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未だに人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようにならないし、地球の周りには巨大なスペースコロニーが数百機浮かんだりしないし、その人類の第二の故郷で人々は子を産み育てそして死んでいったりしないなあ、という話(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 今回のタイトル、ピンときた人もいるかも知れませんが、1979年のアニメ「機動戦士ガンダム」(の映画版)で、物語の世界観を説明する冒頭のナレーションを元にしています。本当は「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになってすでに50年」といって始まります。この物語のスタートは「宇宙歴0079」という架空の年号で西暦何年なのかは明示されませんが、現在と地続きの未来を舞台として描かれた物語でした。

 この物語が前提としている未来像、基本的には1950年代から60年代にかけての未来像「人類の進歩と調和」(これは1970年開催の大阪万博のテーマです)を前提としたものだと言えるでしょう。科学の進歩によって人類は宇宙にまで進出し、生活の場とするのだ。そいういう明るい未来像が下敷きとしてあり、でも宇宙での生活もバラ色ではない。人々の営みは相変わらずで戦争もある。結局人間というものは変わらないのだ、という世界観で始まった物語は、やがて人類の次なる段階への進化を予感させて終わることとなります。

 このアニメを見ていたころ、すでに私は「人類はやがて宇宙を生活圏にする」という明るい未来像は信じられなくなっていたものです。でもそこに変わらない人間の日常、という要素が加わることで凄くリアルに感じたことを覚えています。

 さて、それから40年以上たって、実際はどうなのでしょうか。

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 今にして思えば、この物語には永遠に成長を続ける人類、というイメージ、というか観念が背景としてあったと思います。いや、この物語に限らず、当時の数多くのフィクションに、それどころか多くの人々の意識の中にその様な考え方があったのです。現在から見ると理解し難い事ですが、直前まで実際に高度経済成長を続ける社会の中で生きてきた人々にとって、社会が成長を続けると想像することはごく自然な事でした。その延長上に想像力を広げれば宇宙を生活圏とする人類、というビジョンまで大きな飛躍はありません。何なら銀河狭しと飛び回っても良いところで、地球の周辺のスペースコロニーに話を限定した「ガンダム」の世界観はむしろ抑制的ですらあったのです。

 でも現実は「未だに人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようにならないし、地球の周りには巨大なスペースコロニーが数百機浮かんだりしないし、その人類の第二の故郷で人々は子を産み育てそして死んでいったりしないなあ」という状況です。確かに地球の資源と環境に対して80億人という人口は増えすぎでしょう。でもこの人口も無限に成長を続ける訳ではない。やがて減少に転じることが予測されていますから、なにも宇宙に第二の故郷を造る必然性は薄いのですね。

 当時自然に予想されていた成長を続ける人類の未来、というビジョンはどうも実現しない様です。

江頭 靖幸

 

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