新旧人工知能と勉強の仕方(江頭教授)
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人工知能(AI)に新旧という言い方をするかどうかは知りませんが、私がここで言いたいのは人工知能のモデルには大きなパラダイムシフトがあった、ということです。古い(旧)人工知能は「明示的なルールを用意して自動的に推論する」というルールベースの推論システムのこと。(この辺のことは以前の記事で書いています。)
でも今の人工知能は違いますよね。「問題と正解の組み合わせをたくさん与えることで同種の問題を解けるようになる」という機械学習システムのことを人工知能と言うのが一般的だと想います。
さて、なんでこんな話を始めたか、ですが最近新入生(いや、もう新入生という感じでもないか)と話をしていて「勉強の仕方が分からない」という話を聞いたから。勉強の仕方にも人工知能と似たような「ルールベース」的な勉強と「機械学習」的な勉強があるのでは、と思いついたのです。
化学関係の授業を例に考えてみましょう。基本的なこと、たとえば質量からモル数(いや、物質量というべきか)への換算など、まずは原則的なルールが教科書に書かれています。先生がこれを説明してくれると、それでどんな問題でも解けるようになるか、というとそんな事は無い。普通は例題が出されてそれを解く過程でやり方が分かってくる。
ここまでがいわゆる「ルールベース」の勉強でしょう。例題をつかってルールを確認した。それを記憶しておけば他の問題も解けるだろう、ということですね。
でも、それで本当に問題が解けるようになるのか。いえいえ、ここから練習問題をどんどん解いてゆく、というプロセスが必要です。これは主観的にはスポーツのトレーニングの様なもので、新たに学んだ「ルールベース」の解き方に馴染んでゆく作業です。そのうち、頭の中でわざわざルール考えなくても直感的に答えがわかって、後からそれをルールに基づいた形に直す、という逆転が起こります。このプロセス、実は人工知能(というかAI)の機械学習に似ていませんか?多数の練習問題をといて、答えが間違っていたら修正する。自分の中の人工知能に機械学習をさせているわけですね。
人工知能の歴史では「ルールベース」の古い人工知能は大した成果を挙げることができなかったとされています。現在注目されているのは機械学習をつかった新しいAI。化学の勉強に際しても「ルールベース」で例題を解いたら、なるべくたくさんの練習問題を解いて「機械学習」のような学習(なんか変な言い方ですが)に力を入れると良いでしょう。
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