「三角関数よりも金融経済を学ぶべきではないか」とは言えても「指数関数よりも金融経済を学ぶべきではないか」とは言えないよね(江頭教授)
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国会で「三角関数よりも金融経済を学ぶべきではないか」という提言をした議員の方がいたそうで、またまた教育問題として「三角関数」がやり玉に挙がっているようです。私は以前にも「三角関数で関数の概念を学んだ!」という記事を書いていまして、これが3年くらい前のお話。そのときもやっぱり「三角関数を義務教育で教えるべきか」に疑問を呈した人がいたのですね。
なんか三角関数は一般人の生活には役に立たないものの代表として批判されがちな様です。いや、三角関数は役に立つんだ、おまえ達はフーリエ変換も知らないのか、なんて反論もあります。それでもこのような「三角関数」批判が度々話題になる、というのは他に理由があるのではないかと思います。
まず、ほとんどの日本国民が「三角関数」という言葉を知っているということ。そして三角関数の使い方の、少なくとも一つは知っていて、それを使った事がある・ないを判断できている、ということです。これは日本の教育の偉大な成果と言うべきですね。少なくとも「三角関数」を教えていることでこのような国民的(?)な議論が可能になってるのですから。
さて今度は「金融経済」を教えるという部分。「金融経済」として一体何を教えるつもりなのでしょうか?経済学の一分野としての金融経済なのでしょうか。それとも「金融と経済」を略しているのか。あるいは「金融リテラシー」でしょうか。
金融に関する情報、もっとはっきり言えば金融商品に関する情報は巷に溢れているので、情報が欲しいなら別段教育に頼る必要はない。自分でいくらでも調べることができる、とは言えるでしょう。でも敢えて教育で必要、と言っているのですから、おそらく(広い意味での)広告経由で得られる情報には信頼性がないということが前提でしょう。だから各自が自分できちんと金融商品の善し悪しが判断できるように、偏りのない立場で正しい知識を教えるべきだ、ということになるのでは。
だとすると、教育課程に入れるべき金融の知識、というのはそれほど多くはないのでは?個人的には「無料の昼食なんてものはない」と「自分が仕組みを理解できないものに投資するな」それから「複利は怖い」くらいでは。
特に最後の「複利は怖い」は人間の直感と著しく乖離した部分がありますから、きちんと教えないと。複利での借金の増加具合を計算させてグラフを書かせて…あれ?これって指数関数の教育そのものでは。指数関数をきちんと理解している人になら「複利って、ほら指数関数的増加ってヤツだから気をつけてね。」これで済みますよね。
複利計算と指数関数が実質的には同じものだとして、学校ではどちらを教えるべきか。やっぱり私は指数関数だと思います。だって複利計算はどこまでいっても複利計算ですが指数関数には広い汎用性があるのですから。
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