環境問題と化学の大切さ(江頭教授)
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今回はすこし大きな話ですが「環境問題」について考えてみましょう。環境の「環」はまわりのこと、「境」はさかい、つまり境界のことですから、環境は境界を囲むものという意味ですね。たとえば「家庭環境」とか「生活環境」などといえば、その本人ではない周囲の人や物や状況全般を指すことになります。
でもここで言う「環境問題」の「環境」は人間を取り囲む自然のことです。いえ、環境問題では人間の影響でその「自然」が「自然」ままではなくなることが問題だと言えるでしょう。
実際、「夏が暑い」とか「冬が寒い」といって、それがたいそう困ったことだとしても「環境問題」とは呼びません。でもそれが「記録的猛暑」とか「数十年来の大雪」であって、その原因が我々人類による温室効果ガスの排出である可能性が疑われる、となれば立派に「環境問題」の仲間入りです。
ポイントは人間活動がいわゆる「自然」に対して影響を与えている。与えるほどに人間の活動が盛んになった。人間のポテンシャルが高まった、というところにあるのでしょう。いわゆる産業革命が全世界に広がってゆくに従っていろいろな「環境問題」が起こったのです。
要するに環境問題は人間が引き起こしたものです。であれば、人間の力で解決することもできる、ハズですよね。
そのためには環境問題が起こった原因をだだしく理解し、適切な対策を立てる必要があります。とくに環境問題は問題としては個々人の問題ではあっても環境それ自体は皆で共有しているものです。近隣近所、川の流域や国レベル、大陸レベルから地球全体まで、いろいろなスケールがありますが、それでも環境問題は個人の問題ではありません。
そして、人間活動の影響のなかで、人間が作り出す化学物質の影響は非常に大きなものがあります。だとすれば環境問題の解決のためには、自身が化学の知識を持つことはもちろん、その知識を正しく人に伝えることができ、また議論ができる能力が必要だといえるでしょう。
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