イノベーションを担う人材とは(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
「これからの日本にはイノベーションが必要だ」それはその通りですね。ではイノベーションを担う人材とはどのような人たちなのでしょうか。具体的なイノベーションを実現した人々、たとえばAmazonの創設者などを念頭に考えるとイノベーションを起こす人材とは「自分のビジョンを信念を持って実現するひと」となるでしょう。だから学生諸君には自分のビジョン、というか夢を持ってもらう様な教育をするべきなのでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
えーっと、君の夢は何かな?
海賊王に!!!俺はなる!!!
えっ、そうなんだ。うん。じゃあ隣の君、君の夢は。
海賊王に!!!俺もなる!!!
そっ、そうなの。じゃあ次の人。
海賊王に!!!私はなる!!!
いや、女の子だから「海賊王女」じゃないかな。つぎは…
まあ、これは冗談ですがこのまま少し考えを進めてみましょう。全員が「海賊王」を目指している海賊団ってどうなるんでしょうか。たとえ仲間割れがなかったとしても一味としては機能しないでしょう。船長が「海賊王」を目指しているなら他のメンバーはコックとか航海士とかそれぞれの役割を果たさないと。
ベソス氏がいなかったらAmazonはできなかったろう、というのはおそらく正しいでしょう。でもベソス氏だけでAmazonができたのか、と考えると無理だったのではないでしょうか。イノベーションの実現のために、自分のビジョンに信念を持っている人が必要なのは確かです。でも、他人のビジョンの実現に協力できる人も必要でしょう。
もし最初に触れたようなイノベーション人材の教育が成功し、全ての学生が自分のビジョンと信念をもって社会にでるようになったら「全員が海賊王を目指している海賊団」の実現です。イノベーションを目指して自分のビジョンを実現しようとする人は協力者の確保に苦労するでしょう。なにしろ協力してくれるのは夢破れてビジョンを失った人たちだけなのですから。
ということで私は、自分のビジョンに信念を持たず、というか執着せず、それでも強い意欲と高い能力を保てる人材もまたイノベーションを担う人材だと思うのです。ではそんな人材をどう教育するのか。私にも答えは分かりませんが、少なくとも「自分のビジョンを信念を持って実現するひと」と同一の教育で良いとは思えませんね。
「日記 コラム つぶやき」カテゴリの記事
- 英文字略称(片桐教授)(2019.03.13)
- 地震と夏みかん(江頭教授)(2019.03.11)
- 追いコンのシーズンはご用心(片桐教授)(2019.03.07)
- Don't trust over 40℃!(江頭教授) (2019.03.06)
- 「加温」の意味は「温度を加える」?(西尾教授)(2019.03.04)