022/04/19)もこの放送を見ていると「クルーズ船の運航が再開した」というニュース。そう言えばコロナ禍で運航中止になっていたっけ。

 クルーズ船とコロナ、といえば日本ではダイヤモンドプリンセス号が有名です。2020年の2月頃、なんとなく海外の話だと思っていた新型コロナウイルス感染症が身近な問題として意識されはじめた最初の事例だった様に思います。一隻の船とは言うもののかなりの人数が隔離され、患者も死者も出ることに。当時の私はちょうどオーストラリアへの出張を控えていたのでハラハラしながらニュースをチェックしていたものでした。

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2022.04.18

映画「アンドロメダ病原体」で描かれた安全思想(江頭教授)

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 今回は、前回紹介した映画「アンドロメダ病原体」を題材として、「安全」というものについて考えてみたいと思います。この映画、半世紀前の作品ですが、その当時の最先端、というかその当時から見た未来を想像して、宇宙からきた病原体に備えて造られた絶対安全な施設、を描写しています。ある意味、当時の安全思想がそのままフリーズドライされているわけで興味深い題材と言えるでしょう。

 映画のかなりの部分がこの「絶対安全」な施設の中の描写なのですが、いわゆるSFチックなデザインで満ち満ちていて私などはワクワクします。ただ、いろいろな装置の造りが今から見ると雑、というかぶっきらぼうな感じも。曲線を多用したデザインの金属製品のセットを造るのが難しかったのでしょうか。真っ平らの金属面にいきなり鍵穴だけ空いている、といったデザインなど今の目で見ると如何にもレトロな感じ。まあ、それも良い味なのですが。

 おっと、安全の話でしたね。

 この映画のなかで安全を確保するための仕組みは端的にまとめると「完全な隔離」とそれを実現するための「徹底した機械化」だと思います。病原体を完全に封じ込めるための隔離、そして人間は外部から遠隔操作で作業をするのですね。

 理論的にはこれで巧くいきそう。ですが映画を見てゆくとこの考え方の限界も明らかになってきます。

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2022.04.15

宇宙から来た病原体の恐怖を描いた映画「アンドロメダ病原体」(江頭教授)

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 「アンドロメダ」というと何を思い浮かべるでしょう。私はおじさんなので「拡散波動砲!」とか思ってしまうのですが、皆さんは「アンドロメダ銀河」でしょうか。それともその名前の元になった「アンドロメダ座」でしょうか。さらに遡ってギリシャ神話版奇稲田姫の「アンドロメダ」でしょうか。ともあれ今回のお題の映画「アンドロメダ病原体」では宇宙から来た病原体につけられた名称が「アンドロメダ」という設定です。(とはいえ別にアンドロメダ星雲から来たわけではありません。)

 ぽつんと孤立した小さな町、その町の様子を外からうかがっている人影。それは地球に戻ってきた無人宇宙船のカプセルを回収する任務を帯びた二人組の軍人でした。かれらが町に入ると町中におびただしい数の死体が。そして彼ら自身もすぐに町の人たちと同じ運命をたどることに。

 ことの異常さに気がついた軍部はすぐに生物化学戦対応の態勢で対処を開始します。完全防護服姿の科学者たちが町を調べると二人の生存者、泣き続ける赤ん坊と胃潰瘍で酒浸りの老人と、を見つけたのでした。

 その後、物語はこの病原体の正体と対応策とを探る科学者チームが中心となって進みます。宇宙から来た病原体の恐るべき能力、病原体の漏洩を避けるために自爆用核爆弾まで装備した最新鋭の施設のなかで、病原体についての研究を進める化学者達。そしてアンドロメダ病原体の意外な特性が明らかに…。

 パンデミックをテーマとした映画なのでとてもタイムリーだと思うかも知れませんが、実はこの映画は1971年の作品です。すでに半世紀前の映画なのですね。さて、その内容について。(以降にはこの作品についてのネタバレを含んでいます。)

