「日本沈没(1973)」の田所博士と「男はつらいよ」の田所教授(江頭教授)
| 固定リンク 投稿者: tut_staff
俳優の小栗旬氏主演のTVドラマ「日本沈没 希望の人」を契機に昔の映画「日本沈没(1973)」について紹介したのですが、今回もそれに関連したお話し。今回は「男はつらいよ」とのクロスオーバーについてです。
「男はつらいよ」は1969年から1995年まで続いた映画シリーズ。監督は山田洋次、主演は渥美清で渥美清氏が亡くなったため1995年で終了となりました。おっと、昔のフィルムを交えた後日譚としての「男はつらいよ お帰り寅さん」が公開されていますから、それを入れれば2019年まで続いたシリーズと言うべきかも知れません。まあ、それを別として26年間作り続けられた上に、物語の性質上日本各地を回って撮影された映画シリーズなので、その当時の日本の情景や世情が自然に封じ込められたタイムカプセルの様なシリーズになっています。
さて、この「男はつらいよ」のシリーズ第16作、1976年正月映画(1975年12月公開)の「男はつらいよ 葛飾立志篇」には小林圭樹氏が「田所教授」という役で登場するのです。小林圭樹氏は1973年公開の映画「日本沈没」で日本沈没という現象の謂わば第一発見者となる「田所博士」を熱演した俳優さんです。
「日本沈没(1973)」の田所博士と「男はつらいよ」の田所教授、前者は地球物理学者で在野の研究者、後者は考古学者で東大教授、という違いはあります。でも映画「日本沈没」は実質1974年の正月映画ですから、2年前の小林圭樹氏の田所教授役の熱演を覚えていた当時の観客達にはピンときたのではないでしょうか。もちろん、正式なクロスオーバーというわけではないでしょうが、やはりそこを狙ってのキャスティングかと。
さて詳細はネタバレしませんが「男はつらいよ」の田所教授もやっぱり「つらい」目にはあいます。でも大学生に混じって野球に興じたり、ちょっとした外国語の小ネタを披露して笑いをとったりする田所教授を見るとほっとするのも事実。日本沈没を予測し、日本列島と共に最期を迎える田所博士を思い出して、日本が沈没しなかったら有ったかも知れない田所博士の未来だと考えるとなんだか切ない気もします。
まあ私の感想はさておき、こんな形で「男はつらいよ」シリーズに影響が残っているところを見ると「日本沈没」という作品の世間への浸透ぶりを知ることができます。
もちろん「日本沈没」の痕跡が見つかるのは、このシリーズだけではありません。例えば1974年4月スタートのテレビシリーズ「ウルトラマンレオ」の第2話「大沈没!日本列島最後の日」などもその一例でしょう。
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