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グローバル経済を実感した日(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 私が「グローバル経済」というものを意識しはじめたのはおそらく今から30年くらい前になるでしょうか。NHKでメキシコで働く労働者の生活について紹介するドキュメンタリー番組を見たときでした。細かい内容は忘れてしまいましたが、失業してしまったお父さんを密着取材する構成だったと思います。職探しに一日を費やしても結局仕事を見つけられなかったお父さんが、男の子の手を引きながらとぼとぼと家路をたどる、という映像が私には強烈に印象に残ったのです。

 だって、その男の子が着ていたの、セーラームーンのTシャツだったんだもん。

 えっ、なんで?どう考えても日本向けの製品ですから、おそらくは日本企業の下請けでメキシコの企業が製造したのではないでしょうか。そのうち検査で跳ねられたか、予備として生産されたか、とにかく日本に送られなかった分が安価(無料?)でこの労働者の親子の元にやってきたのでしょう。なるほどこれがグローバル経済か。

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そのときのドキュメンタリーではなくて映画「自転車泥棒」の一シーンです。失業者のお父さんと男の子と、というとこういうイメージですが…。

 

 まあ、冗談めかして紹介したのですが、このエピソードの影響でしょうか。当時の私はグローバル経済にある種の「やましさ」の様なものを感じたのです。当時の感覚では日本は豊かな国であり、メキシコは貧しい国でした。しかも少女マンガのキャラクターグッズという完全に娯楽用の製品と、失業したお父さんの苦悩というコントラストが余りにも強烈で、雑な表現ですが「日本がメキシコを搾取している」と感じたのです。

 とはいえ少し考えれば、メキシコの労働者にとって日本から仕事の発注がくる、というのは悪い話ではないでしょう。それに、日本の労働者が海外の子供のために働くことだってあったのです。

 戦後日本が復興する際にはアメリカ向けにおもちゃを生産していた、という話を聞いても今の私はアメリカへのわだかまりは全く感じません。仕事をくれてありがとう、くらいの気持ちです。あのドキュメンタリーでセーラームーンTシャツを着ていた男の子は今は壮年期でしょうか。彼も同じような気持ちでいてくれれば良いのですが。

江頭 靖幸

 

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