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2022.04.14

新学期がスタートしました(江頭教授)

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 2022年度新学期の授業は4月13日の水曜日からスタートしました。昨年と同じ水曜日ですが、カレンダーの都合で1日早くなっています。

 今学期の授業は対面授業中心でスタート。教室の人数制限も緩和して大人数が参加する授業も対面に復帰させることとなりました。要するにほとんどコロナ以前の状況にもどっているのですが、もちろん、感染症対策としてのマスク着用、換気の徹底は継続されています。

 思えば昨年度のスタートも対面授業中心で、となったのですがその後の感染状況悪化によってオンラインに追い込まれました。さて、今年度は無事に対面授業を続けることができるのでしょうか。

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2022.04.13

新入生の忙しい一日(江頭教授)

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 我々東京工科大学工学部応用化学科の新入生、4月11日にはまだ授業は始まっていませんでしたが新入生には忙しい一日でした。

 まず午前中。TOEIC Bridgeのテストが行われました。いわゆるTOEICではありませんが、同じIIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)によるテストで、まあ「TOEICライト」みたいなもののようです。団体申込の場合オンラインテスト形式で実施することができるので学生諸君に資格取得について意識してもらうために今年度から導入されたもの。工学部全学科はもちろん、他学部も含めての最初の実施となりました。

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 全体としては巧くいった、と思いますが新入生が対象であることで問題もいくつか。まだ本格的な授業が始まっていないため、新入生諸君がPCに慣れていない、それはまあ予測していたのですが、意外な機器トラブルがあったりします。PCの音声がミュート状態になっていて解除できない、という例も。(これはWindowsUpdateを実施することで解消できました。)

 開始まえは「皆がイヤホンを忘れないかな?」と心配していたのですが、実施してみると忘れた人は皆無でしたが、トラブルで使えず、やむなく大学が用意したイヤホンを使う、というケースが数件あったという結果でした。

 さて、午前中はいきなりの試験でしたが、午後はお楽しみイベントでした。

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2022.04.12

「日本沈没」の科学描写 2021年版 (江頭教授)

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 「日本沈没」という物語はもともとはSF作家、小松左京氏の1973年の小説です。このブログでは2021年のTVドラマ「日本沈没-希望のひと-」1973年の映画「日本沈没」について紹介したのですが、今回は前回につづき両者の科学描写の比較。今度は2021年のTVドラマについて述べましょう。

 「海底の地下900メートルに存在するCO2を出さないエネルギー物質Celestec」第1話の冒頭でのこのセリフで、このTVドラマがリアリティというものを完全にゴミ箱に投げ捨てていることが分かります。海底に埋まっているエネルギー物質といえばメタンハイドレートですが、これは巧くいっても「極度に掘り出しにくいシェールガス」の様なもので、お世辞にもCO2を出さないエネルギー物質とは言えません。これで「2050年に二酸化炭素排出量ゼロ」は絶対に不可能なのは温暖化問題に興味のあるひとなら誰でも知っていることです。いや、こんなうそをヌケヌケと国際会議で演説する首相(仲村トオル氏が演じています)の鉄面皮ぶり(あるいは能天気ぶり)と欺瞞に満ちた日本政府の温暖化対策を表現しているのかも。開始2分もたたない時点で深読みが始まって、もうまともに見ていられません。

 まあフィクションなんだから、そういう設定なんだから(「設定言うな!」)と自分に言い聞かせて見続けたのですが、その後に続くのが日本沈没が起こる・起こらない論争。主人公が応援しているこのドラマの田所博士(香川照之)は一旦は論争に負けるのですが、後に一発逆転。で、その決め手となったのが、主人公がデータ改ざんの証拠を見つけたこと。いや、あの、たった一人がやったデータの改ざん程度で話がひっくり返る、ってどんだけ少ないデータで議論してるんだよ。

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2022.04.11

「日本沈没」の科学描写 1973年版 (江頭教授)

