リバウンドする世界のCO2排出量(江頭教授)
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前回の記事では日本の温室効果ガスの排出量についてのデータを紹介して
今回発表された2020年度のデータの5.1%減というのはそれまでに比べて減少幅が大きく、報告書では「省エネの進展」、「電力の低炭素化(再エネ拡大及び原発再稼働)」に加えて「新型コロナウイルス感染症の感染拡大」等が影響した、と述べられています。
と述べました。日本の2021年度の公式の温室効果ガス排出量のデータはまだまとまっていないので、その後どうなったかはまだ正確にはわからない。ですが、電力の需給やマーケットデータを利用した推計は可能です。ということで、今回は世界レベルでのCO2排出量の変化についてのデータ(推計値を含む)を見てみましょう。
エネルギーに関する国際機関のIEA ( International Energy Agency ) のレポート
”Global Energy Review: CO2 Emissions in 2021”
にまさにそのデータが出てきます。この資料はIEAのWEBサイトから無料でダウンロードできます。(IEAへの登録が必要。)
実はこのレポートには副題がついていて
Global emissions rebound sharply to highest ever level
です。いや、もうこれだけで十分なのでは。
世界全体でみるとCO2の排出量はコロナ禍の影響をうけて一時的には減少したものの、その後一気に回復、いや、リバウンドした様です。コロナ禍によるライフスタイルの変化によってエネルギー消費が、ひいてはCO2排出量が抑えられるのでは、という期待はどうも外れたようです。
では日本を含めて国ごとの状況はどうなっているのでしょうか。
以下の図は各国の予測値をまとめたものですが、先進国である米国、EUでは減少からリバウドしているものの、2019年以前の減少傾向はそのまま維持されているように見えます。その一方で発展途上国であるインドも同様に減少とリバウンドを経ているものの、こちらは2019年以前の(減少傾向ではなく)増加傾向が維持されているようです。
特徴的なのが中国で、なんと増加傾向が維持されているだけではく、そもそもコロナによる落ち込みが見られません。
では、日本はどうでしょうか。
グラフのスケールが小さすぎて良く見えないくらい。ずっと安定していてゆっくり下がっているようにしか見ません。細かくデータを見ると他の先進国同様に減少とリバウンドを経験していますが、その割合は他国と比べると決して大きなものではありません。
さて、来年度2021年度の日本の温室効果ガス排出量の公式データが出た際、このリバウンドは本当に観察されるのでしょうか。
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