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NHK日曜討論 「1.5°Cの約束 脱炭素社会 どう実現?」を見て(江頭教授)

| 投稿者: tut_staff

 NHKの「日曜討論」と言えば私が子供の頃から放送していた伝統ある番組。政治に関連したテーマで与野党の代表者が丁々発止とやり取りする番組、というイメージでした。でも今回(放送日は 2022年9月25日 の日曜日です)取り上げられているのはタイトル通り「1.5°Cの約束 脱炭素社会 どう実現?」というテーマで政治絡みではないのです。

 さて、討論の参加者が与野党の代表ではない、というのはちょっと新しい感じがしました。「専門家や環境団体の方々と考えていきます」と司会の方が言っていたのですが今回のゲストは以下の様な方々です。

 まずは東京大学公共政策大学院 特任教授の有馬 純教授。この方は元は経産省のひとでCOPでの首席交渉官だったそうです。まあ、専門家代表でしょうか。クライメート・インテグレート代表理事の平田仁子氏、気候変動イニシアティブ代表の末吉竹二郎氏のお二方はNPO代表。信州大学特任教授の夫馬賢治教授は専門家ではありますが経済が専門の方のようです。環境団体 record1.5 共同代表の山本大貴氏はNPO代表というより若者代表でしょうか。

 さて、これは1時間番組なのですが、まず最初のおよそ30分ぐらい、討論らしい討論がありません。そもそもタイトルに「脱炭素社会 どう実現?」と有るぐらいですから、だれも脱炭素社会の実現に反対しないのです。甲論乙駁と言いますが、今回の日曜「討論」では甲が論じても乙は反駁しない。なんというか甲論乙論で前半が過ぎてしまいました。

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 大丈夫か、これは。そう思ったのですが後半に入って「石炭火力」と「原子力」についての話題がでると、これらの問題については有馬教授のみ肯定派。ほかの皆さんは全員反対の様で、やっと討論らしきものが始まりました。

 ところが、何というのでしょうか。あんまり議論が成立していないような。おそらく有馬教授の考えは現在の政府の考えなのでしょうが、それに対する有馬教授以外の皆さんの論点が今ひとつはっきりしないのです。「石炭火力」より再エネの方が安い、先進的な企業はどんどん再エネに向かっている、政治的に考えれば「原子力」は非現実的だ、などなど。

 いろいろと考えると、これは発言する人の立場がはっきりしていないのが原因の様です。再エネの方が安いと思うなら自分で新エネルギーの会社を起業すれば良い。先進的企業が顧客になってくれるでしょう。政治的に原子力が非現実的だ、と思うならそもそも討論に出てくる必要などないのです。だって大勢はすでに決していると思っているのでしょう。目の前の相手一人を説得できなくたって政治が動くわけじゃありません。

 発言が個々人や自分の所属する団体の行動についての話であるなら、粛々と自らの信念に従って働けば良い。そうではなくて、立場の違う人と議論をする必要があるのは、例えば政府がどうするべきか、というケース。要するに政治絡みの話だけでしょう。

 そう考えると与党が政府を代表し、野党との論戦に挑む、という昔ながらの日曜討論はきちんと討論が成り立つフォーマットになっていたのですね。

 

江頭 靖幸

 

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