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 「日本沈没」という物語はもともとはSF作家、小松左京氏の1973年の小説です。このブログでは2021年のTVドラマ「日本沈没-希望のひと-」1973年の映画「日本沈没」について紹介したのですが、今回は両者を少し比較してみたいと思います。

 まず1973年の映画版の「日本沈没」から。

 「日本沈没」という物語が世の中に出てすぐに作られたこの映画では日本が海に沈む、つまり沈没する、というお話し、しかも比喩的な意味ではなくて本当に物理的に海に沈む、というお話しを馬鹿馬鹿しく感じさせないように説得力を持たせて描写する必要がありました。そのために、この日本沈没の「第一発見者」である地球物理学者の田所博士(小林圭樹氏が熱演しています)という人物に対する信頼感を観客に植え付けなければならない。この映画にはいろいろな工夫がされているのですが、その一つに政界の黒幕である渡という名の老人が田所博士の人物を見定めるために田所博士を呼び出す、というシーンがあります。

 緊張感溢れるシーンとなっていますが、「今年はツバメが来ない」という渡老人の問に答えて田所博士は「ツバメは例年の120分の1に減っている」「鳥だけではない、海を回遊してくる魚も大変動を起こしつつある」と答えるのです。

 この描写だけで映画「日本沈没」(1973)の田所博士が地球物理学という専門にとらわれず多くの情報をあつめ、系統的に整理していることがわかります。そして老人の次の質問とそれへの田所博士の答え。

「科学者にとって一番大切なものは何かね」「勘です」

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2022.04.08

映画「日本沈没」(1973)(江頭教授)

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 以前にこのブログで「SFパニックドラマの超有能なイケメン官僚に転生してしまった件」じゃなくて「日本沈没 希望の人」の感想、というタイトルで令和のTVドラマ版の「日本沈没」について紹介したのですが、今回は原作小説が出版された直後に制作された1973年版の映画「日本沈没」について紹介しましょう。

 高度経済成長に沸く1970年代の日本。好調な経済にもかかわらず、測定誤差が消えない地形測量、巣に返らぬツバメなど、一部の勘の鋭い人々は日本に起こっている異変に薄々感づいていた。地球物理学者の田所博士はそれらの事象を丹念に収集し、驚くべき結論を導く。近い将来、日本列島は海に沈む。未曾有の危機から日本と日本人を救うべく、D計画が今スタートする。

この映画、140分というやや長尺(そうでもないか)ではあるものの、映画というコンパクトな時間の中で「日本沈没」という大イベントを一気に描ききります。日常の中に不穏な雰囲気が忍び込んでくるサスペンスフルな前半こそやや丁寧な描写が行われますが、「日本沈没」が確定した後は一大ディザスター映画となり、最後の方はまるで映像スケッチの様です。リアルに描くことが難しい「日本沈没」という異常事態を敢えて克明に描写せず、視聴者の想像に任せた作りになっているのです。

 どうしても「日本沈没 希望の人」と比較になってしまいますが、正直、この映画というフォーマットが「日本沈没」を映像化するには一番相応しいのではないか、と思います。

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2022.04.07

新入生の学科ガイダンス(江頭教授)

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 最近のこのブログ、新入生の話題ばかりなのですが、これはまあ仕方がないですね。今回は昨日4月6日に行った新入生向けの学科ガイダンスの様子を紹介しましょう。

 学科ガイダンスは応用化学科の約100名弱の新入生と我々教員約10名の参加となり、大きな教室を用いれば距離をとって実施が可能です。授業を受けるためのガイダンスや大学での生活上の注意といった工学部全体のガイダンスにつづく内容に加えて、我々応用化学科の教員全員による自己紹介なども。

 アドバイザー教員(入学から卒業研究のための研究室に配属されるまでの間、学生各自の相談役になる教員のことです)との顔合わせもこの学科ガイダンスの時。さらに授業を受ける教室の場所を確認するために学内を回るちょっとしたツアーも実施しました。ツアーの途中では片柳研究棟をバックに恒例の写真撮影なども。今回は研究棟ABを背景にした写真もとりましたね。

