日曜日(6月12日)のオープンキャンパス研究室見学に寄せて(江頭教授)
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落合陽一氏は新進気鋭の研究者というかアーティスト、いやマルチタレントでしょうか。このブログでも以前落合氏がキャスターを務めたNHK BS1 スペシャルの「コロナシフトでつくる日本の未来 デジタル」について感想を述べたことがあります。
さて、その落合氏の文書が少し話題になっていました。それがこちらの「大学教員8年目やってるとワナビーとモノづくり好きの区別がつくようになってくる」という記事です。この記事、肝心な部分は多分以下のところ
もし,作りたいと思って作ったことのない人や研究したいと思って研究したことのない人は「結果の評価や自己実現」に憧れているだけで実験結果や実装そのものそしてその過程に興味があるわけでも好きなわけでもない.
なるほど。化学に興味のあるひとなら大学に入る前に自宅で化学実験の一つもやっているもの…ってそんなわけない!
化学の実験をしよう、と高校生の人が考えたとしましょう。いろいろ薬品を集めることを考えるとそれなりの費用がかかる、っとそれ以前にそもそも全ての化学の試薬を一般人が購入できるわけではありません。危険性のある薬品はそもそも手に入らない。もし何かの方法で手に入れたとしてもそれで実験をした後、どうやって処理をしたらよいのでしょうか。個人が業者に依頼しようとすれば、その由来を説明する必要があるでしょうし、だからと言って勝手に捨てることは許されません。自分で処理をするのも難しいでしょう。
要するに化学という分野について言えば、本格的に研究ができるのは大学に入ってから、ということなのです。基本的に高校生は「研究したいと思って研究したことのない人」にならざるを得ないのです。
今週の日曜日(2022年6月12日)に実施予定の本学オープンキャンパス、応用化学科で実施予定の研究室見学は、本格的に研究をしている場が公開される数少ないチャンスの一つです。
おそらく各研究室では研究内容を中心として紹介が行われることと思います。でも、それと同時に先に紹介したドラフトチャンバーをはじめ、化学物質を扱う実験を行う上でどのような施設が用いられるのか、どのような機器が必要となるのかにも注目してみてください。大学で行う化学実験を想像して存分に「結果の評価や自己実現に憧れて」いただければと思います。
さて、このように化学という分野では専門家と一般人のあいだに大きな隔たりがあるのが普通です。でも落合陽一氏が専門とする分野ではその垣根が低くなっている。これは大元をたどればコンピュータの性能向上・低価格化と大規模な普及によるもので、どちらかというとその様な分野が例外なのだと思います。この点には落合陽一氏も自覚的で先の文章のなかでは何度も「自分の関係する分野では」というエクキューズが入っていますね。
江頭 靖幸
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