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2022.04.06

2022年度の入学式(江頭教授)

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4月5日に東京工科大学の入学式が行われました。

 入学式の会場は本学の蒲田キャンパスの地下アリーナです。例年は入学式も卒業式のときと同様、大学のすべての学部の新入生が一同に会して行われることになっていたのですが、今回の入学式もまた、卒業式と同様に二部制となりました。これでも昨年よりは改善していますし、時間はずれているといっても工学部の学生も本学蒲田キャンパスを見る機会があった、というものです。

 この後、デザイン学部、医療保健学部の新入生は蒲田キャンパスに、メディア学部、コンピュータサイエンス学部、応用生物学部、そしてわれわれ工学部の学生は八王子キャンパスに通うのですが、卒業式と入学式は両キャンパスをつなぐイベントとなっているのです。

 新入生が蒲田キャンパスに全員集合しているので、我々教員も全員集合です。工学部の教員もこの日には八王子キャンパスではなく蒲田キャンパスに出勤します。

 さて、入学式は本学の理事長の挨拶からはじまりました。

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2022.04.05

新入生学部ガイダンスを行いました(江頭教授)

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 前回の記事では4月1日の金曜日に「新入生がノートPCを手に入れて大学からのメールを見られるようになりました」というところまで紹介しましたね。今回はその続き、4月4日の月曜日の学部ガイダンスについて紹介しましょう。

 小学校から中学、高校と進学してきた新入生諸君、学校についての経験値は豊富ですから大学生活でも何も困ることはない。まあ、それはその通りです。大学からいきなり学校に入る人を想像してみれば高校までの経験の大切さは容易に想像できますからね。

 でも、大学には高校までと違う部分がある。ということで大学に入って卒業するまでに必要な情報のうち、大学の1年目の前期の授業を受け始めるに当たって最小限必要な情報を伝えるためのガイダンスが必要です。

 そこでガイダンスとして学部によるガイダンス、さらに学科によるガイダンスが行われます。また別途PC関係のIT講習会も実施しています。

 今回、私はその学部ガイダンスで「カリキュラムについて」の説明を行いました。

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2022.04.04

「ノートPCガイダンス」を行いました(江頭教授)

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 4月1日に「ノートPCガイダンス」を行いました。

 4月に入って本学でも新入生を迎えることとなりました。4月1日の第一日は新入生諸君の初登校日。大学キャンパスに来て学生証を受け取り、大学のITシステムを利用するためのIDを通知されます。新入生諸君にとってはこれが一番のイベントだと思いますが、私達教員の側からみたこの日の一番のイベントは「ノートPCガイダンス」ですね。

 本学では授業に際してノートPCは必須。でもまだノートPCを持っていない人も多数。と言うことで大学が推奨するノートPCを選定しておき入学に際してまだPCを持っていない人からまとめて注文をとっって一括で購入しています。おっと、正確には大学が直接購入の手配をするのではなくて本学キャンパス内に店舗をもっている有隣堂さんに依頼しています。

 さて、何をするにもPCがないと始まらない、ということで4月1日、学生証をもらった学生さん達はそのあしで新規購入した推奨ノートPCを受け取ります。引き続きセットアップのガイダンスを行う、というスケジュールです。

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2022.04.01

「科目別表彰」の制度について(江頭教授)

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 前回の記事で「3月29日の在学生ガイダンスのなかで、本年度の二年生と四年生に対する工学部長賞の表彰式が行われました」と紹介したのですが、じつは表彰はこれだけではありません。これは我々応用化学科の独自の取組なのですが、それぞれの授業について、その中で優秀者の表彰を行っているのです。

 対象となるのは応用化学科の教員が担当している授業です。それぞれの授業に対して原則1名、場合によっては数名が選出されます。多くの場合は成績優秀者が選出されていますが、授業によってはプレゼンテーションやレポートを重視して選出されるケースもあるそうです。

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